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第5話『模擬キャンパスライフ』

 東都科学大学のキャンパスに入ると、『STAFF』と書かれた水色の半袖のTシャツを来た人が何人もいる。おそらく、彼らはオープンキャンパスのスタッフの在学生なのだろう。

 建物には『受付』と書かれた紙が貼られているので、俺達はその案内に従って1号館という建物の中に入る。その際、入口の扉が自動ドアであることにちょっと感動した。

 入口近くに受付があったので、俺達は受付を済ませる。その際、スタッフの女子学生からオープンキャンバスのリーフレットをもらった。

 リーフレットを見ると、模擬授業や学部説明会などの予定表やキャンパスの簡単な案内図が記載されている。


「えっと、模擬授業は……情報科学科は10時半から11時。生命科学科は11時半から12時だってさ」

「じゃあ、情報科学科、生命科学科の順番だね。情報科学科の場所は……1101教室だって」

「1101教室か。案内図を見ると……1号館の1階。このフロアにあるのか」

「みたいだね。さっそく行こうか」

「ああ」


 俺は結衣と手を繋いで、情報科学科の模擬授業の会場である1101号室に向かって歩き出す。いくつかの場所に『情報科学科 模擬授業会場はこちら』と書かれた紙が貼られているので、これに従えば会場に辿り着けるだろう。


「外観もそうだけど、建物の中も高校までとは雰囲気が違うね」

「そうだな。入口も自動ドアだったし」

「確かに、金井高校には自動ドアないもんね」


 ふふっ、と楽しそうに笑う結衣。

 廊下を歩いていると、教室の中がチラリと見える。高校までのように生徒の居場所というよりは、授業を受けるための場所って感じがする。

 結衣が笑顔で歩いているからか、男性中心にこちらを見てくる生徒が多い。まあ、手を繋いでいる男の俺が一緒なのもあってか、近づいてくる人はいないけど。


「今は私服姿だし、こうして歩いていると一緒に大学に通っているみたいだね」

「そうだな。……最初の講義は1101教室か。いい席はまだ空いているかなぁ……みたいな」

「それ大学生っぽい!」


 結衣と楽しく笑い合う。

 一緒の大学に合格できたら、こういう大学生活が待っているんだな。そう考えると、段々と気持ちが高揚してくる。


「情報科学科の模擬授業はこちらの教室でやりまーす! 教室に入ったら、入口近くにあるホッチキスで留めた資料を一部ずつ取ってくださーい!」


 近くにいる男子学生のスタッフが、少し大きめの声でそう呼びかけていた。その学生の側には扉が開放されていた。その近くには『1101教室』と書かれたプレートが設置されていた。

 俺と結衣は1101号室の中に入る。


「うわあっ、凄いね! 階段教室だ」

「そうだな。まさに大学って感じだ」


 1101教室はとても広い階段教室。席数は……300くらいありそうか。高校までにはこういう場所はないから、ちょっとテンションが上がる。

 模擬授業まであと10分ちょっとだからか、真ん中よりも後ろの席が埋まっている。IT系の学科なので男性ばかりかと思っていたけど、女性もそれなりにいるんだな。パッと見3割くらいいるだろうか。

 入口近くの長テーブルに置いている資料を一部取り、比較的空いている前方の席に結衣と隣同士に座る。スクリーンも正面にあって見やすい場所だ。


「こうして座ると、より大学生って感じだね」

「ああ」


 結衣と一緒に受ける模擬授業。楽しみだ。

 それから程なくして、ノートパソコンを持った背の高いスーツ姿の男性が教室の中に入ってくる。俺達のような参加者やスタッフの学生とは雰囲気の違う明らかな大人。教壇にノートパソコンを置いているし、あの人が模擬授業をしてくれる先生だと思われる。

 入口でもらった資料をさらっと見ると……AI・人工知能について書かれているな。AIが模擬授業のテーマだろうか。


「10時半になりましたね。では、情報科学科の模擬授業を始めましょう」


 スーツ姿の男性がマイクを持ちながらそう言った。この男性は情報科学科の教授とのこと。

 そして、情報科学科の模擬授業が始まる。

 予想通り、模擬授業のテーマはAIについて。俺も使ったことのあるスマホのアプリやWebサービスを絡めて話してくれるので結構面白い。

 また、配付された資料は、スクリーンに表示されているスライドを印刷したもの。俺は担当する教授の言葉をメモしていく。

 たまに、結衣の方をチラッと見ると、結衣は真剣な表情でスクリーンの方を見ている。配付資料にメモするときもあって。その姿はとても美しくて見惚れてしまう。何度か目が合うこともあり、そのときは結衣はニコッと微笑んで。その姿がとても可愛くて。もし、同じ大学に通ったら、これが日常になるのかな。


「以上で模擬授業を終わります。私が今回話したAIはもちろんのこと、情報関連の分野を勉強したい、興味がある方は是非、情報科学科を受験してください。会えるのを楽しみにしています。ありがとうございました」


