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移行中  作者: あ
上杉 麻冬編
40/106

#40 夜叉羅刹

「は!?」


 首魁、三好七雲に会う……竹部からそんな提案がなされる。いや、そんな軽く言われても困る。とんだ爆弾発言だ。


「君がしようとしている事……七雲に会えば気が変わるかもね。話せばわかると思うよ」

「い、今から行くってのか?」

「うーん。そうしたいけど、あの武闘派達の前でその話をするのはね……僕じゃ君の命を保証出来ないよ。あ、でもほら。解散するみたいだよ」


 竹部が指差す方を見ると、いつの間にか集会は終了しており、数人が残った状態だった。リーダーの三好と2人のメンバーが──


「さ、行くよ佐藤」

「うぉう!?」


 突然竹部に背中を押され、グイグイと森の中心へと進んで行く。足を止めようと踏ん張るも束の間、奮闘虚しく俺はドクロ組の中心へと放り込まれた。


「あぁ?」


 男達から鋭い視線が向けられる。刺すような眼差しとはこの事だ。こんな俺でも白制服の生徒会員だからな……当然の反応かもしれないが。


「……シロベー、誰だソイツ?」


 ブワッと風が吹いた気がした。リーダーの三好が俺を睨む。一歩、また一歩と近付く度に鬼のような威圧感が俺を包み込む。目が……背けられない。三好は俺の前に立つと、すぐ後ろにいる竹部へ視線を向ける。


「いやー彼が実は、七雲に話があるっていうんでね」

「話だと? 生徒会のオマエが……俺に?」

「あ、いや、ちょ……」


 三好が俺の顔を覗き込む。近くで見ると結構イケメンだな……って違う。ヤバいヤバい、すんげえ近い。校内一のヤンキーの顔が目の前に。俺は上を向いて目をギュッと閉じる。


「…………んん? オマエまさか佐藤佑樹か?」

「……へ?」


 三好は目を丸くして俺のアゴを持ち上げる。俺はゆっくりと目を開ける……意味が分からない。何故、俺の名前を知っているんだ? 俺はおそるおそる頷いて見せる。


「そうか、オマエが佐藤佑樹か!」


 すると、三好は打って変わって爽やかな笑顔を浮かべ、俺の肩をバシバシと叩く。


「まず馬を射らねば始まらねえって言うしな! シロベー、いいモンを連れて来たな!」

「あの七雲、彼は君に話が──」

「んな事ぁどうでもいい! オイ、佐藤──ウチに入れ!」

「は???」


 俺の気のせいか? 今、ウチに入れって聞こえた気がした。


「オマエ、あの木柴猿弥と仲良いんだろう? あの柔らかそうに見える堅物が、何故オマエに気を許してるのかは知らんが……オマエがウチに入れば、アイツも考えを改めるだろう」

「話が見えないっすよ……」

「訳あって、俺達にはどうしても木柴が必要なんだよ。ソイツを誘うには、ダチからってな。って訳でウチに入れ!」

「は……?」


 まさか、本当に俺をドクロ組に誘ってるのか? 三好は本気で、この俺を不良グループに入れる気か? 腐っても生徒会役員だぞ。決して相容れ無い存在だ。有無を言わさず少々強気に誘う感じ……なんだか上杉に通じるものがある。

 しかもなんで木柴の名前が出てくるんだ……ああ、もう訳分からねえ。首を振る俺に、三好は持っていた棍棒を俺の眼前へ向ける。


「ああ、勘違いするな。これはお願いじゃねえ、命令だ。必ず所属してもらう。だが、用があるのはオマエのダチだ。テメーはただいるだけでいい。木柴を手に入れた後なら……好きにしろ」


 三好はそう言って鼻で笑う。生徒会の俺が不良グループ、ドクロ組へ入る……ミイラ取りがミイラに、か。笑えねえな。


「……ざけんな」

「あ?」


 俺は棍棒の先を握り締め、それを払いのける。生徒会の、そして上杉への裏切りになるだろう。そんな事は決してあってはならない。けど……俺にはそれ以上に許せない事がある。俺は三好を睨み付け声を張り上げる。


「ふざけんな!! 俺が木柴のエサだと!? 逆ならまだしも、木柴をおびき寄せる為に俺を利用するのは、絶対に許さないぞ!!」


 俺は怒りを叫ぶ。何故コイツが木柴を欲してるのかは分からない。だが、あの野郎の踏み台になるのは絶対に嫌だ。


「何……?」

「えーっと……佐藤? 君、何かおかしくない?」

「アイツのエサになるくらいなら死んだ方がマシだ!!」

「いや、そんなキメ顔で言われても……」


 ごちゃごちゃと何かを言う竹部を制し、三好はニヤリと笑みを浮かべる。棍棒を、音が鳴る勢いで振り回すと、それをピタリと俺の顔の目の前で止めて見せる。


「死んだ方がマシか……いいだろう佐藤。ならテメーの気概とやらが本当か試してやるよ」


 そして、どこから取り出しのか木刀を俺に向かって投げる。俺はそれを片手で受け止める。


「テメーが一回でも俺に一撃与えられたら逃がしてやるよ。だが、俺が勝てばオマエはウチへ入ってもらう。制限時間は無え。試合終了のゴングは、オマエが地べたに這いつくばるまでだ……安心しろ。木柴のダチのテメーを殺しはしねえ。まあ……数ヶ月は杖を突いて生活してもらうがな」


 額に青筋を浮かべながら、棍棒を肩に担ぐ。本気か……堂々とフルボッコ宣言しやがった。鼓動を早め、耳の奥がジンジンと熱くなる。啖呵切った以上、もう逃げられない。だったらもう──戦うだけだ。俺は木刀を構え、深呼吸をする。


「いくぞ……ゴルァ!!!」

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