エピローグ『みんなのおかげで』
「あぁ、プリン美味しかった! みんなに食べさせてもらったから本当に美味しかった!」
結衣達4人が食べさせたのもあってか、芹花姉さんはとても満足そうに言った。
「一口ずつリレーして食べさせてもらうのは初めてだったから楽しかったよ。みんなありがとう」
「提案してみて良かったです」
発案者である結衣はもちろんのこと、胡桃達3人も嬉しそうにしていた。
俺はプリンを食べさせることはしなかった。だけど、一口ずつリレーして食べさせる場面を見るのは初めてだったので、見ているだけでもそれなりに楽しめた。
「プリンだけじゃなくて、りんごゼリーも買ってきてくれたんだよね」
「ああ」
「じゃあ、ゼリーは夕食のデザートに食べようかな。そのときはユウちゃんに食べさせてもらおうかな」
「ああ、いいぞ」
「ありがとう!」
芹花姉さんはとっても嬉しそうにお礼を言った。
芹花姉さんは病人だし、りんごゼリーだけじゃなくて、夕食も俺が食べさせてあげるか。5月に俺が風邪を引いたとき、姉さんが夕食とデザートを食べさせてくれたし。
「芹花姉さん。他に俺達にしてほしいことはあるか?」
「そうだね……汗を拭いてもらって着替えさせてもらったからスッキリしたし、プリンを食べさせてもらったからお腹が結構いっぱいだし。じゃあ……膝枕してもらおうかな。ユウちゃんに」
「今朝、俺に膝枕してほしいって言っていたもんな。分かったよ、芹花姉さん」
「ありがとう、ユウちゃん!」
えへへっ、と芹花姉さんは嬉しそうに笑う。膝枕をしてほしい気持ちが相当強いのだと窺える。
俺はベッドの端の方に座る。これまで芹花姉さんがいた場所なのもあり、お尻からは姉さんの温もりが強く感じられる。
「どうぞ、姉さん」
俺は右手で太もものあたりをポンポンと叩く。
「失礼しますっ」
弾んだ声でそう言い、芹花姉さんは仰向けの状態になり、俺の太ももの上にそっと頭を乗せた。そのことで、太ももに重みと温もりが感じられて。それが心地いい。
「どうだ?」
「凄く気持ちいいよ! それに、ユウちゃんのいい匂いがして。後頭部からユウちゃんの温もりを感じられて。凄く幸せな気分だよ……」
芹花姉さんは恍惚とした笑顔でそんな感想を言う。頬が上気して、姉さんの頭から伝わってくる熱が強くなった気がするけど……大丈夫だろう。
「それは良かった」
右手で芹花姉さんの頭を優しく撫でる。
気持ちいいのか、俺の顔を見ながら「えへへっ」と笑ってくれて。それは昔から変わらなくて。弟から見てもとっても可愛い女性だ。
「芹花さん、とても幸せそうですね」
「幸せだよ、胡桃ちゃん! ユウちゃんは最高だよ!」
「ふふっ、芹花さんらしい」
「ブラコンな芹花さんらしいですね」
「2人に同感なのです。心温まる光景なのです」
「そうだね、姫奈ちゃん。お姉様が気持ちいいって言うの分かります。前に悠真君に膝枕してもらったとき、とても気持ち良かったですから」
「いいよね、結衣ちゃん」
芹花姉さんがブラコンなのを知っているから、結衣達は姉さんと俺のことを優しい笑顔で見ている。
あと、俺絡みのことだけど、結衣と芹花姉さんの気が合うと嬉しいものだ。
芹花姉さんは俺の方に体を向けて、俺のお腹に顔を埋める。
「あぁ……ユウちゃんのいい匂い。顔全体でユウちゃんの温もりを感じられて幸せだよ」
んっ……と甘い声を漏らしながら、芹花姉さんは頭をスリスリさせる。今日は一段と甘えてくるなぁ。風邪を引いたし、俺もさっきまで学校に行っていて寂しい想いをしたからだろう。
少しして顔を離すと、芹花姉さんは多幸感に満ちた表情になっていた。ブラコンらしさ全開な一連の流れだったな。
「ユウちゃんを感じられて幸せ。それに、結衣ちゃん達がお見舞いに来てくれたことも。みんなが来てくれて、看病してくれたおかげでより元気になったよ! 結衣ちゃん、胡桃ちゃん、姫奈ちゃん、千佳ちゃん、ありがとう!」
芹花姉さんらしい明るい笑顔で、姉さんは俺達に向かってお礼を言ってくれた。この笑顔を見せられるのだから、姉さんはすぐに元気になれるだろう。
「俺からもお礼を言わせてください。姉さんのために来てくれて、着替えさせたり、プリンを食べさせたりしてくれてありがとうございます」
「いえいえ! 大好きなお姉様のためですから!」
「結衣ちゃんと一緒に着替えさせたり、みんなでプリンを食べさせたりして楽しかったですし。芹花さんが元気そうで良かったです」
「あたしも楽しかったのです。元気そうな芹花さんを見られて安心したのです」
「大事な後輩のお姉さんですからね。芹花さんが元気そうで安心しました」
結衣達は明るくて優しい笑顔でそう言ってくれる。弟としてとても嬉しいし、温かい気持ちになる。俺の恋人や友人、先輩はみんないい人達だ。
芹花姉さんはニッコリと笑って、
「みんな本当にありがとう。ユウちゃんもね」
お礼を言うと、芹花姉さんはゆっくりと上体を起こして、結衣達と俺の頭を撫でてくれた。姉さんの顔には可愛い笑みが浮かんでいて。結衣達がお見舞いに来てくれたからこそ。ここまでの笑顔になれるのだろう。
それから、結衣達が帰るまでの間、俺達は6人で高校のことを中心に談笑した。その間はずっと、芹花姉さんは俺の膝の上で笑っているのであった。
病院から処方された薬が効いたり、結衣達がお見舞いに来てくれたり、夜は俺が夕ご飯とりんごゼリーを食べさせたりしたからだろうか。翌朝になると芹花姉さんは体調が快復し、
「治ったよ、ユウちゃん!」
と、嬉しそうに俺を抱きしめてきた。芹花姉さんが元気になって、いつもの明るい笑顔を見せてくれるようになって良かったよ。
2学期編 おわり
これにて2学期編は終わりです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
感想やレビューなどお待ちしております。
もし面白かったと思いましたら、下にある☆の評価ボタンから評価してくださると嬉しいです。