第26話『文化祭閉幕』
昨日と同じく、結衣と伊集院さんと胡桃はスイーツ部の屋台の片付けや掃除があるので、俺は一人で教室に戻った。
教室に戻ると、お客様の姿はなく、クラスメイト達と福王寺先生がいた。昨日も教室戻ってくると同じような光景が広がっていたけど、昨日とは違ってちょっと寂しい気持ちがある。文化祭も終わりだからかな。この後、午後4時15分から体育館で生徒向けの閉会式をやるけど。
「みんな、文化祭2日間お疲れ! 今日もみんなのおかげで盛況だったぜ!」
「そうだったね! 大きなトラブルもなく終わって良かったよ。みんなお疲れ様!」
文化祭実行委員の佐藤と田中さんは明るい笑顔でそう言った。俺達生徒や福王寺先生も「お疲れ様」とお互いを労う。
「みんなお疲れ様。佐藤君と沙羅ちゃんは閉会式や後夜祭絡みで文化祭実行委員の仕事があって教室を離れるから、ここからは私が仕切らせてもらうね」
と、クラス委員の女子生徒が言う。そんな彼女に、佐藤と田中さんは笑顔で「よろしく」と言った。
文化祭は終わったけど、この後に閉会式や後夜祭といった文化祭絡みのイベントは残っている。おそらく、それらの準備をするのだと思う。頑張れ、佐藤、田中さん。
「明日は片付けの日だけど、スムーズに進めるためにも、今日のうちに掃除とゴミの片付けをしようか。あと、今もメイド服や執事服を着ている人は、更衣室へ着替えに行っていいからね」
「午後4時15分から体育館で閉会式をやるから、その近くまでとりあえず掃除とゴミの片付けをしましょう」
クラス委員の女子生徒と福王寺先生がそう指示し、俺達は『はーい』と返事した。
昨日と同じように、接客係の生徒達と文化祭について雑談しながら喫茶スペースの掃除をしていく。俺の弾き語りライブが良かったという声を聞きながら。
また、福王寺先生はスイーツ部の様子を見に行くと言って、一旦、教室を後にした。
午後4時近くになって、結衣と伊集院さんはすぐに教室に戻ってきた。2人ともスイーツ部のTシャツからクラスTシャツに着替えていた。結衣はクラス委員の女子生徒と一緒に売り上げの集計作業、伊集院さんは俺達接客係の生徒と一緒に喫茶スペースの掃除をしていく。
昨日も掃除やゴミの片付けをやったのもあり、昨日よりも順調に進む。
午後4時過ぎに福王寺先生が戻ってきた。先生はメイド服から、下はスラックス、上はクラスTシャツ姿になっていた。今日は朝礼のときからずっとメイド服だったし、先生のクラスTシャツ姿を見るのは久しぶりに思えた。
「じゃあ、みんな。閉会式の時間が近いから、掃除や片付けは一旦止めて、体育館に行きましょう」
『はーい』
俺はクラスメイト達や福王寺先生と一緒に体育館に行く。
閉会式の開始時間まで数分ほどだからか、体育館には既にたくさんの生徒や教師達の姿が。クラスTシャツや部活Tシャツ姿の生徒が一番多いけど、出し物の衣装と思われるものを来ている生徒もちらほらと見受けられる。
開会式のときと同じく、たくさんの生徒がいる中で、胡桃と中野先輩の姿をそれぞれ見つけられた。胡桃も中野先輩もクラスTシャツ姿でそれぞれの友人と談笑していた。
午後4時15分。
予定通り、閉会式が始まる。
校長先生、生徒会長の女子生徒、文化祭実行委員長の男子生徒が今年も文化祭が盛り上がったという旨のことを言った。また、生徒会長と実行委員長は、
「今年も凄く楽しくていい文化祭でしたね! 幸せな2日間でした! ありがとうございました!」
「みなさんのおかげで楽しくて素晴らしい文化祭になりました! 実行委員長としてとても嬉しいです! ありがとう!」
と声を張り上げて言う場面も。そのときには大きな拍手が巻き起こり、「楽しかったぜ!」「ありがとう!」と言う生徒が何人もいた。
その後は吹奏楽部の部員達により、校歌と今年のヒット曲のメドレー形式で演奏される。ヒット曲も演奏されるのでかなり盛り上がる。
「校歌以外も演奏するなんて! 凄いね、悠真君、姫奈ちゃん!」
「そうだな! あと、迫力が凄い!」
「とてもシビれる演奏なのです!」
俺は結衣と伊集院さんと一緒に盛り上がる。結衣も伊集院さんも楽しそうにしていてとても可愛い。
「素晴らしい演奏でしたね! それでは、これにて閉会式を終わります。そして、この後、午後5時半から校庭で後夜祭を行ないます! 後夜祭ではキャンプファイヤーなどをやる予定です! 興味がある方は是非、校庭に来てください!」
文化祭実行委員長によってそんなアナウンスがなされ、閉会式が終了した。生徒会長と実行委員長の元気のいい言葉や吹奏楽部の演奏、後夜祭というイベントがあるおかげで、明るい雰囲気で終わった気がする。
ちなみに、俺と結衣と伊集院さんは後夜祭に参加する予定だ。胡桃や中野先輩も参加すると聞いている。
「後夜祭でキャンプファイヤーやるんだね!」
「片付けのときに、スイーツ部の先輩方の言っていた通りなのです!」
体育館から教室へ戻る中、結衣と伊集院さんがそう言った。2人ともワクワクとした様子だ。キャンプファイヤーが好きなのだろうか。
