第十七話 逆転
「状態異常なんてかかるわけが…痛い、痛い!やめてぇー…」
「状態異常が効いて…る?どうしてですか?」
サイナは、ソフィアのかけた状態異常魔法に、苦戦していた。
「えっと、今回は前と違って精神攻撃を行う状態異常をかけたんだよ。見事ハマったねー」
「じゃあ私たちは今攻撃するわよ。≪ダークエンチャント≫、≪ダークソード≫」
「私も協力するね!竜王槍術≪斬突≫」
「≪エンチャント・アイス≫、≪アイススティング・アロー≫!」
一気に三つの必殺攻撃を受けたサイナは、大ダメージを受けたかのように後ろに倒れた。
「うっ!私が苦しんでいる間に必殺攻撃をかけてくるとは…!まことにずるいですねぇ!≪コラプション≫!」
すると、先ほど修復されたばかりの床がまたひび割れて崩壊し始めた。ダメージを受けても、魔法の腕は健在だった。
「皆さん、離れてください!」
オリビアの掛け声で四人は彼女の近くから離れる。
しかし、それは悪手だった。
先ほどまで唇をかんでいたサイナは、いきなりニヤリと笑うと、
「ぷぷっ、あなた達はバカなんですかぁ?今度こそ、さようならぁ。≪サンダーボルト≫」
一つの場所に集まったオリビアたちのもとに稲妻を召喚した。
ソフィアは上に降ってくる雷の閃光に、危機に瀕していることも忘れて思わず見とれてしまう。
しかし、その直後、彼女は我に返った。
「あっぶねー。お前らもうちょいで死ぬとこだったぞ」
さっきまで屋台に向かっていたニックが、彼女たちを押して助けたのだ。
ソフィアは、いつもとは打って変わり、彼のことが少し、かっこよく…
「ってうまいなこれ。あと十本買っとこ」
思わなかった。むしろかっこ悪いと思った。
「私の戦略が…まあいいです。私にはまだカードがありますからねぇ!≪メテオライト≫!」
彼女がそう唱えると、上から大量の隕石が大きな音とともに落ちてくる。
しかし、ソフィアはいち早く危機に気づき、
「≪アイアンウォール≫!」
間一髪のところで結界を生成した。
「あぶなかったー。油断は禁物だねー」
「なんてこと言ってる間にまた即死級の攻撃を出してきますよ!さっさと倒しましょう!」
「だったら俺がやるよ」
「え?」
ニックはそう言うと、サイナの近くに向かった。
それと同時に、サイナは自分にシールドを生成する。
「今から剣を振ればいいんだろ?」
「いや、絶対無理で…え?」
オリビアは無理だと思っていたが、思わぬ結果に彼女は目をこすった。
そう、彼の振るった剣に、サイナはあがいていたのだ。
そして、
「ゔ!苦しい…私の計画がぁ…」
そう言い残すと、サイナはあっけなく意識を失い、クレラの人格が戻ったのか彼女は倒れて眠っていた。
「え?今何が起こったの?もう倒したの?」
「私も、一瞬すぎて全く分かりませんでした…」
「俺もー」
「いや本人は分かってるでしょ」
「何で倒せたんだろー…」
皆、今起きたことが全く把握できていなかった。
「まあとにかく次この子を憑依したら、どうなるかわかってますよね…って、あ!ケイヤさんを探しに行くのを忘れていました!」
「あ、そう言えばそうだったねー」
「ケイヤ…?そんな人いたっけ?」
「存在まで忘れられてるなんて、彼はもう末期ね」
しかし、彼女たちはケイヤがいる場所を知らない。
「でもどこにいるかわからないねー」
「最後は…気になることがあるって言っていましたね」
「気になる場所…気になる場所…あ!」
ニックが何か思いついたように声を上げ、周りは彼に視線を向ける。
「もしかして…食べ物買ってんじゃないのか?」
「期待した私がバカでした」
「でもとにかく行こうぜ!」
「それはあなたが行きたいだけですよね…」
やはり変な答えが返ってきて皆ががっくりしていると、
「私は一つ心当たりがあるわ」
ブライドがもう一つ思いついた。
「今度はバカな答え出さないでくださいよ?」
「私とニックを一緒にしないでくれる?」
「あ、下の名前で呼び捨てしましたね。二人の男性が好きなんですか?」
「二股だねー」
「なぜ二人の人が好きだったら浮気になるのか…ってまだその下り続いてたの…」
飽きれたようにツッコむと、ブライドは咳払いをした。
「まあとにかく、私が思うに、彼がいる場所はおそらく領主屋敷じゃないかしら」
「あの領主ですか?人外の」
「おそらく彼は領主屋敷に何か探りに行った可能性があると思うのよ」
「じゃあとりあえず領主屋敷の近くに行って、目撃情報を集めましょう」
そして、彼女たちは領主屋敷に向かったのだった。
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領主屋敷の前に着くと、近くで店員が前で客引きを行っていた。
「すいません、ここ数時間で領主以外で領主屋敷に誰か入りませんでしたか?」
「そういえば、一人男が入っていったよ」
「それはいつくらい前でしたか?」
「三、四時間前だったような…」
すると、ブライドが途端に青ざめた。
「もしかして…!その後は、同じ男性は屋敷から出てないわよね?」
「はい、そうですが…」
「間に合うかしら…」
ブライドはそう言って唇をかむと、屋敷の扉に向けて走り出した。
「えっ?どこに行くんですか?」
そんな声も聞こえず、彼女は扉を守っている兵士も突き飛ばして、勢いよく扉を開けた。
「やっぱり…」
衝撃的な光景を目の当たりにしたブライドは、開いた口が塞がらなかった。
それについてきたオリビアたちも、その光景に声が出なかった。
彼女たちの視線の先には、血が滴っている剣をもって無傷で立っている領主と、
血まみれになった慶也が倒れていたのだった。
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次回の投稿は12月10日金曜日16:00です。




