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移行中  作者: あ
上杉 麻冬編
55/106

#55 ドキドキ★視察旅行

「──以上で修学旅行へ向けての役員会議を終える。皆、ご苦労だった。各自、解散」


 生徒会の会議を終え、上杉の号令と共に皆が会議室を去っていく。正直、俺は目の前にいる三好の事で会議の内容は全く入ってなかった。

 終始お嬢様のような立ち振舞いでニコニコとしていた三好だったが、役員達が去ったと同時に深く息を吐き、髪をグシャグシャにして姿勢を崩す。


「かっはぁ〜……つーかれたぁ。マジで居心地悪ぃぜこれ。いい子ちゃんってのも楽じゃねえな」

「そろそろ説明してくれないか上杉……」

「ん……ああ。七雲は退院した直後でまだリハビリ中だからな。荒事が多いドクロ組に戻るのは私が止めた。代わりに生徒会の仕事を手伝ってもらっているんだよ」

「へっ、5歳児を見守る、心配性の母親みてえな慌てふためきようだったぜ」

「フフ……婉曲的な言い訳になってしまったな。本心を言うと──七雲と一緒にいたいだけさ」

「……直接的に言うない。恥ずかしーだろうが」


 三好は少し頬を赤らめると、プイッとそっぽを向いてしまう。厳格な生徒会の白制服に、学校一の不良が腕を通してしまった。ハハ……マジでクレイジーだぜ上杉。

 その後も三好は、俺達生徒会と共に机を並べる。普段、子分達を統率しているリーダーシップを発揮し、そのキレる頭で生徒会に貢献していった。案外……生徒会と合っているのかもしれない。そして、いつまでもお嬢様のフリは辛かったのか、徐々に素の三好に戻っていった。他の生徒達からは姉貴分として慕われているようだ。こう言ってはなんだが……てっきり忌まれるかと思っていたのだが、ドクロ組の時からそこそこ人気はあったらしい。

 生徒会の直江や宇佐美──他の生徒会メンバーは、最初は怪訝な様子で不良の三好を警戒をしていたが、仕事を卒無くこなす働きぶりと、三好といる事で以前よりはるかに明るく、笑顔の増えた上杉を見て、物忌したような態度を改めていた。

 三好が生徒会にすっかり馴染んだ頃、再び上杉の召集がかかる。俺は会議室の椅子へと腰を下ろす。今日は少人数での会議らしく、呼ばれたのは俺の他に三好、直江、宇佐美の4名のみであった。上杉は咳払いを一つすると、証明を消し中央のモニターに画像を写し出す。石造りの露天風呂と木造の綺麗な建物。温泉宿だろうか……?


「皆を呼んだのは他でもない。前回の会議題の通り、そろそろ我が校の修学旅行の時期が始まる。今回は……その宿泊する宿について話がある」


 なんだか上杉の視線を感じるが……気のせいかな。俺は首を傾げ、隣にいた直江にそっと耳打ちをする。


「なあ……修学旅行の場所決めも俺達が決めてるのか……?」

「いや、修学旅行に関しては理事長の裁量で場所を決めている。そんな生徒達の反応を大きく左右するような、重大な決定を我々が請け負う訳にはいかんだろう」


 まあ、あの父さんが、そんないかにも楽しそうな決定権を譲るとは思えないし……毎年ウキウキしながら場所決めをしてるに違いないからな。


「そこでだ。私達は現地に赴いて、事前に宿泊する事になった。ようは視察旅行だ」


 上杉の一言から暫し沈黙が訪れる。そして、会議室中に上杉と三好以外の叫び声が響く。


「「えええぇぇーーッ!?」」


「おー、いいじゃねえか」

「ま、待ってください会長! 聞いてないですよ!」

「そうですよ! 普通、そういうのは学校職員が行うものでは……!?」

「なんだ反対なのか? 別に遠慮はしなくていい。視察とは言っても、羽休めのつもりでいいんだ。率直な感想が聞きたいという理事長のご意向だぞ」


 直江と宇佐美は同時に首を左右に激しく振る。


「恐れ多いですよ! 会長とご一緒に温泉宿などと……!」

「お嬢様……私も反対です!」


 上杉は腰に手をやって苦笑いを浮かべると、俺と三好の方へ顔を向ける。


「七雲はどうだ?」

「俺は行くぜ。温泉は好きなんだ。それに、経費使い放題なんだろ? 好きに遊べるじゃねえか」

「佐藤は?」

「ん……ま、まあ……楽しそうだし行くけど」

「そうか……では、視察は我々3人で行くとしよう」

「え、マジで……」

「おー、男1女2の旅行か。楽しくなりそうだな〜」


 直江と宇佐美は、同時にアゴに手をやり暫く唸る。そして、目を見開いて上杉に詰め寄る。手を激しく上下させる動作は、なんだか壊れた水鳥のオモチャみたいで面白い。


「「それこそダメですよ!!!」」


 結局、直江や宇佐美も同行する事に。2人は俺をジトッと睨む。


「お前は会長の友人でもあるが……不埒なマネはさせんぞ……」

「お嬢様に手出しはさせない……」


 子猫のような警戒をする2人。俺は2人を見て薄く笑う。奇妙な同盟を組ませてしまったようだ──コイツら、似てるなあ。あと……やっぱ上杉の視線を感じる。なんだろう……怖いから目を合わせないでおこう……。

 視察の日程は次の土日。場所は高校の修学旅行では良く聞く地名だった。古の都──京都。そんなこんなで、俺達のちょっとだけ早い修学旅行が幕を開ける。

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