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第11話『あなたと最後まで』

 サマーベッドでしばらく休んだ後は、再びウォータースライダーで2人用の浮き輪に乗って滑ったり、レンタルコーナーでビーチボールを借りて遊んだりするなど、結衣とのプールデートを楽しんでいく。時間を忘れてしまうほどに。


「あっ、もうこんな時間になっていたんだね」


 ビーチボールを返した直後、結衣がそんなことを言った。

 周りを見ると、レンタルコーナーの近くに時計が。時計の針は午後5時半過ぎを指していた。


「5時半過ぎか。あっという間に夕方になったな」

「そうだね。……どうする? もう帰る? 私はどっちでもかまわないけど」

「そうだな……帰りのことを考えたら、そろそろ帰った方がいいかな。結衣とはこのプールで楽しい時間をたっぷり過ごせたから満足してる。結衣はどう?」

「私もたくさん楽しめたし、結構満足できてるよ」


 結衣は可愛い笑顔でそう言ってくれる。ここに来てから、結衣は俺に数え切れないほどに笑顔を見せてくれたし、「楽しい」って言葉も何度も言っていたな。


「よし。今日はこれで帰ろうか」

「うんっ!」


 ニッコリと笑いながら、結衣はしっかりと首肯した。

 俺達は屋内プールを後にする。

 水着に着替えたときと同じく、更衣室の前で待ち合わせすることを約束して、俺は男性用の更衣室の中に入った。

 更衣室の中に入ると、小学生くらいのグループや小さな子連れの親子といった人達が水着から私服に着替えている。もっと遅い時間まで営業しているけど、小学生くらいまでの子供達はこの時間帯に帰る子が多いのかな。

 シャワールームで髪や体を軽く洗ってから、俺は水着から私服へと着替えた。その後、出入口近くにある洗面台に設置されているドライヤーで髪を乾かす。

 忘れ物がないことを確認し、俺は男性更衣室を出た。


「まだ……結衣はいないか」


 髪を乾かしたり、スキンケアをしたりと時間がかかっているのかもしれない。気長に結衣を待とう。

 スマホの電源を入れると……LIMEで結衣から写真が複数枚届いていると通知が。……ああ、プールに入る前に撮ったツーショット写真を送ってくれたのかな。

 通知をタップすると、結衣とのトーク画面が開き、プールに入る前のツーショット写真が何枚も送られてきていた。どの写真に写っている結衣も可愛いなぁ。ピースサインしている結衣は特に可愛い。そんな結衣に癒やされながら、結衣が送ってくれたツーショット写真全てをスマホのアルバムに保存した。


「お待たせ、悠真君」


 写真をアルバムに保存し、アルバムにある夏休み中の写真を眺めていると、私服に着替え終わった結衣が女性用の更衣室から出てきた。4時間ぶりの私服姿だけど、随分と久しぶりのような気がする。結衣は俺に向かって小さく手を振ってきた。


「どうしたの、悠真君。いい笑顔でスマホを見ているけど」

「プールに入る前に結衣が送ってくれたツーショット写真とか、スマホのアルバムに入っている夏休み中の写真を見て癒やされてた。結衣が可愛いから」

「そうだったんだ。嬉しいな。この服装の写真はまだ撮っていなかったから撮ろうよ」

「ああ」


 それから、俺のスマホで結衣とのツーショット写真を撮影する。その際、結衣からいつも付けている香水の柑橘系と石鹸の爽やかな匂いが香ってきて。

 撮影した写真を見ると、今のラフな服装の結衣も魅力的だと改めて思う。LIMEで結衣に今の写真を送信した。


「……写真来たよ。ありがとう。じゃあ、帰ろうか」

「ああ」


 俺達はスイムブルー八神を後にする。

 午後6時近くになっているのもあり、夕暮れ空が広がっている。日もかなり傾いているのもあり、お昼過ぎに来たときよりも暑さが和らいでいる。

 来たときの道を戻るだけなんだけど、結衣は「駅までの道は任せて!」と張り切って言ってくれた。なので、結衣のご厚意に甘えることにした。


「まだ6時になっていないのに、陽がかなり傾いているんだね」

「それだけ季節が進んでいるんだな。夏休みが始まった頃や旅行に行った頃はまだまだ明るかったし」

「そうだね。日が短くなるとちょっと寂しい気分になるけど、暑さがマシになるのはいいかなって思う」

「そうだな。これからは夜だけじゃなくて、昼間も過ごしやすい気候になっていくんだろうな」

「暑さ寒さも彼岸までって言うしね。そう考えると、暑さがキツいのもあと3週間くらいか」

「言葉通りになると嬉しいな」

「そうだね」


 夏という季節も夏休みももうすぐ終わると思うと寂しい。ただ、その先には過ごしやすい季節である秋が待っていると思えば、少しは寂しさが紛れた気がした。

 プールのことなどで雑談していると、あっという間に八神駅に到着した。その頃には6時を過ぎており、仕事や学校帰りの人の姿が見受けられる。帰宅ラッシュの時間にぶつかったか。

