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第4話『オーディションの結果』

 9月27日、金曜日。

 昼休み。

 俺はオーディションの結果を確認するために、結衣と伊集院さんと一緒に教室を出る。また、隣の1年3組の前で胡桃と合流して。

 オーディションの結果は、校内にある複数の掲示板に紙が貼り出される形で発表される。この第2教室棟の昇降口のところにも掲示板があるので、俺達はそこへ行くことに。

 昇降口前にある掲示板に行くと……まだ貼り出されていないな。


「まだみたいだね」

「ああ。まあ、昼休みになってからまだ2、3分しか経っていないからな。もうすぐ誰かが貼りに来るだろう」

「ご名答だよ、低田君」


 聞き覚えのある声が背後から聞こえたので振り返ると、すぐ目の前に音楽を担当している先生が立っていた。俺と目が合うと、先生はニコッと笑って。そんな先生は白い大きな紙と画鋲の入った透明なケースを持っている。あの紙にオーディション結果が書かれているのだろう。


「俺、手伝います」

「ありがとう。じゃあ、紙を押さえてくれる? ……このあたりに」

「分かりました」


 音楽の先生の指示に従って、俺は掲示板に紙を押さえる。

 音楽の先生は俺が押さえる紙の四隅に画鋲を刺した。


「ありがとう、低田君。そして、一昨日の放課後に行なわれたオーディションの結果発表です。その紙に書かれている個人や団体名が文化祭のステージに出演することになったよ」

「分かりました」


 俺は掲示板から一歩下がって、音楽の先生が持ってきた紙を見る。その紙には『文化祭ステージの有志の出演者発表!』と大きな文字で書かれている。その下には『9/25(水)に実施されたオーディションの結果、以下の生徒と団体が文化祭のステージに出演することが決まりました』と書かれている。

 ステージの参加者とパフォーマンス内容が一覧の形で記載されている。上から順番に見ていくと、


『低田悠真 ギターの弾き語り』


 と書かれていた! オーディション合格したぞ!


「あった! あったよ、悠真君!」

「あったのです!」

「文化祭ステージ出演決定だね、ゆう君! 凄いよ!」

「悠真君、おめでとう! 文化祭がもっと楽しみになったよ!」


 結衣、伊集院さん、胡桃が嬉しそうな笑顔でそう言い、結衣は俺にぎゅっと抱きついてきた。自分の名前を見つけたことよりも、3人が喜んでくれることの方が嬉しいよ。


「みんなありがとう! 俺も文化祭がもっと楽しみになったぞ」


 結衣達にお礼を言い、俺は結衣の頭を優しく撫でる。頭を撫でられるのが気持ちいいのか、結衣は俺のことを見上げて「えへへっ」と声に出して笑う。凄く可愛い。


「ギターの演奏も歌声も良かったから、私を含めてどの審査員からも高評価だったよ。特に異論なく合格になったよ」

「そうでしたか。本番も頑張ります」

「うん。期待しているよ」


 音楽の先生はニコッと笑いながらそう言った。

 本番でも弾き語りを聴いて良かったなと思ってもらえるように、引き続き練習を頑張ろう。ステージに出ることが決まったから、当日披露する曲を何にするか考えないとな。

 その後、オーディション結果の紙を写真で撮る。夏休みに伊豆旅行に行ったメンバーのグループトークと、月読さんとの個別トークに、


『オーディション合格しました。文化祭のステージでギターの弾き語りライブをやります』


 というメッセージと、オーディション結果の紙の写真を送った。すると、


『悠真、おめでとう!』

『ユウちゃんおめでとう!』

『おめでとう! 職員室に戻るときに確認したよ! 名前を見つけたときに興奮しちゃった!』

『悠真さん、おめでとうございます!』

『悠真君、おめでとう! 芹花ちゃんすっごく嬉しそうにしてるよ!』


 と、オーディション合格を祝うメッセージをくれた。文字だけど、みんなの祝う気持ちがとても伝わってきて嬉しい気持ちになる。胸がとても温かくなる中で、俺はお礼のメッセージを送った。

 結衣達と一緒に1年2組の教室に戻り、クラスメイト達にオーディションに合格したことを伝えた。すると、みんな、


「おぉ、合格したか! おめでとう」

「凄いな!」

「上手だったもんね! おめでとう!」

「当日楽しみにしてるよ!」


 などと、オーディションを合格したことを祝う言葉を言ってくれて。こんなにたくさん祝ってもらえて嬉しい。そう思いつつ、みんなにお礼を言った。




 毎週金曜日の6時間目にロングホームルームがある。

 ただ、文化祭が近くなってきたので、今週と来週は5時間目もロングホームルームになる。それにより、授業は実質午前中で終わったようなものだ。

 普段と違う日程。今週はロングホームルームのみというのもあり、午後になると教室の中の雰囲気は結構明るくなっていた。あと、昼休みに俺が文化祭ステージの有志参加のオーディションに合格したことも一因と言えるかも。それは自意識過剰かもしれないけど。

 今日のロングホームルームは、まずはメイド服と執事服、喫茶店のメニュー、喫茶店の中のレイアウト、クラスTシャツのデザインについて決める。その後、メイド服や執事服、クラスTシャツを買うために採寸を行なう予定だそうだ。


