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プロローグ『お泊まり女子会-①-』

夏休み編5




「結衣ちゃんのお家のお風呂は初めてだから楽しみだな」

「ふふっ。私も、うちのお風呂で胡桃ちゃんと一緒に入るのは初めてだから楽しみだよ」


 8月23日、金曜日。

 夏休みも終盤となった今日この頃。

 今夜は私・高嶺結衣(たかねゆい)の家で伊集院姫奈(いじゅういんひな)ちゃん、華頂胡桃(かちょうくるみ)ちゃん、中野千佳(なかのちか)先輩、妹の柚月(ゆづき)、私の5人でお泊まり女子会です。

 きっかけを作ってくれたのは胡桃ちゃんだ。一昨日、胡桃ちゃんから、


『結衣ちゃん。夏休みも残り少ないし、もう一度お泊まりしたいって思っているの。旅行では結衣ちゃんとは別々の部屋だったから、一緒の部屋で寝てみたい気持ちもあって』


 というメッセージが来たことから始まった。

 私は胡桃ちゃんに賛成の返信をして、『私の家でお泊まり女子会しようか』と提案してみた。そのことに胡桃ちゃんが快諾してくれたので、お泊まり女子会をすることが決定した。夏休みも残り少ないから早くやりたいけど、昨日だと急すぎるので今日開催の運びとなった。

 胡桃ちゃんと私で、私の恋人であるの男子・低田悠真(ひくたゆうま)君以外の旅行メンバーを誘ってみる。すると、姫奈ちゃんと千佳先輩、妹の柚月がお泊まり女子会に参加すると言ってくれた。

 担任の福王寺杏樹(ふくおうじあんじゅ)先生は仕事があり、その後に大学時代の友人と会うため、芹花(せりか)お姉様は夜までファミレスのバイトがあるため、それぞれ参加は見送り。なので、5人での開催となった。

 また、悠真君にお泊まり女子会をすると電話したら、


『そうなのか。楽しい時間になるといいな』


 と、明るい声で言ってくれた。優しい! 大好き! 

 そして、お泊まり女子会当日である今日。

 夕食時にお泊まり女子会の参加者全員が私の家に集まり、予定がフリーな胡桃ちゃんと姫奈ちゃんと私で作ったビーフカレーを、両親と一緒に7人で食べた。美味しく作れたし、みんなが美味しそうに食べてくれて嬉しかったな。

 夕食後に入浴の話になり、胡桃ちゃんと私。姫奈ちゃんと千佳先輩と柚月の2組に分かれて入浴すること。胡桃ちゃんと私が先に入ることに決まった。胡桃ちゃんと一緒に1階の洗面所に来て今に至るのだ。


「友達が泊まりに来たときは一緒にお風呂に入ることって多いの?」

「うん。泊まりに来た子が恥ずかしがらない限りは一緒に入るよ。お泊まりは特別なイベントだし、友達とお風呂に入る機会はそうそうないからね。一緒にお風呂に入ったら、より思い出になるだろうし」

「ふふっ、確かにそうだね」


 持ち前の可愛い笑顔になってそう言う胡桃ちゃん。

 今日みたいに、何度も泊まったことがある友達と、初めて泊まりに来た友達が一度に泊まりに来たときは、初めて泊まりに来た友達と一緒に入ることが多い。胡桃ちゃんとは今月上旬に行った旅行の間に、旅館の大浴場で一緒に入った経験はある。だけど、うちのお風呂で一緒に入るのは初めて。だからとても楽しみ!

 胡桃ちゃんの横で。私は服を脱ぎ始める。

 たまに胡桃ちゃんのことをチラッと見るけど……うわあっ、胸おっきい。柔らかそう。ノースリーブの縦ニットの上からでも凄い存在感を放っていたけど、下着姿になるとより存在感がある。脱がなくても凄い。脱いだらもっと凄い。確か、1学期の期末試験の終わりに下着を買いに行ったときは……Gカップだったっけ。あれから1ヶ月半くらい経っているし、今はHカップになっていそう。あのくらい大きかったら、悠真君のことをもっと幸せにできそうだと思ってしまう。悠真君胸大好きだし。


「ふふっ、結衣ちゃんったら。私の胸を凝視しちゃって」


 下着も脱ぎ始めた直後、胡桃ちゃんは微笑みながらそう言ってきた。


「ご、ごめんね。胡桃ちゃんの胸は大きくて魅力的だからつい見ちゃって」

「ふふっ、そうなんだ。胸に視線を向けられるのは慣れているし、結衣ちゃんとか友達なら全然かまわないけどね」

「それは有り難いお言葉。胡桃ちゃんの大きな胸が羨ましいよ」

「そっか。結衣ちゃんに言われると嬉しいな。ありがとう」


 胡桃ちゃんはニッコリとした笑顔でそう言う。凄く可愛いなぁ。あと、裸になっているから、胡桃ちゃんから甘くていい匂いがしてきて。THE可愛い女の子って感じ。そんなことを思いながら、私も全ての衣服を脱いだ。