 ただ、結衣曰く、この八神駅は大きな駅であり、この駅が始発の電車もあるとのこと。これまで友達と遊びに来た際、座って帰るために始発列車に乗るのが恒例だったらしい。発車までには少し時間がかかるが、始発電車に乗ることにした。

 始発電車が停車しているホームに行き、俺達は進行方向の先頭車両まで向かう。

 中に入ると、座っている人はいるものの、空席の方が多いくらいの空きぶりだ。それもあって、俺達は無事に隣同士の席に座ることができた。


「座れたな」

「座れたね! この電車よりも先に発車する電車は2本もあるし、ここは先頭車両だから確実に座れると思ったよ」

「その通りになったな。さすがは結衣だ」


 結衣の頭を優しく撫でると、結衣は嬉しそうな笑顔を浮かべて、俺の肩に頭を乗せてくる。今日はたくさん肌と肌で直接触れてきたけど、服越しに感じる結衣の温もりもいいな。優しくじんわり伝わってくるから。

 10分ほど待ってから、俺達の乗る電車は八神駅を出発する。


「今日のプールデート楽しかった! あの青いビキニをまた着られたし。悠真君の水着姿をまた見られたから」

「俺も結衣の水着姿をまた見られて嬉しかったよ。今日は楽しかったな。ウォータースライダーをたくさん滑って、流れるプールでゆらゆら流れて」

「クロールで競争したり、ビーチボールで遊んだり。あとは……悠真君がナンパから助けてくれて。嬉しかったなぁ」


 俺の目を見ながらそう言うとニッコリ笑って、結衣はそっと俺の腕を絡ませてきた。ただ遊んだだけじゃなく、結衣をナンパから助けたのもあり、今日のプールデートはずっと忘れないものになりそうだ。

 プールデートのことを話しながら、電車での時間を過ごす。

 八神駅を出発してから10分近く。都内を流れる一級河川の多摩川を渡った頃、


「ねえ、悠真君。今週の土曜日の予定ってどうかな?」


 結衣は俺にそんなことを訊いてきた。


「土曜日は朝から夕方までバイトがあるよ」

「そっか。ちなみに、夕方って……何時まで?」

「……ちょっと待ってくれ。スマホを見てみる」


 パーカーのポケットに入っているスマホを取り出し、カレンダーアプリに書き込んである予定を見る。


「えっと、土曜日は……午後5時までバイトだ」


 俺がそう言うと、結衣は微笑みながら胸撫で下ろす。土曜日に何かあるのかな?


「それなら大丈夫そう。実は土曜日の夜に、多摩川沿いで花火大会があるの。毎年、8月の最終土曜日に開催されていて。悠真君さえ良ければ、一緒に……花火大会に行きませんか?」

「花火大会か。夏らしいし、夏休みの締めくくりにもいいな。バイト後だけど、涼しい店内で接客する仕事だから体力的にも大丈夫だと思う」

「そう言ってくれて嬉しいな。じゃあ、土曜日は花火大会をデートしようか」

「ああ、そうしよう」

「あと……その後は私の家でお泊まりしませんか? その日が夏休み中にお泊まりできる最後の日だから」


 夏休みは今週の日曜日の9月1日まで。だから、夏休み中にお泊まりをするとなると土曜日が最後のチャンスになるのか。


「凄くいいな。お泊まりに賛成だ」

「そう言ってくれて嬉しい! じゃあ、花火大会の日に悠真君がお泊まりに来ていいかどうか家族に訊いてみるね」

「俺も泊まっていいかどうか訊いてみるよ」


 その後、俺はLIMEの家族のグループトークに、花火大会の日に結衣の家でお泊まりしていいかどうか訊くメッセージを送る。すると、すぐに両親から許可の旨の、姉さんからは楽しんでねという旨の返信をもらえた。

 結衣の方も、俺が花火大会の日にお泊まりに来ていいとご家族から返信をもらえたとのこと。よって、花火大会の日に結衣の家に泊まることが決定した。

 スマホのカレンダーアプリの8月31日と9月1日の欄に、『結衣と花火大会デート&結衣の家でお泊まり』と書き込む。夏休みの最後まで、結衣と一緒に過ごす予定があるのがとても嬉しい。

 それから、武蔵金井駅の改札口で別れるまで、今日のプールデートのことを中心に結衣とずっと話をするのであった。

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[良い点] お泊りのお誘いも 過度に照れることなくアッサリと …もう籍入れれば?(笑) [一言] 更新ありがとうございます 多摩川の花火大会も コロナ以降開催されていないですから 物語で楽しめたら…
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