りょさんじんの店
昼になったのでりょさんじんさんの店にむかうことに。
そこはこじんまりとした喫茶店で店内には落ち着いた空気が流れていた。
席に座り、コーヒーとおすすめだというハンバーグランチを頼む。
暫くして出てきたハンバーグはふっくらこんがりとした見た目をしており、見ているだけで食欲を掻き立てられる。
ナイフをいれてソースを絡めて一口。
噛み締めるごとに肉汁が溢れ、肉の旨味をダイレクトに伝えてくる。
ソースは王道のデミグラス。
コクのあるソースはハンバーグとよくあい、絡めて食べれば旨味が倍増する。
それに切ったときに肉汁が溢れ出さないのもいいな。
ハンバーグなどは切った時に肉汁が溢れ出せばいかにも美味しそうに見えるが実際は旨味などを逃がしているだけ。
溢れ出させるのは口のなかだ。
しかしこのランチは旨いな。
ハンバーグはもちろん付け合わせのシーザーサラダにペンネ、オニオンスープ、軽く焼いたパン、どれも絶品でなおかつ他の料理の邪魔をしていない。
食後のジェラートを堪能しているとりょさんじんさんが女性と一緒に現れた。
り「私の料理はいかがでしたか?」
僕「とても美味しかったですよ。りょさんじんさんの他の料理も是非食べてみたい。」
り「有難うございます。…あぁ、紹介が遅れました。私の横にいるのは妻のニャルです。」
聞けば奥さんはβの時からデザートだけを作り続け、甘味の女王と呼ばれていたらしい。
たしかに僕の食べたレモンのジェラートも爽やかな酸味と甘さでとても美味しかったな。
ニャルさんにそういうと恥ずかしそうに「有難うございます。」といったあとりょさんじんさんの二つ名も教えてくれた。
このゲームのβ期間は1ヶ月あったのだが最初は料理は死にスキルだったらしい。
プレイヤーいわく料理をしても不味いだけ、工程もリアル寄りでめんどくさい、大体料理ならNPCから買えばいい、わざわざ作る意味がない、といった理由で料理は使えないものとされたらしい。
だが、それは間違いだ。
たしかに工程はリアル寄りといえばそうだがそれでもある程度は省かれているので普段から料理をする僕なんかはむしろ楽でいいと思ったし、味に関しては単にそのプレイヤーが下手だっただけだろう。
それに料理にはバフがある。
これは一般のNPCにはつけられないものだ。
りょさんじんさんも同じ意見らしく、何よりリアルでも小規模ながら店を経営している一料理人としてそんな評価をつけられたことが我慢ならなかったらしい。
なのでβの1ヶ月間、ただ料理だけを作り、プレイヤー達に味を認めさせたのだという。
それでついた二つ名が料理王らしい。
今度リアルでも店に行くことを約束して店を後にした。