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第6話『冬服の始まり』

 10月1日、火曜日。

 今日から10月がスタートする。それと同時に制服が夏服から冬服へと衣替えする。昨日の夜に冬服の準備をした。

 夏服から冬服への変更点は、ブレザーのジャケットが解禁されること。着ていいワイシャツやブラウスが長袖のみになること。また、男子の場合は黒地のネクタイのストライプの色が青から赤に変わること。スラックスの生地が温かいものに変わることだ。

 ただ、10月はジャケットを着るかどうかは自由になっている。日中は気温が高くなり、ジャケットを着ていると暑い日がまだあるためだと思われる。

 今日の天気は曇り時々晴れで、気温はそこまで高くならない。なので、長袖のワイシャツの上にジャケットを着ることにした。


「何だか懐かしいな」


 勉強机に置いてある鏡に映る制服姿の自分を見てそう呟いた。冬服を着るのは5月末以来だからかな。随分と久しぶりに冬服を着た感じがする。

 身だしなみチェックと持ち物チェックをして、俺はスクールバッグを持って自室を出る。

 1階のキッチンで弁当と水筒をバッグに入れていると、


「ユウちゃん、今日から冬服なんだね! 冬服姿もかっこいいよ!」


 と、芹花姉さんはワクワクとした様子で俺の冬服姿を褒めてくれた。


「ありがとう、姉さん」


 お礼を言って、芹花姉さんの頭を撫でる。すると、姉さんは「えへへっ」と嬉しそうに笑って。結衣達も俺の冬服姿を褒めてくれるといいな。特に結衣。


「じゃあ、いってきます」

「いってらっしゃい、ユウちゃん!」

「いってらっしゃい」


 芹花姉さんと母さんに見送られながら、俺は金井高校に向けて自宅を出発した。

 空を見上げると、雲が多くて、所々に青空が覗く程度だ。だから、ジャケットを着ていても暑くは感じない。たまに涼しい風が吹くのもあり、歩いていく中で感じる温かさが心地いい。

 数分ほど歩くと、金井高校の校舎が見えてきた。それもあり、周りにいる人達も金井高校の生徒が大半だ。今日から冬服になったのもあって、俺のようにジャケットを着る生徒もそれなりにいる。

 普段とは違って、校門には男女の教師や生徒会長を含めた『生徒会』と腕章を付けた生徒会の面々が立っている。きっと、今日から冬服がスタートしたから、ちゃんと衣替えができているかチェックしているのだろう。

 ちなみに、校門のところで男子生徒が1人呼び止められていた。その生徒をチラッと見ると、ネクタイのストライプの色が青だった。おそらく、夏服を着てきたから注意されているのだろう。

 俺は冬服を着てきたので、教師や生徒達に呼び止められることなく校門を通ることができた。

 第2教室棟の昇降口で上履きに履き替え、教室へ向かい始める。

 ただ、その途中……昇降口の近くにある掲示板の前で立ち止まり、文化祭ステージの有志出演者決定の紙を見る。昨日の朝も見たけど、ステージに出られるのが嬉しいから何度も見ちゃうんだよな。明日以降も登校するときは毎回見てしまうかもしれない。

 2階に上がって、後方の扉から1年2組の教室に入る。

 今日は暑くならないからか、ぱっと見半分ほどの生徒はブレザーのジャケットを着ている。昨日までとは教室の雰囲気ががらりと変わった気がする。

 後方の扉の近くにいる生徒に「おはよう」と朝の挨拶を交わす中、


「あっ、悠真君だ! おはよう!」

「おはよう、ゆう君」

「低田君、おはようございます」


 結衣の席で談笑している結衣、胡桃、伊集院さんが挨拶し、俺に向かって手を振ってくれた。

 結衣達はみんなブレザーのジャケットを着ている。ちなみに、女子の制服はリボンのストライプの色が赤くなり、スカートの生地がしっかりとした温かいものになる。冬服は5月末以来だからだろうか。とても懐かしく思える。


