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第2話『係決めとクラスTシャツ』

 先週末が3連休だったので、今週の学校は火曜日からのスタートだ。それだけでも何だかお得感がある。

 学校生活を送り、放課後は家でギターの弾き語りの練習をする。先日、結衣達に上手だと言ってもらえたことが自信にもなったし、結構順調だ。




 9月20日、金曜日。

 今日もいつも通りに結衣達と学校生活を過ごしていき、残るは6時間目のロングホームルームだけになった。

 うちのクラスの文化祭の出し物がメイド&執事喫茶に決まった。そのため、今日のロングホームルームでは担当する係を決める予定になっている。あとはクラスTシャツについても話したいそうだ。

 俺は接客の係をやりたいと考えている。ムーンバックスというチェーンの喫茶店で接客のバイトをしているから。

 結衣と伊集院さんも接客したいと考えている。今日の昼休みにお弁当を食べているときに2人がそう言っていた。2人は夏休みに中学時代の友達がバイトしているメイドカフェで、助っ人としてバイトした経験があるからだろう。あとはコンサートの物販バイトもしていたし。


「じゃあ、今日も文化祭の話し合いをするぜ」

「無事にメイド&執事喫茶に決まったので、今日は担当する係を決めるよ」


 ロングホームルームの時間が始まった。先週と同じく、文化祭実行委員の佐藤と田中さんが進行役になり、福王寺先生は窓側に動かした椅子に座って見守る形に。

 佐藤が黒板に文化祭の係と必要な人数を書いていく。

 係は接客、調理、衣装、設営の4つ。接客係は男子8人女子8人の計16人と一番多く人数が割り振られている。クラスの半数近くだ。メイドと執事というコンセプトカフェでもあるし、2日間あるからこのくらい人数に担当してもらうのは個人的には妥当だと思う。


「佐藤君や杏樹先生と話して、この4つの係に分担することに決めたよ」

「1人1つずつ係を担当してもらう予定だ」

「接客係は文化祭当日にメイド服や執事服に着て接客する係。調理係は提供する飲み物や食べ物のメニューの考案と材料の調達、当日は注文されたメニューを用意する係。衣装係はメイド服と執事服を用意する係。設営はお店のデザインやレイアウトを考えて、準備でお店を設営するときに中心になってもらう係だよ。当日は喫茶店の宣伝をしてもらおうと思ってる」


 田中さんはそれぞれの係の仕事内容について説明してくれた。


「メイド服とか執事服を着るのって、接客係だけ?」


 女子が手を挙げて質問する。その女子に向かって、田中さんは快活な笑顔で「そうだよ」と答えた。

 お客さんに接するのは接客係だけか。お客さんに接する係の人が着れば十分かな。結衣が喫茶店を提案したときに俺の執事服を見たいと言っていたし、接客係をしたい気持ちがより強くなった。


「じゃあ、これから希望する係のところに自分の名前を書いてね。それぞれの係の人数よりも希望する人が少なかったら決定。多かったときにはじゃんけんで決めよう」

『はーい』


 返事した後すぐに、半数以上のクラスメイトが席から立ち上がる。俺と結衣、伊集院さんも席から立ち上がった。


「悠真君。一緒に書きに行こう!」

「ああ」


 結衣に手を引かれる形で、俺達は黒板に向かう。

 接客係と書かれているところに行くと、そこには自分の名前を黒板に書いている伊集院さんの姿があった。


「結衣と低田君も来たのですね」

「うん。接客係のところに名前を書きに来たよ」

「俺もだ」

「ふふっ、そうですか。3人で一緒に接客できるといいのです」

「そうだね! メイド服を着て、執事服姿の悠真君とメイド服姿の姫奈ちゃんと一緒にやりたい!」

「そうだな」


 笑顔の伊集院さんと言葉を交わして、俺は接客係の男子のところに、結衣は女子のところにそれぞれ自分の名前を書く。

 今のところ、男子の方は俺を含めて3人、女子の方は結衣と伊集院さんを含めて6人か。男女それぞれ8人だから、このまま8人以下の希望者ですんなりと決まるといいな。メイド服姿の結衣と伊集院さんの姿を見たいし、一緒に接客の仕事をしたい。