「旅行中にも思ったけど綺麗な体だね。あたしは結衣ちゃんのスタイルの良さが羨ましいよ。背が高くて、くびれもあって、肌も綺麗で」

「胡桃ちゃんに言われると嬉しいよ。ありがとう」


 日頃の習慣になっているストレッチやスキンケアのおかげかな。あとは……悠真君と付き合い始めて、一緒にいるようになって、何度も体を重ねているのも一因なのかな。悠真君と恋人同士になってから肌の調子がより良くなった気がするし。


「胡桃ちゃんも太っているようには見えないし、肌は白くて綺麗だよ」

「そうかな? 結衣ちゃんに言われるとそんな気がしてきた」

「素敵だよ」


 同級生だけど大人の色気を感じるよ。3日前に16歳の誕生日を迎えて、胡桃ちゃんが1個年上になったからなのもありそう。


「さっ、お風呂に入ろうか」

「うんっ」


 私は胡桃ちゃんと一緒に浴室の中に入る。

 浴室に入った瞬間、胡桃ちゃんは「うわあっ……」と可愛い声を漏らす。ただ、ここは浴室なので、そんな声も結構響く。そんな胡桃ちゃんの目は普段よりも輝いていた。


「あたしの家のお風呂よりも広いね。浴槽も素敵。結衣ちゃんとあたしなら結構ゆったり入れそうだよ」

「うん、入れるよ」


 私よりも大きな体の悠真君と一緒に入ったときでさえ、ゆったりさを感じられたから。

 毎日入っているお風呂について友達に褒められると嬉しいな。


「ねえ、胡桃ちゃん。せっかく泊まりに来てくれたんだし、髪を洗ってあげるよ」

「いいの?」

「うん。お泊まりのお風呂だと髪を洗ったり、あとは背中を流したりし合うことが多いよ。あとは、胡桃ちゃんみたいな赤紫色の髪を洗ったことがないから洗ってみたい気持ちもあります」

「ふふっ、そっか。じゃあ、あたしとも髪と背中を洗い合おうか」

「そうだね! まずは胡桃ちゃんの髪と背中を洗ってあげるよ」

「うん、お願いします」

「じゃあ、そこのバスチェアに座って」

「はーい」


 胡桃ちゃんは私の指示通り、カウンターの前に置いてあるバスチェアに座る。

 洗う前だけど、ショートボブの赤紫色の胡桃ちゃんの髪は綺麗だな。これからこの髪を洗えると思うとちょっとワクワクする。

 あと、髪の長さがショートボブだから、白い背中の大部分が直接見えている。とても綺麗だ。あと、巨乳だから、腕と背中の隙間から胸がちょっと見えている。こういう胸の部分って裏乳って言うのかな? 凄い。ちょっと触りたい。