「今日も文化祭について話し合ったり、決めたりするぜ」

「いっぱいあるよ。接客係が着るメイド服と執事服。提供するメニュー。店内のレイアウト。クラスTシャツについてね。まずはメイド服と執事服から決めていこうか」


 最初はメイド服と執事服について。

 衣装係の生徒達はメイド服と執事について『購入する』『レンタルする』『手作りする』3択を考えていた。

 ネットで色々と調べたところ、メイド服や執事服をリーズナブルに購入でき、服の評判がいい販売サイトを見つけた。なので、現状は購入する方向で考えているという。

 衣装係の生徒は、販売サイトのメイド服や執事服のページを印刷したものを黒板に貼った。

 メイド服は半袖の王道デザインで、定番の黒はもちろん、紺色やピンクや水色など様々な色がある。

 執事服は燕尾服のようなもので、ジャケットやスラックスの色は黒系統のものがほとんど。

 また、メイド服や執事服は喫茶店の制服とも言えるので、統一するのがいいのではないかと衣装係は考えているとのこと。確かに、その方がよりお店らしくていいか。俺のバイトしている喫茶店でも従業員用の制服があるし。

 買う服を統一するかどうかを含めてクラスで話し合ったり、


「どのメイド服も執事服も素敵だね! ただ、統一した方が制服らしくていいなって私は思う」


 リーダーの結衣を中心に接客係の生徒達が意見を出したりした。

 多数決をとった結果、服の色は統一することに決まった。そして、メイド服も執事服も黒を購入することに決まった。



 次に喫茶店で提供するメニューについて。

 調理係の生徒達がメニュー案を考えてきてくれた。

 飲み物はコーヒーや紅茶だけでなく、コーラやオレンジジュースというジュースも提供。食べ物はクレープ、クッキー、フィナンシェといった洋菓子を出したいとのこと。クッキーとフィナンシェは既製品をそのまま出し、クレープは既製品の皮を購入して手作りしたいと考えているらしい。

 喫茶店らしいメニューだし、個人的はいいと思う。クレープも皮を既製品のものを使うなら、注文から提供までそこまで時間がかからずに済むだろうし。

 俺と同じように賛成なクラスメイトは多いのだろうか。飲み物についても食べ物についても賛成多数で調理係が考えてきたメニューに決まった。



 次は喫茶店のレイアウトについて。

 設営係の生徒達が店内の基本的なレイアウトを考えてきてくれた。

 教室の前方3分の2ほどを喫茶スペースにして、残りの後方3分の1をバックヤードにするのがいいのではないかと考えているとのこと。また、喫茶スペースとバックヤードは垂れ幕やカーテンなどで区切って見えなくさせようと考えているらしい。

 喫茶スペースにはテーブル席と、窓側にカウンター席を設けるらしい。教室にある机と椅子を使う。バックヤードでの調理台も机を使う予定とのこと。

 テーブル席とカウンター席があるのはいいと思う。この教室は2階なので、外の景色を眺めながらゆっくりできる席があるのもいいんじゃないだろうか。あと、調理するバックヤードも仕切りで見えなくさせればゆったりとした空間になりそうだし。基本的なレイアウトはこれでいいんじゃないかと俺は思う。

 設営係が考えたレイアウトは好評であり、そのまま決まった。



 最後にクラスTシャツについて。

 Tシャツについては、衣装係と文化祭実行委員の佐藤と田中さんがいくつか候補を考えてきてくれていた。

 クラスTシャツは文化祭だけでなく体育祭でも着たいと考えているとのこと。そのため、シャツの色については体育祭でのブロックの色とは被らない水色、白、黒、ピンク、オレンジ、紫を候補にしたらしい。体育祭でも着るならこの色の選び方はいいと思う。

 デザインは、前面にうちのクラスの『1-2』だけ書かれているシンプルなものや、メイド服や執事服のシルエットイラストが描かれたものなど。背面は野球やサッカーのユニフォームみたいに、背番号とローマ字で名前が描かれたもの、クラス全員の名前が描かれたデザイン候補とのこと。うちのクラスらしかったり、自分のシャツだと分かったりするデザインは個人的にいいなと思う。

 色とデザインについて様々な意見が交わされた。

 そして、多数決をとった結果、シャツの色は水色。前面にはメイド服と執事服のシルエット絵が描かれ、背面にはローマ字で自分の名前と出席番号が描かれるデザインに決まった。ちなみに、出席番号のない福王寺先生の背番号は0番になった。



 ちなみに、接客係からはクラス全体で話し合いたいことはない。

 ただ、今週になってリーダーの結衣、俺、伊集院さん、文化祭実行委員の佐藤と田中さんで何度か集まり、接客係の生徒達からシフト希望を訊いてシフト表を作ったり、接客のマニュアルを考えたりしている。

 シフト表は完成し、クラス全体の話し合いが終わった後に結衣がシフト表のプリントを渡した。「どの時間でもかまわない」と言ってくれた生徒が何人もいたおかげもあり、みんなのシフト希望が通った形で組んでいる。それもあり、みんな喜んでいた。

 俺は1日目と2日目の午前中にシフトに入ることになっている。1日目は結衣と伊集院さんと一緒で、2日目は2人と少しズレている。そうなったのは、


「姫奈ちゃんと一緒に悠真君に接客したいし、悠真君から接客されたくて」


 と、結衣が考えているからだ。可愛いことを考える。俺も2日目は結衣と伊集院さんに接客したり、されたりしよう。

 接客係の生徒の中には結衣や伊集院さんのように、部活の方の出し物に参加する生徒もいる。あと、俺はステージに出る。自分のシフトの時間にどうしても被ってしまった場合は、リーダーの結衣に早めに伝えてシフトを調整することにした。




 クラスでは喫茶店のことやTシャツのことが決まって。個人的には有志のステージに出演することが決まって。文化祭に向けて順調に進んでいるなぁ。そう思いながら、佐藤や橋本などの男子生徒達と採寸し合った。

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