 結衣と一緒に自分の席に戻る、結衣と雑談しながら、接客係を希望する人数の動向を見ていく。伊集院さんも自分の席から黒板を見つめていた。


「みんな、自分の名前は書いたかな?」


 10分ほどして、文化祭実行委員の2人以外は全員席に座ったので、田中さんがそう問いかける。

 田中さんの問いかけに対して、みんな「書いたー」と返事した。


「了解。じゃあ、それぞれの係の希望する人数を数えていこうか、佐藤君」

「おう。必要人数以下だったら、名前のところに赤いチョークで丸を付けるぞ。人数が揃ったら係の上のところに丸を付けるから」


 佐藤と田中さんはそれぞれの係の希望人数を数え始める。向かって一番右に書かれている接客係の男子から。

 接客係の男子の必要人数は8人。希望した人数は――。


「接客係の男子は5人希望か。じゃあ、ここに書いてある5人は接客係に決定な」


 そう言い、佐藤は接客係の男子のところに書いてある5人の名前を赤いチョークで丸で囲った。もちろん、俺の名字の『低田』も。


「良かったね、悠真君!」


 結衣は俺の方に振り返り、嬉しそうな笑顔でそう言ってくれた。無事に接客係に決まったのも嬉しい。ただ、結衣が嬉しそうにしてくれると、嬉しい気持ちが膨らんでいく。


「ありがとう、結衣」


 お礼を言い、俺は結衣の頭を優しく撫でる。撫でられるのが気持ちいいのか、結衣は柔らかい笑顔になる。可愛いな。

 佐藤と田中さんは、次に女子の接客係を希望する人数を確認していく。必要人数は男子と同じく8人。希望する女子の人数は――。


「10人だな」

「うん、10人だね。女子の接客係はあとでジャンケンで決めましょう」


 10人希望したか。喫茶店だから接客をやりたい女子が多いのかな。あとはメイド服を着られることに魅力を感じている女子も多いのかもしれない。


「10人か。すんなりとは決まらなかったね」

「そうだな」

「あとでジャンケン頑張るよ!」


 結衣はやる気に満ちた様子でそう言った。この様子ならジャンケンに勝って接客係になれそうだ。


「応援してるぞ」


 と、俺が言うと、結衣はニコッと笑いかけてくれた。

 また、同じく女子の接客係に希望した伊集院さんを見ると……笑顔でこちらを見ていた。結衣の気合いの一言が聞こえたのかもしれない。2人とも勝って、一緒に接客をやれるといいな。

 その後、調理係と衣装係はそれぞれ必要人数未満の生徒が希望していたので、希望した生徒はこの時点で決まった。

 また、設営係は男子中心にたくさん名前が書かれており、必要人数よりもかなり多くの希望者が。田中さんがさっき説明してくれた仕事内容によると、設営係の仕事は準備期間が主で、文化祭当日はあまりない感じだった。そこに惹かれて希望する生徒が多いのかもしれない。


「じゃあ、希望する人数が多かった係を誰がやるか決めよう。まずは女子の接客係から。希望した人達は立ってー」


 田中さんがそう言うと、結衣と伊集院さんを含めた希望者の女子生徒達が席から立ち上がる。


「結衣、頑張れよ。伊集院さんも」

「うんっ!」

「勝ち取るのです!」


 結衣と伊集院さんは元気良く返事をしてくれた。2人とも頑張れ!


「私も希望者だから、佐藤君がじゃんけんの掛け声を言ってくれる?」

「分かった、田中。じゃあ、じゃんけんするぞ。じゃーんけん、ぽい!」


 佐藤の掛け声で、接客係を希望する生徒達はじゃんけんを始める。


「あーいこでしょ!」


 10人でじゃんけんをするので、何回もあいこになる。佐藤の掛け声が教室に何回も響き渡って。

 そして、数回あいこが続いた後、


「勝った!」

「勝ったのです!」


 結衣と伊集院さんを含む4人の女子生徒がチョキ、他の6人の生徒がパーを出した。そのため、結衣と伊集院さんは接客係に決まった!