「結衣ちゃん。髪はあたしが持ってきたこのリンスインシャンプーで洗ってくれるかな」

「うん、分かった。じゃあ、まずはシャワーで髪を濡らすね」

「うん、お願いします」


 胡桃ちゃんは私のことを見ながらそう言った。

 私はシャワーのお湯で胡桃ちゃんの髪を濡らしていく。これから髪を洗うのに、胡桃ちゃんの髪の触り心地がいいな。

 髪を濡らしたので、胡桃ちゃんが持参した桃色のボトルに入っているシャンプーを使って髪を洗い始める。


「あぁ、いい匂い。胡桃ちゃんの髪から香ってくる匂いだ」

「ふふっ。このシャンプーは気に入っているから、お泊まりに行くときもお出かけ用のミニボトルを持っていくの」

「そうなんだ。その気持ち分かるよ。私もお泊まりに行くときは、そこのオレンジ色のボトルのシャンプーのお出かけ用を持っていくから」

「そうなんだね」


 ふふっ、と私は胡桃ちゃんと楽しく笑い合う。

 胡桃ちゃんが持参したシャンプーの匂いが浴室に広がっていく。ここはうちの浴室なのに、普段は感じない匂いを感じるから不思議だ。


「胡桃ちゃん。この洗い方で大丈夫? 痛くない?」

「ううん、大丈夫だよ。むしろ気持ちいいくらい。上手だね。柚月ちゃんの髪を洗ってあげていたの?」

「うん。小さい頃はよく一緒にお風呂に入っていたからね。今でも、たまに一緒に入ると洗いっこするの」

「そうなんだね。うちのお姉ちゃんと同じだ」


 胡桃ちゃんは温和な笑顔でそう言う。

 胡桃ちゃんには大学2年生の(あんず)さんっていうお姉さんがいるからね。小さい頃はよく一緒に入って、大きくなってもたまに入る姉妹が多いのかな。


「ゆう君と泊まるときにも洗いっこするの?」

「うん、するよ」

「ふふっ、そっか。ゆう君はこれを体験済みなんだ」


 胡桃ちゃんの笑顔が楽しそうなものになる。好きな人が絡んでいるからかな。


「胡桃ちゃんの髪を洗えて嬉しいよ。赤紫色の髪を洗うのは初めてだから」

「赤紫色の髪は珍しいもんね。あたしも親戚以外だと全然見かけたことないから」

「ふふっ」


 そういえば、初めてこの色の髪を洗うこととか、さっきの柚月のこと……悠真君の家に初めて泊まりに行って、悠真君と初めて一緒にお風呂に入ったときにも話したな。何だか懐かしい気分になる。


「さあ、胡桃ちゃん。シャンプーの泡を洗い流すから目を閉じて」

「はーい」


 胡桃ちゃんが目を閉じたことを鏡越しで確認して、私はシャワーのお湯で胡桃ちゃんの髪についたシャンプーの泡を洗い流していく。

 泡を流しきった後、濡れた髪をタオルで拭き取っていく。そのことで、洗う前よりも髪が艶やかになった。


「これでOKだね」

「ありがとう。じゃあ、次は背中を流してもらおうかな」

「うん。ボディーソープも持ってきてる? それとも、うちのを使う? そのラックにある白いボトルがボディーソープだけど」


 私はそう言って、バスラックに指さす。

 胡桃ちゃんは私が指さす方にあるバスラックを見ると、「あっ」と可愛い声を漏らす。


「うちもこのボディーソープシリーズだよ。うちのは肌がサラサラになるやつ」

「そうなんだ! うちのはピーチの香りだけど、これにする?」

「うんっ。うちでもピーチの香りを使うときがあるよ。いい匂いだよね」

「いいよね! 柚月もお母さんも好きだから、ピーチの香りを使うことが多いよ」

「そうなんだ。じゃあ、ピーチの香りのボディーソープで。ボディータオルはあたしが持ってきたものを使うね」

「分かった」


 その後、胡桃ちゃんはボディータオルを濡らして、バスラックにあるボディーソープを一押し。クシュクシュと泡立てていくと、なじみ深くて大好きなピーチの甘い香りが浴室に広がっていく。


「はいっ、結衣ちゃん。背中を流すのをお願いします」

「うん、分かった」


 私は胡桃ちゃんから受け取ったボディータオル受け取り、背中を洗い始める。胡桃ちゃんの背中を洗うのは初めてだし、胡桃ちゃんのボディータオルを使うのも初めてだから、とりあえずは優しく洗おう。

 あと、このボディータオル……私が使っているものよりも柔らかい。こういう肌に優しそうなもので洗っているのも、肌が綺麗な理由の一つなのかもしれない。


「胡桃ちゃん、気持ちいい? それとも痛かったりする?」

「気持ちいいよ。ただ、もうちょっと強くして大丈夫だよ」

「分かった。……こう?」

「うんうん、もっと気持ち良くなったよ! さすがは結衣ちゃんだね。この強さで洗ってくれるかな?」

「うん、分かった!」


 鏡越しで胡桃ちゃんの顔を見てみると……まったりとした表情になってる。本当に気持ち良く感じてくれているんだ。凄く褒めてくれるし、嬉しい気持ちになるなぁ。


「あぁ、気持ちいい。背中も柚月ちゃんと洗いっこするの?」

「うん」

「そうなんだ。だから上手なんだね。まるでお姉ちゃんに洗ってもらっているみたいだよ。結衣ちゃんも柚月ちゃんのお姉ちゃんだからかな」


 ふふっ、と胡桃ちゃんは楽しそうな声で笑う。杏さんは背中を流すのが上手そうなイメージがあるから、杏さんのようだと言ってくれてより嬉しい気持ちになる。

 胡桃ちゃんの方が4ヶ月ちょっと誕生日が早くてお姉さんだけど、胡桃ちゃんのお姉さんになったつもりで背中と腰を流していった。

 一通り流し終わり、胡桃ちゃんにボディータオルを渡す。まだ、自分の体を洗っていないので、湯船には入らず、胡桃ちゃんから少し離れたところで立って待つことに。

 体を洗っている胡桃ちゃんの後ろ姿や、鏡に映る胡桃ちゃんの微笑みが私には艶っぽく見えた。

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