「そういえば、姉さんも後夜祭でキャンプファイヤーをやっていたって言っていたな」
「そうだったんだね。あと、先輩方は、これまでの後夜祭ではキャンプファイヤー中にフォークダンスをやったって言っていたよね」
「言っていたのです。芹花さんはフォークダンスについては言っていたのですか?」
「フォークダンス……ああ、言ってた。友達と一緒に踊ったって。思い出したよ」
「そうなんだ! もし、フォークダンスをやることになったら、一緒に踊ろうよ!」
結衣は弾んだ声でそう言ってくる。結衣の目が輝いていて。
漫画やアニメなどで、キャンプファイヤーのときにフォークダンスをするシーンを見たことがある。フォークダンスは2人1組で踊るから、結衣は恋人の俺と一緒に踊りたいのだろう。
「ああ、いいぞ」
「ありがとう!」
「ただ、フォークダンスは一度も踊ったことがないから、まともにできるかどうか……」
「そこは私に任せて! 中学の林間学校のとき、夜にキャンプファイヤーをしてね。そのときにフォークダンスを踊ったから、基本的な動きは覚えてるよ」
「そうなんだ」
「フォークダンス踊りましたねぇ。楽しかったのです」
「楽しかったよね」
そのときのことを思い出しているのか、結衣と伊集院さんはニコッとした笑顔になっている。
結衣と伊集院さんは中学の林間学校でキャンプファイヤーをやったのか。だから、キャンプファイヤーをやることにワクワクしているのだろう。
「じゃあ、フォークダンスをやることになったら、結衣に踊り方を教えてもらおうかな」
「うんっ、任せてね!」
結衣はニコッとした笑顔でそう言ってくれる。結衣に「任せてね」って言われると何だか安心できるな。結衣は運動神経がいいし、教え方も上手だから、結衣の指導があれば何とか踊れそうな気がする。フォークダンスもあるといいな。
その後、教室に戻って、掃除と片付けを再開する。ただ、閉会式が始まるまでに結構進んでいたので、喫茶スペースの掃除と片付けはすぐに終わった。
結衣達がしていた売り上げの集計作業もすぐに終わったとのこと。今日は昨日以上に売り上げが良かったらしい。
また、調理係の生徒達から、喫茶店で提供する予定だったドリンクやスイーツ、クレープの材料が残っているという話が。掃除や片付けをしながら話し合った結果、開封済のものもあるため、残っているドリンクやスイーツを終礼の後にみんなでいただくことになった。
教室全体の掃除と片付けが終わったところで、終礼の時間になった。
「みなさん、今日もお疲れ様でした! これにて文化祭終了となります。今日も喫茶店はとても盛況でしたね! あと、午後にあった低田君の弾き語りライブも盛況でしたね! 今日もとても楽しい時間でした!」
そう言い、福王寺先生はニコニコとした笑顔で俺のことを見てきた。メイド&執事喫茶やスイーツ部の屋台はもちろんのこと、俺の弾き語りライブにとても満足していることが窺える。
福王寺先生が弾き語りライブに触れたのもあってか、クラスメイト達は俺に向かって「良かったぞ」「楽しかった!」といった感想や「お疲れ様!」と労いの言葉を言ってくれた。
「本当に良かったよ、悠真君!」
と、結衣は一番大きな声で褒めてくれて。そのことに嬉しい気持ちを抱き、
「ライブ楽しめました! ありがとう!」
とお礼を言った。
「明日は祝日ですが、片付けがあるので忘れずに来てくださいね。まあ、放課後に打ち上げがあるので、ちゃんと来ると思いますが。あと、閉会式でアナウンスがあったように、午後5時半から校庭で後夜祭があります。参加は自由です。では、これで終礼を終わります」
そして、今日の日程が全て終わった。
教室を見てみると、ほとんどの生徒が教室に残っている。みんな後夜祭に参加するつもりなのだろう。
結衣と伊集院さんは部活TシャツからクラスTシャツに着替えるために更衣室に行った。
終礼前に話した通り、残っているドリンクやスイーツをみんなでいただくことに。
また、調理係の生徒達が、残っている材料でいちごクレープ、チョコバナナクレープをそれぞれ数個作っていた。昨日の文化祭終了後に材料をいっぱい買っていたので、ちょっと残っていたとのこと。
文化祭中に喫茶店に来たときにクレープを2種類ともいただいたので、俺はマドレーヌとアイスコーヒーをいただくことにした。
また、クレープは人気があり数も少ないため、
「じゃあ、これからクレープジャンケン大会をするよー!」
ジャンケンで勝った人達が食べられることに。クラス委員の女子生徒が明るく取り仕切るのもあって結構盛り上がって。ちなみに、結衣がいちごクレープのジャンケン大会に参加して、見事に勝ち取っていた。
ドリンクやスイーツを楽しみながら文化祭のことなどで談笑したり、何人かのクラスメイトがスマホで撮影した俺の弾き語りライブの動画を観て盛り上がったり。ちょっとした打ち上げのような感じで楽しい時間になった。
ちなみに、撮影したクラスメイト達にお願いして、弾き語りライブの動画をLIMEで送ってもらいました。