「よし、まず4人決まったな。チョキの奴はそのまま手を挙げていてくれ」


 佐藤はそう言い、じゃんけんで勝利した結衣や伊集院さんなどの生徒の名前を赤いチョークを使って丸で囲んだ。

 結衣は席に座ると、俺の方にすぐに振り返る。とても嬉しそうな笑顔で。


「悠真君、やったよ!」

「おめでとう。結衣のメイド服姿を見たり、一緒に接客できたりするから嬉しいよ」


 俺は結衣の頭をポンポンと軽く叩く。すると、結衣は「えへへっ」と声に出して笑って。本当に可愛いな。


「私も嬉しいよ。姫奈ちゃんも接客係に決まったし」

「そうだな」


 結衣だけじゃなくて、親しい友人の伊集院さんとも一緒に接客できるのは嬉しいな。伊集院さんのメイド服も見られるし。

 伊集院さんの名前が出たので彼女の方を見ると……伊集院さんが楽しそうな笑顔で俺達の方を見ていた。


「おめでとう、伊集院さん」


 と言って右手でサムズアップすると、伊集院さんはニコッと笑って右手でサムズアップしてきた。また、結衣も一緒にサムズアップしていた。

 結衣と伊集院さんと一緒に接客係になれて良かった。文化祭当日や準備では、半年続けている喫茶店での接客のバイトの経験を活かしていければと思う。

 引き続きジャンケンが行なわれ、女子の接客係の8人が決まった。

 その後、設営係を誰にするかのジャンケンが行なわれたり、第2希望をとったりするなどして、クラス全員の係が無事に決まった。


「これで全員の係が決まったね。みんなで頑張っていきましょう! 先生もサポートしていくからね」


 福王寺先生は優しい笑顔でそう言った。自分もメイド服を着ると言うほどにやる気になっているし、先生がサポートしてくれるのは心強いだろう。


「じゃあ、次はクラスTシャツについてだ。クラスみんなでクラスTシャツを買うかどうか決めたいんだ」


 佐藤はみんなのことを見ながらそう言った。

 クラスTシャツか。クラス全員が着るお揃いのTシャツのことだな。芹花姉さんがここの在学生のとき、毎年文化祭になるとクラスでTシャツを作っていたっけ。文化祭に行くと、姉さんはクラスTシャツを着ていた。


「俺の出身中学とか入っている部活の先輩達から、文化祭や体育祭ではクラスTシャツを作ってみるのもいいぞって言われてな」

「その話を佐藤君から聞いてね。そのとき、去年の文化祭に遊びに来たときに、お揃いのTシャツを着て楽しそうにしている生徒がいっぱいいたのを思い出して。同じTシャツがあると一体感が生まれるだろうし、思い出として残しておけるからいいなぁと思って」


 佐藤と田中さんはクラスTシャツについて話し合ういきさつを話した。


「文化祭に向けてTシャツを作ったクラスは今までにいっぱいあったよ」


 と、福王寺先生は補足するように言った。

 思い返すと、これまでに行った金井高校の文化祭では下はスカートやスラックスを穿いて、上はTシャツを着ている生徒がそれなりにいたな。あのTシャツはきっと、文化祭に向けて作ったものだったのだろう。


「うちのクラスでTシャツを作るの……どうかな?」


 田中さんが俺達のことを見ながら問いかける。

 クラスTシャツ……個人的にはいいんじゃないかと思う。芹花姉さんが文化祭で同じTシャツを着ている友達と楽しそうにしていたり、Tシャツを着た写真を見せながら文化祭や体育祭の思い出を楽しそうに話したりしていたから。