 AIの話はとても面白くて、30分の模擬授業はあっという間に終わった。


「面白かったね、悠真君」

「面白かったな。俺のスマホに入っているアプリの話もあったし」

「身近なものに使われているって分かると興味が出てくるよね」

「そうだな。……次は生命科学科の模擬授業か」

「生命科学科の模擬授業の会場は……2号館の2203号室だって」

「そっか。あと25分くらいあるけど、初めて来た場所だしさっそく移動するか」

「うんっ!」


 資料と筆記用具をバッグに入れて、俺と結衣は1101号室を後にする。はぐれてしまわないためにも手を繋いで。


「こうして教室を移動するのも大学生っぽいかも」

「そうだな。高校までは同じ教室で受ける授業が大半だもんな。こうしてキャンパスの中を歩くのも楽しいな」

「うんっ!」


 しっかりと返事をすると、結衣は俺の手を離して腕を絡ませてくる。階段教室で模擬授業を受けて、教室移動して、結衣はもう大学生気分になっているのかもしれない。

 1号館と2号館の中を色々と見ながら、俺達は生命科学科の模擬授業の会場である教室に向かった。


「こちらの教室で、11時半から生命科学科の模擬授業をやります! 興味のある方はどうぞ!」


 2203教室の前では、スタッフTシャツを着た女子学生がそうアナウンスしていた。

 教室の中に入ると……さっきの階段教室とは違い普通の教室だ。ただ、縦長に広くて結構な人数が授業を受けられそうだ。

 この教室でも真ん中から後ろにかけて座る人が多い。あと、情報科学科とは違って、こっちの方が女性の人数が多い。半分以上は女性だと思われる。芹花姉さんと月読さんも在学生だし、女性に人気のある学科なのだろうか。

 入口近くの長テーブルに置かれた資料を一部取り、前方の座席に座った。


「ここの教室は階段じゃないんだね」

「そうだな。でも、高校の教室に比べたら凄く広い」

「そうだね。座席もいっぱいあるし。あと、生命科学科の模擬授業の場所だし、この教室でお姉様や彩乃さんは講義を受けているのかな」

「その可能性はありそうだな」


 後で芹花姉さんと月読さんに訊いてみようかな。

 資料を読んで開始時間を待っていると、ロングスカートにノースリーブの縦ニット姿の女性が入ってきた。若そうな人だけど、あの人が模擬授業を担当する教授なのだろうか。ノートパソコンを持って教壇のところにいるので、その可能性が高そう。

 それから程なくして、模擬授業の開始時刻の午前11時半となる。


「みなさんこんにちは。生命科学科の模擬授業に参加していただきありがとうございます。私、生命科学科の准教授の渡辺といいます。よろしくお願いします」


 ノースリーブの女性がマイクを持ってそう自己紹介した。准教授なんだ。

 生命科学科の模擬授業は食生活と体内の細胞との関わりについて。食事は毎日欠かせないことなので、この模擬授業にも引き込まれる。

 結衣も同じようで、集中してスクリーンの方を見たり、配付資料にメモ書きをしたりしていた。結衣は実際に大学生になっても、どの講義もちゃんと取り組んでいい成績を取りそうだ。


「生命科学科の模擬授業も面白かったね」

「面白い内容だったな。あっという間に終わった」

「そうだね。身近なことを題材にしているからか、凄く聞き入ったよ」

「引き込まれたよな」


 俺がそう言うと、結衣は笑顔で「うんっ」と頷いた。


「生命科学科の模擬授業も終わったし、芹花姉さんにメッセージを送るか」

「そうだね」


 模擬授業の会場だった2203号室を出て、俺は芹花姉さんに2つの模擬授業を受け終わったとメッセージを送る。サークルの会合はもう終わっているだろうか。

 ――プルルッ。

 メッセージを送ってから20秒くらいでスマホが鳴る。芹花姉さんがさっそく返信してくれたかな。そう思いながらスリープを解除すると、姉さんから新しいメッセージを受け取ったと通知が。タップしてトーク画面を開くと、


『お疲れ様! サークルの用事は済んだから、彩乃ちゃんと一緒に行くね。今、どこにいる?』


 というメッセージが表示された。サークルの方は終わっていたか。

 2号館の2203号室を出たところにいる、と芹花姉さんにメッセージを送ると、


『あそこか。春学期でいくつかの講義で使った教室だから分かるよ。そっちに行くから待っててね』


 と、すぐに返信が届いた。結衣との予想通り、この教室は生命科学科の講義で使う教室だったか。

 芹花姉さんに了解の旨の返信を送り、結衣には今からここに姉さんと月読さんがやってくることを伝えた。

 それからは、近くにあるお手洗いに行ったり、2つの模擬授業で配布された資料を見たりしながら、芹花姉さんと月読さんが来るのを待つのであった。

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