「みんなおはよう」


 結衣達にそう挨拶して、小さく手を振る。

 すると、結衣は俺のところにやってきて、俺を抱きしめる流れでキスしてきた。今日も結衣とキスできて幸せだ。

 2、3秒ほどして結衣から唇を離す。結衣は至近距離でニッコリと笑いかけてきて。冬服姿になっても結衣はとても可愛いな。

 結衣と一緒に自分の席に行き、スクールバッグを勉強机の上に置いた。


「3人ともジャケットを着てきたんだな」

「うんっ。今日はそこまで気温が上がらない予報だからね。それに、今日から冬服だからジャケットを着てきたの」

「あたしも同じ感じなのです」

「それに朝晩は涼しいからね。登校したときは温かくて気持ち良かったよ」

「そうなんだ。3人とも、冬服も似合ってるな」

「ありがとう、悠真君!」

「ゆう君、ありがとう」

「どうもなのです」


 結衣達は嬉しそうな笑顔でお礼を言った。特に結衣は。3人とも笑顔なのもあって、3人の冬服姿がより似合った印象になる。


「悠真君も冬服似合ってるよ! 凄くかっこいい!」

「似合ってるよね、結衣ちゃん!」

「久しぶりの冬服姿ですが、似合っていていいのです」

「ありがとう」


 結衣達から冬服姿を似合っていると言ってもらえて嬉しいな。結衣の頭を優しく撫でると、結衣は柔らかい笑みを浮かべた。


「そういえば、付き合い始めてから初めての冬服だね」

「付き合い始めたのは6月1日だから……確かにそうだな」


 みんなの冬服姿を見てとても懐かしいと思えたのは、夏が始まった6月1日に結衣と付き合い始めたからかもしれない。結衣と付き合い始めてからの日々は、それまで以上に楽しくて充実していたから。


「それと、今日で付き合い始めてからちょうど4ヶ月だな」

「そうだね! 何だか今日が物凄く特別な日に思えてくるよ!」

「そうだな。本当に特別な日だって感じるよ」

「2人とも4ヶ月おめでとうなのです!」

「おめでとう、ゆう君、結衣ちゃん!」

「ありがとう、姫奈ちゃん、胡桃ちゃん!」

「2人ともありがとう」


 付き合い始めてから4ヶ月になったことを恋人の結衣が喜んでくれて。俺達のことを友人の胡桃と伊集院さんが祝ってくれて。本当に俺は幸せ者だと改めて思う。


「結衣、これからもよろしくな」

「うんっ。これからもよろしくね、悠真君」


 笑顔の結衣と言葉を交わし合って、俺から結衣にキスをする。

 今のように、交際の節目のときには結衣と「よろしく」と言ってキスをするのが恒例だ。これからも結衣と仲良く付き合って、節目のときには喜び合いたいな。

 数秒ほどして俺から唇を離すと、結衣はとても嬉しそうな笑顔を向けてくれた。


「ねえ、悠真君。昨日みたいに制服姿の写真を撮ってもいい? 付き合い始めてから4ヶ月記念と、初めての冬服記念ってことで」


 結衣は可愛い笑顔で俺を見つめながらそうお願いしてくる。

 昨日は夏服最後だからと写真を撮ったので、今日は冬服姿の写真を撮りたいと言うんじゃないかと思っていたよ。あと、付き合い始めて4ヶ月記念&初めての冬服記念と理由を言うところが結衣らしいというか。そういうところを含めて可愛いな。


「もちろんいいぞ。写真、送ってくれよ」

「うんっ、ありがとう! 姫奈ちゃんも胡桃ちゃんもいいかな?」

「いいのですよ」

「あたしもいいよ」

「うんっ! 2人もありがとう!」


 その後、昨日と同じように、結衣のスマホで冬服姿の俺達の写真をたくさん撮った。約束通り、撮影した写真はLIMEで俺達のスマホに送ってもらった。

 こうして写真で見ると……夏服姿の結衣も可愛かったけど、冬服姿の結衣も可愛いなって思う。胡桃や伊集院さんも。そう思いながら、結衣が送ってくれた写真をスマホに保存した。記念の写真でもあるからなくさないように気をつけないと。


「いっぱい撮れて嬉しいよ。ありがとう!」


 結衣はとても嬉しそうにお礼を言った。ニコニコ顔の結衣は誰よりも冬服が似合っているなぁと思った。




 今日も学校生活が始まる。

 いつも通りに授業を受けるけど、5月末以来の冬服なのもあり、いつもよりもちょっと新鮮な気持ちで臨むことができたのであった。

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