「クラスTシャツいいね。私は賛成。みんなと同じTシャツがあるのっていいなって思う。入っている部活でのことだけど、Tシャツを作るのが決まっていいなって思ったし」


 右手を顔の位置まで挙げて、結衣はそう言った。そういえば、何日か前に、結衣と伊集院さんと胡桃がスイーツ部でTシャツを作るって言っていたな。

 人気者の結衣が賛成したのもあってか、田中さんと佐藤は嬉しそうだ。俺も結衣が賛成なのを知って嬉しい。


「俺も賛成だ」


 俺がそう言うと、結衣は俺の方に振り返ってニコッと笑いかける。可愛い。


「あたしも賛成なのです」


 伊集院さんも賛同の意を示す。


「Tシャツを作るのはいいと思うけど……どのくらいの値段がかかるんだ?」


 男子生徒の一人がそんな質問をする。値段は気になるよな。


「ネットで調べたら、1500円から2000円くらいが相場だな。デザインとかプリントとかによっては価格が前後するけど」

「そっか。1500円から2000円か。まあ、そのくらいならいいかな。せっかくの文化祭だし」


 質問した男子生徒は微笑みながらそう言った。俺も男子生徒と同じ意見だ。

 その後も、クラスTシャツを作るのに好意的な声が次々と上がった。

 そして、クラスTシャツを作るかどうか多数決をとった結果――。


「賛成多数でクラスTシャツを作ることになりました!」

「みんなありがとな」


 クラスTシャツを作ることが決定した。提案した佐藤と田中さんは嬉しそうだ。

 クラスTシャツの色やデザインについては、提案者の佐藤と田中さん、衣装係の生徒達が中心となって考えていくことになった。

 ロングホームルームの時間がまだあるため、それぞれの係が集まって、リーダーを決めることに。

 接客係は教卓近くに集まる。俺、結衣、伊集院さんの他に佐藤や田中さん、出席番号が一つ前で男子の中では話すことが多い橋本大賀(はしもとたいが)、クラス委員長の女子生徒などがいる。

 話し合いを始めると、


「あたし、結衣ちゃんがいいなって思う。結衣ちゃんしっかりしているし。あと、助っ人で1日だけだけど、メイドカフェでバイトしたことがあるんだよね」

「オレ、高嶺の下なら、接客係の仕事を凄く頑張れそうだぜ」


 などと、結衣を推す声が出てくる。

 結衣は学校規模で人気者であり、人望はかなり厚い。明るくて気さくな性格だし。それに、1日だけど、夏休みにメイドカフェで接客のバイトを経験しているのも大きい。そういったことで、結衣のことを推す声が出るのだろう。


「中学の頃も、結衣は係のリーダーや班長を何度かやって、ちゃんと務めていたのです。なので、結衣なら大丈夫だと思えるのです」


 伊集院さんはいつもの可愛らしい笑顔でそう言う。伊集院さんは結衣の中学時代からの親友なので凄く説得力があるな。伊集院さんの言葉に結衣は嬉しそうにしている。


「俺も普段の結衣を見ていると、結衣がリーダーになるのはいいんじゃないかって思うよ。どうかな、結衣」


 俺は結衣にそう問いかける。結衣を推す言葉を言ったけど、結衣がどんな決断をしても尊重するつもりだ。

 結衣はニコッと笑って、


「うん、いいよ。じゃあ、私が接客係のリーダーをやるね」


 リーダーをやることを快諾した。そんな結衣に、接客係のみんなで拍手を送った。


「結衣。リーダー頑張って。俺もサポートするから。彼氏だし、4月から接客のバイトをしているし」

「あたしもサポートするのです」

「私にも相談していいからね。文化祭実行委員だし。ね、佐藤君」

「そうだな」


 俺、伊集院さん、田中さん、佐藤が結衣にそう声を掛ける。


「ありがとう! 心強いよ。接客係のみなさん、これからよろしくお願いします!」


 結衣は接客係のみんなに向かって元気良く挨拶した。そんな結衣に向けて再び拍手を送った。結衣がリーダーになったおかげで、接客係の雰囲気がとてもいいものになる。

 結衣に言ったように、結衣の彼氏として、半年近く接客のバイトをしている仲間として結衣のサポートをしていこう。

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