序章
はじまりはいつも突然。
なんて、どこかで聞いた言葉を思い出す。
全く持ってその通りだ。
少しくらい心の準備ってやつをさせて欲しい。
そんな事を考えながら、俺は目の前の地獄に飛び込んだ。
ーー時間は少し遡る。
世間的には夏休み真っ盛りの8月初旬。
俺こと如月 英雄25歳は
コンビニで買ったアイスキャンデーを咥え、
一人公園のベンチに座っていた。
「暑っついのに...子供ってのは元気だねぇ。」
別に何か用事があった訳でもない。
子供が好きで、遊んでいる姿を眺めるのが好きだった。
だから休みの日はよくこーやってベンチに座りぼーっと…
ドゴォォォン
突然の爆発音。空気がビリビリと震え腹の底が揺れる。
真昼間の住宅街に悲鳴が響きはじめる。
「な…なんだ?」
振り返ると黒煙がもくもくと立ち上っていた。
尋常ではない気配に思わず立ちすくむ。
ぼーっと黒煙を眺めていると不意におっさんから声を掛けられた
「おいあんた暇か!?頼む手を貸してくれ!」
なんでも民家が爆発して飛び火で周りの家が燃え始めたらしい。
なんだそりゃ?とは思ったが燃えてるのは事実のようだ。
俺は二つ返事でおっさんと共に駆け出した。
現場は木造ばかりの古いアパートが密集した一角。
恐ろしいほど火の手が早いらしい。
さっきとは違うおっさんが駆け寄ってきた。
「助かる!こっちに来てくれ!」
俺は促されるままバケツリレーに加わろうとバケツを受け取った。
と同時に後ろで悲鳴が聞こえた。
「中に!中にうちの子が!いやぁーー!」
泣け叫び周りの人が抑え付けるのも構わず這って進もうとする母親。
母親が腕を伸ばすその先は完全に火の手が回っていた。
それでも子の名を叫び進もうとする。
俺はバケツの水を自身に掛けていた。
「馬鹿野郎が!」
察したおっさんの声が聞こえた。
あぁ全くだよな、俺もそう思う。
ぶっちゃけ自己満足かもしれない。
ドラマの見過ぎかもしれない。それでも、もしかしたら。
俺は目の前の地獄に飛び込んだ。
読んでいただきありかとうございました!
次章から本格的にスタートしますのでお楽しみに!




