↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。  作者: 桜庭かなめ
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/324

第68話『ありがとう』

 ――ごめんなさい。華頂さんとは付き合えません。俺は……高嶺結衣さんという人が一番好きだからです。


 俺が恋人として付き合いたいのは華頂さんではなく……高嶺さんだ。

 告白を断られたショックからか、華頂さんは何も言わずに俯く。そんな時間がとても長く感じる。


「……そっか」


 俯き始めてから、どのくらいの時間が経っただろうか。

 華頂さんの口から小さな声に乗せてそんな言葉が漏れ、両眼から大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちる。華頂さんは右手で涙を拭った。


「結衣ちゃんのことが一番好きなんだね」


 そう言って微笑む華頂さん。涙も止まっているし、俺の返事を何とか受け止められたのかな。


「……そうだ。高嶺さんは卑猥なことを言うし、スキンシップも激しいけど……いつしか、あの明るい笑顔を見ると安心して、元気が出るようになったんだ。だから、高嶺さんがお店に来なかったり、風邪を引いて学校を欠席したりしたときは凄く寂しかった。学校で元気な姿をまた見られたときは凄く嬉しかった。今思えば、高嶺さんが学校に来た木曜日の時点で、確実に高嶺さんへの好意が芽生えていたんだと思う。華頂さんに告白されたときに、高嶺さんが好きだってはっきりと自覚したよ」

「……なるほどね。あたしは、ゆう君に結衣ちゃんを好きだと気付かせるお手伝いをしたんだね。自己中心的に動いたことの罰なのかも」


 切なげな表情をした華頂さんは長く息を吐いて、アイスティーを一口飲んだ。

 俺もアイスコーヒーを一口飲む。華頂さんからの告白を振った直後だから、さっきよりも苦く感じた。その苦味は口の中にしっかりと残る。


「華頂さんが俺を好きだと言ってくれたのは凄く嬉しかった。俺の初恋の人は華頂さんだから。最近になって、華頂さんと一緒に過ごす時間ができて幸せに思ったし、正直、2年前よりも好きだと思う。でも、一番好きで、恋人として付き合いたくて、ずっと一緒にいたいと思う人は高嶺さんなんだ。だから、華頂さんの告白はお断りします。本当にごめんなさい」


 俺は華頂さんに向けて深く頭を下げた。2年も抱き続けてくれた自分への好意を断ってしまったのだから。もしかしたら、華頂さんは嘘の告白をしたときよりも辛い想いをしているかもしれない。


「顔を上げてよ、ゆう君」


 華頂さんがそう言うので、ゆっくりと顔を上げる。すると、そこにはこちらを向いて優しい笑みを浮かべている華頂さんの姿があった。


「謝る必要なんてないよ。ゆう君はあたしの告白を聞いてくれて、正直な気持ちをあたしに伝えてくれたから。告白を断られたことはショックだよ。凄くショック。でも、ゆう君の話を聞いて、結衣ちゃんのことを思い浮かべると、結衣ちゃんがお似合いだって思える。…応援してるよ。結衣ちゃんと付き合えるようになること。付き合うようになったら、ずっと仲良く過ごしていくことを」

「……ありがとう、華頂さん」


 華頂さんはアイスティーを持って、最初に座った向かい側のソファーに戻った。

 華頂さんに高嶺さんとのことを応援されたから、頭の中に高嶺さんの笑顔が次々と思い浮かんでくる。そのことで胸が温かくなっていく。やっぱり、高嶺さんのことが好きなんだって思う。それを高嶺さんにちゃんと告白しないと。

 ただ、まずは華頂さん……桐花さんに今までの想いをしっかりと伝えないと。


「……桐花さん」

「……何かな、低変人さん」

「俺のお見舞いに来てくれたときにも言ったけど、俺は桐花さんに一度、会いたかった。だから、低変人としてお礼を言わせてほしい。桐花さんとネット上で話すようになったから、この2年間、とても楽しく過ごせたよ。だから今のような音楽活動ができているんだ。桐花さん、本当にありがとう」


 ありがとうの一言じゃ足りないくらいに感謝している。ただ、それを伝えられる言葉は「ありがとう」としか思いつかなくて。それが悔しく思えるほどに感謝している。

 桐花さん……華頂さんは可愛らしい笑みを浮かべて、


「こちらこそありがとう、低変人さん。桐花として付き合ってきたからこそ、何もできなくて辛く思ったときや、正体を明かすべきかって悩んだときもあった。でも、桐花としての交流がなかったら、この2年間は楽しいと思える時間は全然なかったと思う。本当にありがとう。あたしにこんなことを言える資格はないだろうけど、これからも……あたしとお友達でいてくれますか? あなたを好きなままでいていいですか? その気持ちがあると元気出るから」


 華頂さんらしい温かな想いを口にすると、華頂さんは俺に右手を差し出してきた。そんな華頂さんに対する返事はもちろん、


「これからもリアルでも、ネットでも友人としてよろしくお願いします。華頂さんが元気出るなら、俺を好きなままでいてくれてかまわないよ」


 俺は華頂さん……桐花さんの右手をぎゅっと握った。華頂さんは頬をほんのりと赤くして、ニッコリとした笑みを浮かべる。


「ありがとう」


 低変人としてネットで桐花さんと出会ってから2年。俺達は2度目。華頂さんとの出会いを含めたら、3度目の出会いを果たせた気がした。

 それからはお互いに好きな作品などについて話しながら、注文した飲み物やスイーツをいただいた。とても大事な話をした後なのもあって、凄く味わい深く感じられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでいただきありがとうございます。ブックマーク登録、評価、感想、レビューなどお待ちしております。
もし面白かったと思いましたら、☆の評価ボタンから評価してくださると嬉しいです。よろしくお願いします。

『まずはお嫁さんからお願いします。』の番外編2を公開しました!(2026.8.1) 高校生夫婦学園ラブコメです。是非、読みに来て見てください。
URL:https://ncode.syosetu.com/n4654ig/

『クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。』の特別編5が完結しました!(2026.6.26) 学園ラブコメです。是非、読みに来てみてください。
URL:https://ncode.syosetu.com/n3046ir/

『10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ』の特別編7が完結しました!(2026.6.4) ダブル幼馴染ヒロイン学園ラブコメです。是非、読みに来て見てください。
URL:https://ncode.syosetu.com/n9714hq/

『サクラブストーリー』の特別編9-夏の甘い一日編-が完結しました!(2026.5.24) 幼馴染同居ラブコメです。是非、読みに来て見てください。
URL:https://ncode.syosetu.com/n0860gg/

『管理人さんといっしょ。』の特別編12が完結しました!(2026.5.19) 学園同居ラブコメです。是非、読みに来てみてください。
URL:https://ncode.syosetu.com/n9156fn/

『恋人、はじめました。【旧タイトル:告白を全て断っているクラスメイトのクールな銀髪美少女に勇気を出して告白しました。その結果、お試しの恋人、はじめました。】』の特別編9が完結しました!(2026.3.6) 学園ラブコメ作品です。是非、読みに来てみてください。
URL:https://ncode.syosetu.com/n6867gw/

小説家になろう 勝手にランキング ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
うん。これでよかったと思う。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。