第31話『入浴中のマッサージ』
夕食後。
両親と芹花姉さんの厚意もあって、結衣と俺は一番風呂をいただくことになった。お風呂の準備はもうできているので、すぐに入れるという。有り難い。また、お風呂から出たら芹花姉さんにその旨を伝える約束をした。
俺の部屋で着替えなど必要なものを準備し、結衣と一緒に洗面所へ向かった。
洗面所で俺達は服を脱いでいく。お互いの姿が見える中で。
服を脱いでいく結衣の姿にそそられるものがある。脱いでいく中で結衣の素肌が段々と露わになっていくし。あと、すぐ近くに立っているから、結衣が服を脱ぐと結衣の甘い匂いがほんのりと感じられて。そのことにドキッとする中で、脱いだ衣服を洗濯カゴの中に入れた。
「今日も悠真君の体は素敵だね。いい匂いもするし……」
えへへっ、と声に出して笑いながら、結衣は衣服を全て脱いだ俺の体をじっくりと見ている。恍惚とした笑顔になっていて。結衣らしい。ちなみに、結衣も全て脱ぎ終わっている。
「ありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ。結衣の体も素敵だよ。いい匂いもするからドキッとする」
「悠真君にそう言ってもらえて嬉しい。ありがとう!」
ニコッと笑ってお礼を言うと、結衣は俺を抱きしめてキスしてきた。
お互いに衣服を全て脱いだ状態なので、結衣に抱きしめられたことで結衣の温もりと柔らかさを直接感じて。甘い匂いが先ほどよりも濃く感じられて。かなりドキドキするけど幸せで。ただ、そんな中でも唇から伝わる柔らかさは特別感があった。そう思いながら、俺は両手を結衣の背中に回した。
少しして、結衣の方から唇を離した。そして、俺の胸に顔を埋める。
「あぁ……いい匂い。幸せだよぉ……」
「それは良かった」
俺は結衣の頭を優しく撫でる。
すー……はー……と、結衣は俺の胸の中で深呼吸している。だから、結衣の生温かい鼻息が胸にかかってちょっとくすぐったい。でも、全く嫌だとは思わない。
「あぁ、悠真君の匂いを堪能できた」
そう言うと、結衣は俺の胸から顔を離した。堪能できたと言うだけあって、結衣は満足そうな笑顔になっていた。可愛い。
「それは良かった。じゃあ、そろそろお風呂に入ろうか」
「そうだね! あと、今日も髪と背中を洗いっこしない?」
「ああ、いいぞ」
「ありがとう!」
その後、俺達は浴室に入り、結衣、俺の順番で髪や体や顔を洗っていく。もちろん、結衣の希望通り、髪と背中については洗いっこして。
今日も結衣の髪と背中はとても綺麗だ。傷つけてしまわないように丁寧に洗っていった。洗っている間、鏡越しに結衣のことを見ると、結衣はとても気持ち良さそうにしていて。それが嬉しかった。
また、今日も結衣に髪と背中を洗ってもらうのがとても気持ち良くて。毎回思うけど、結衣って洗うのがとても上手だなぁ。鏡越しで結衣のことを見ると、結衣は楽しそうに洗っていて。その姿を見たときも嬉しい気持ちになった。
「よし、俺も全部洗い終わった。結衣、俺も湯船に入るよ」
「どうぞ~」
最後に顔を洗い終えた俺は、既に結衣が浸かっている湯船の中に足を踏み入れる。結衣と向かい合い、体育座りのような姿勢で湯船に浸かった。
「あぁ、気持ちいい」
全身にお湯の温もりが沁みていく。先週の月曜日から今日までずっと学校があったし、今日は文化祭の片付けがあったからかな。お湯がとても気持ちいい。
「気持ちいいよね、悠真君」
結衣はまったりとした笑顔でそう言った。結衣の笑顔を見ていると、お風呂の気持ち良さが何割か増した。
「ああ。ただ、今日は結衣と一緒に入っているから凄く気持ちいい」
「そう言ってくれて嬉しいよ! 私も悠真君と一緒に入るお風呂は凄く気持ちいいなって思ってるよ」
「そうか。嬉しいぞ」
俺がそう言うと、結衣は「ふふっ」と声に出して嬉しそうに笑った。ここは浴室なので、結衣の笑い声がよく響く。ただ、不快に思うことはなく、むしろ甘美に感じるくらいだ。
