10回目 変わらない本性
霊魂に直接作用する能力。
トシキが使えるのは、こうした超能力だ。
この能力を使って、母親の霊魂にも手をつけてみた。
もしかしたら何かを変える事が出来るかもしれないと。
しかし、それは無駄だった。
いたぶり続けた二時間の間に、そうした改造もしてみようと試したのだが。
それで何かが変わったり良くなったりする事はなかった。
母親の考えや心。
そうしたものは何一つ変化しなかった。
身勝手な独善性。
自分の身を考える自己愛。
そういったところをどうにか変えられないかと思ったが。
無理だった。
どういじくろうとも何も変わらない。
どうしても変えられない。
洗脳などは出来るが、それで霊魂という本質が変わるわけではない。
思考や行動は少しは変化するだろう。
それで、一時的に悪さはしなくなるだろう。
だが、洗脳では考えや行動の一部を変化させるだけでしかない。
霊魂はそれらに対応して、本来の行動をとろうとする。
持って生まれた本性に従った動きを。
それはもう、どうにもならなかった。
一時的に効果はあっても、結局は元に戻る。
しかも、効果もそれほど高くはない。
確かに本来の悪辣さは鳴りを潜める。
しかし、悪さをしなくなるわけではない。
結局、悪事を働く。
程度は小さくても。
そして、どれほど小さくても、悪事とは世の中に悪い影響をもたらす。
その被害は、累積すればとんでもなく膨大なものになる。
費やす労力に見合わない。
結局、一時しのぎの改造はそれしかもたらさない。
そんな事をするよりも、さっさと処分した方が早い。
もう二度と悪さをしなくなるのだから。
その分、継続してもたらされる悪事が減る。
悪事による損失損害が減る。
その効果の方がよっぽど大きかった。
処分を躊躇う理由が全くない。
何一つない。
むしろ、積極的に処分していくべき。
それがトシキが得た結論だった。




