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移行中  作者: あ
小田 ひなた編
17/106

#17 ダンジョー祭り①

「お、おぉ……」

「ヒュー!」

「フフ、どうだ。少しは惚れ直したか?」


 ロビーに戻ると、そこには浴衣を着た先生と小田さんが待っていた。良い事を思い付いたってこの事だったのか。髪をアップにしてる二人……ロングで普段見えないうなじが色っぽい。うんいいな。先生は色々とポージングを見せ付けてくるが、小田さんは恥ずかしいのか若干もじもじしていた。っていうか何で先生はワインのボトル持ってるんだろう……飲むんだろうか。


「か、可愛いですけどちょっと恥ずかしいです……」

「恥ずかしいってなんでだよ。浴衣なんて見せるの初めてじゃないだろ?」

「いや、そうじゃなくて……」


 気のせいか視線を感じる。けど俺は二人の顔をまじまじと見れないので確かめようがない。シャイボーイか俺は……!


「さて、そろそろ祭りが始まる時間だ。我々も早速行くとしようか。ククク……一年ぶりの縁日だ。楽しませてもらおうか」


 怪しげな笑みを浮かべ、先生は先導していった。後ろを歩いていると、先生と小田さんのうなじがこれまた眩しいんだ。ああ、いいな祭りは……。


「へへへ……佐藤、ひなたの側にいなくていいのか? しっかり守るようセンセーに言われてんだろ?」

「おま……なんでそれ知ってんだよっ」

「俺の研ぎ澄まされた聴覚を舐めんなよ。猿だけに地獄耳っつってな」


 何とどうかけたのかは意味不明だが、地獄耳なのは確かなようだな……今回の旅はずっとこれで弄って来るんだろうか。顔が物凄くウザイ。ニヤニヤしやがって。顔面公然わいせつで訴えていいかな。てかもう殴っていいかな。前に親父の事殴ったって言ってたし、殴ってもチャラだよな。よし。


「ふんぬ!」

「ぶふぇっ!? あにすんだよ!」

「え? ああ、スマン。でもこれでチャラだろ?」

「何がですか? 頭の中で勝手に話進めないでくれます!?」

「何、漫才してるんだ貴様らは。おいていくぞ!」


 先生に引っ張られながらホテルを後にした俺達は、高台にあるダンジョー祭りの会場へと足を踏み入れた。予想通り人はすごく、祭囃子も相成って賑わいを見せていた。粉物の焼ける匂いが空腹を刺激する。さあて一足先に夏を楽しむとしよう。


「つってもこれからどうすんだセンセー? 予定も何も聞いてないけど」

「予定? ククク、祭りに予定など必要無い。serendipity……流れ行く群衆に身を任せながら、食べ歩き、その場の雰囲気を味わう。そうして一期一会の出会いを楽しむのが縁日の様式美というものだ。書き起こした予定帳を見ながらでは、視野が狭くなるからな。さあ自由に楽しむぞ」

「うおーそうこなくっちゃなあ! 分かってるなセンセー!」


 すると先生はおもむろに山の深い方を指差す。その先には、おどろおどろしいフォントで書かれた肝試しの看板が。木柴と小田さんの顔からサーっと血の気が引いていく。


「う、嘘だろ……センセー……いきなりお化け屋敷?」

「マジだ。祭りに来たらまずは肝だめしだろう」

「いやいやいや! フツー屋台とかだろ、初っぱなから、やるかこれェ!?」

「先生。別のにしま……って、聞いてくれる訳ないか……あはは……」


 小田さんはがっくりと顔をうつ向ける。提案する前に諦めしまった。小田さんは分かるが、木柴がこういうの苦手なのは意外だな。


「ここやベーんだよ。奥の伏贄山(ふしにえさん)は、500年前の古戦場として有名な心霊スポットなんだぞ……処刑場としても使われてて、何千と人が死んだ場所なんだ……行くと絶対首が痛むって噂だぜ」

「や、やめてよ……猿のばかっ!」


 マジすか…その話を聞いて、俺も少し顔が青ざめる。地元民ヤバいって言う場所って絶対ヤバいからな……が、反対に先生は嬉しそうに口角を上げる。


「そんな場所に金を払わせ儲ける、か……面白いじゃないか。その霊に対する無作法な姿勢、嫌いじゃないぞ。よし、ここは二人一組になって挑んでみよう」

「えっ? 二人一組……ですか」

「ペアはもちろん、私と木柴、佐藤クンとひなたサンペアで行くぞ」

「わ、私と佐藤君……」

「うぐおおおぉ! なんじゃそりゃあ! もう既にこえーよ!」


 何がもちろんなのかは分からないが、そんな事を考える暇もなく、先生に手を引っ張られ入り口に立たされる。入り口の奥に見える山への道は濃く影が残り、予想以上に異質な雰囲気を醸し出していた。


「ゲヒヒヒ、いらっしゃいませェ……ダンジョー祭り名物、伏贄肝だめしへようこそ……」

「うぉ! なんだこのバーさん!」

「ここは太古の霊魂が集い揺らめく、冥界の聖山……このランタンをお持ちになって下さい。道はその灯火が導いてくれますゆえ……麓のどこかにある墓標のお札を剥がしてもってこれたら、見事クリアでし」


 こ、こえぇ……洒落になんねえよ! 墓のお札ってなんだ。死者の冒涜にも程があるぞオイ。お化け屋敷とかの作り物の類いは平気だが、こういうガチの心霊系は苦手なんだ……が、俺まで怖がってはペアの小田さんは更に怯えるだろう。守ってやってくれという、今朝の先生の言葉が脳裏に浮かぶ。くそ……腹括るか……。





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