結衣は肩にお湯を掛ける。それが気持ちいいのか、結衣は「あぁ」と声を漏らして、やんわりとした笑顔になる。今は裸だし、髪も髪留めで纏めているのもあって艶っぽさが感じられる。そのことにドキッとして、体の内側から熱くなる。
「最近は夜になると肌寒い日も出てきたから、温かいお風呂がより気持ち良く感じるようになったよ。入浴時間が長くなってきた」
「分かる。俺も最近は風呂に入るのが長くなってきた。温かいのがいいよなぁ」
「うんうん! 今もお風呂の温かさが凄くいいなって思ってる。悠真君と一緒に入っているのはもちろんだけど、先週の月曜日からずっと学校があったからかな。木曜日からは文化祭の準備、本番、片付けだったし」
「疲れが溜まっているのかもな。俺も文化祭の疲れか、いつもよりもお湯の温もりが体に沁みてるし。一緒にゆっくりと浸かろう」
「そうだね。……あと、お風呂から出た後に肩のマッサージをしてもらってもいいかな? 肩に凝り感じて。あまり痛くはないんだけど」
結衣は苦笑いをしながらそう言った。結衣……肩に凝りを感じていたのか。結衣はあまり肩凝りをしない体質だから珍しい。
「結衣。結衣さえ良ければ、今、マッサージしようか? 入浴中にすれば、もっと効果があるかもしれないし」
「確かに、入浴中に体を伸ばしたり、軽く揉んだりすると気持ち良くてスッキリするね。でも……いいの? 悠真君も湯船に浸かって気持ち良さそうにしているし」
「俺のことは気にしなくて大丈夫だよ。それに、結衣の肩凝りを一秒でも早く解消させたいし」
「そういうことなら……お願いしますっ」
結衣はニコッと笑いながらお願いした。
「分かった。じゃあ、マッサージしやすいように、俺に背を向けて座ってくれないか」
「うん、分かった」
結衣は俺の指示通り、俺に背中を向けた状態で座る。
俺は結衣のすぐ後ろで膝立ちして、結衣の両肩にそっと肩を乗せる。
「じゃあ、マッサージを始めるよ」
「お願いしますっ」
肩は凝っているけど、痛みはあまりないそうだから……弱めの力でやってみるか。そう決めて結衣の肩のマッサージを始める。
「あぁ……」
マッサージを始めた瞬間、結衣はそんな甘い声を漏らした。
「どうだ、結衣。痛くないか?」
「ちょっと痛みはあるけど、それ以上に気持ちいいよ。この力でお願いします」
「了解」
結衣がいいと思える力加減で良かった。この力加減を覚えておこう。
「凝りを感じるって言っていただけあって、肩が凝っているな」
「そっか」
「文化祭の準備、本番、片付けがあったし、結衣はクラスの喫茶店だけじゃなくてスイーツ部の屋台もあったからな。本番ではどっちの出し物でも接客をよく頑張っていたし。その疲れが肩に溜まったのかもな」
「そうかもしれないね。片付けまで終わって落ち着いたこのタイミングで、肩凝りを感じるようになったのかも」
「なるほどな。まあ、俺が凝りをほぐすから安心してくれ」
「うんっ。ありがとね」
結衣はお礼を言うと、こちらにチラッと顔を向けて微笑みかけた。
その後も結衣の肩のマッサージを続けていく。
気持ちいいと思っているようで、結衣はたまに「気持ちいい」とか「んっ」といった甘い声を漏らす。結衣も俺も裸なのもあって結構ドキドキする。
「あぁ……本当に気持ちいい。悠真君のマッサージもお風呂も気持ち良くて。凄く贅沢な時間を過ごせているよ」
「そうか。ここでマッサージしてみようって言ってみて良かったよ」
「提案してくれてありがとう。これからも、お風呂の中で肩凝りを感じたらマッサージしてもらおうかな」
「ああ。いつでも遠慮なく言ってくれ」
「うん、ありがとう」
結衣にとても気持ちいい時間をもたらすことができて良かったよ。気持ち良さそうにしているし、お泊まりでお風呂に入るときの恒例になるかもしれないな。
「……結衣。肩の凝りがほぐれたと思うけど、どうかな?」
「どれどれ……」
俺が手を離すと、結衣は両肩をゆっくりと回した。さあ、肩の凝りは取れているかな?
