文学少女と俺の間には夢幻という名の溝がある
うちの高校は別に勉学はあまりよろしいほうではないが、部活動の数だけはここらの学校の中じゃ1番多い。結果はまぁ、そこそこだけど。
そんな中でも俺は文学部に所属している。理由は文学少女に会えるから。
文学少女はいつでも本を持ち歩いていて、暇さえあれば本を読んでいる。だから付けられたあだ名だ。本名は俺も知らん。
単刀直入に言うと俺はこの文学少女に恋をしている。一目見たときからずっと、いわゆる一目惚れというやつだ。だから毎日別に好きでもない本を読みにこの部活に通っている。
「君も、この本読んだの?」
彼女が俺に話しかけてきた第一声だった。
俺は首を縦に振った。何故って?そりゃあ彼女との接点が欲しかったからな。別にこの本は読んでないけど、適当に相槌打ってれば話は繋げて…
「いいよねあれ!やっぱり主人公とライバルとのあの駆け引き!絶対ライバルくんは主人公の事が好きなんだよ!公式がそんな事ないって言っても私の中ではあの二人はカップルだもん。ふふふ…」
………どうやら地雷を踏んだようである。
話を聞く限り彼女はどうやら[腐女子]というものらしい。ついでに言うと[夢女子]というものでもあるらしい。俺にはさっぱり分からないが。
話している内容はほぼ全く分からないが、彼女はバンバン自論を展開していく。とりあえずこれは彼女の夢や幻を詰め込んだんだろうという事だけは辛うじて分かった。話している内容は全く分からないが。
まぁ、彼女が楽しそうならそれでいっか。
これは彼女とは絶対にうまくいかない事が分かっているのに諦めきれない俺と、そんな事を微塵も知らない文学少女(?)の話である。