「うん、取れたよ! スッキリした!」
弾んだ声でそう言うと、結衣はこちらに振り向いて、
「悠真君、ありがとう!」
いつもの明るくて可愛い笑顔でお礼を言った。そして、マッサージのお礼か、結衣は俺にキスしてきた。
入浴中なので、結衣の唇はいつもよりも湿っていて、温もりが強くて。いつもとは少し違うけど、今のキスも心地いい。
数秒ほどして、結衣の方から唇を離した。
「悠真君。お礼に悠真君の肩をマッサージするよ! 文化祭の疲れがあるって言っていたし」
「ありがとう。凝りは感じないけど、マッサージしてもらったらよりスッキリできるかも。お願いするよ」
「うんっ」
結衣はニコッとした笑顔で頷いた。
俺は結衣に背を向けた体勢で座る。その直後に俺の肩に結衣の手が優しく触れる。
「じゃあ、マッサージするよ~」
「ああ、お願いします」
結衣に両肩をマッサージしてもらい始める。
揉んでもらっている箇所に痛さと気持ち良さを感じる。凝りは感じていなかったけど、俺も肩に疲労が溜まっていたのかもしれない。
「気持ちいいなぁ……」
「良かった。悠真君の肩もちょっと凝ってるね」
「そうか。俺も文化祭の疲労からだろうなぁ」
「そうだろうね。揉み方は今みたいな感じでいい?」
「ああ。お願いするよ」
「はーい」
優奈の可愛らしい返事が浴室の中に響き渡った。
それからも結衣に肩のマッサージをしてもらう。
結衣……マッサージするのがとても上手だ。凄く気持ちがいい。湯船の温かさもあってかなり癒やされる。
「結衣がさっき、贅沢な時間を過ごせているって言ったのが分かるよ。本当に気持ちいい」
「ふふっ、だよね。悠真君にそういう時間を過ごしてもらえて嬉しいよ」
「ありがとう、結衣」
「こちらこそ」
結衣は優しい声でそう言った。きっと、今の結衣の顔には優しい笑みが浮かんでいるんじゃないだろうか。
入浴中のマッサージ……凄くいいな。これから習慣にしていくのもいいかもしれない。特に体育の授業やバイトがあった日は。そう思えるくらいに気持ちがいい。
「悠真君。凝りがほぐれたよ。確かめてみてくれる?」
そう言って、結衣は俺の両肩から手を離す。
俺は両肩をゆっくりと回してみる。
「……うん、特に凝りや痛みは感じない。スッキリしたよ」
「良かった!」
「ありがとう、結衣」
俺は結衣の方に振り返って、お礼のキスをした。さっき、結衣にされたキスも良かったけど、自分からするキスもいいな。
数秒ほどキスした後、俺から唇から話した。
「ねえ、悠真君。悠真君に抱きしめられながら入りたいなぁ」
俺の目を見つめながらそうお願いしてくる結衣。可愛いお願いなのもあってキュンとなる。
「ああ、いいぞ」
「ありがとう!」
その後、俺は浴槽にもたれかかる形で湯船に浸かる。
結衣は湯船に浸かってゆっくりと俺に近づいてくる。そんな結衣のことをそっと抱きしめた。そのことで、お湯だけじゃなくて、結衣の体からも温もりが伝わってきて。柔らかさも伝わるからとても気持ちがいい。特に胸が当たっている部分は。抱き心地もいいし。
「あぁ、気持ちいい。気持ちいいお風呂の中で悠真君に抱きしめられて幸せだよ……」
甘い声でそう言う結衣。今の言葉が本心であると示すように、結衣は上気した顔に多幸感溢れる笑みを浮かべていて。本当に可愛い。
「俺も気持ちいいし幸せだよ。湯船に浸かりながら結衣を抱きしめているから」
「そっか。良かった。これで文化祭の疲れが取れそうだよ」
「俺もだ」
至近距離で見つめ合いながら俺達はそう言った。
その後も湯船に浸かっている間は結衣のことをずっと抱きしめ続けた。
たまに、結衣が俺の体を背もたれにする体勢にもなって。そのときは両手で結衣の胸に触れることも。結衣の大きな胸は柔らかくて触り心地がいいな。幸せな感触だ。
文化祭や打ち上げのことなどをたくさん話したり、キスしたりして。なので、楽しい入浴の時間になった。