1話 誘いのリバイバル
この小説は長編です。男主人公の視点の物語でもあります。
面白くなかったらブラウザバック推奨。大切な時間を別の方へ活用してください。
「……またか」
馬鹿みたいに信号が青色に発光しないで有名なスクランブル交差点に捕まってしまったことに、高校生の少年、千住傑はため息を吐きながら幻滅した。
それは下校の時間で頻繁に繰り返される日常。
避けられない事情には自宅へ帰宅する時間を短縮できるからだった。迂回すると余計に手間と苦労が掛かるため、傑は前者の方を選んでみせた。
しかしその結果捕まりました。ええ、捕まりましたとも。
もうウンザリだ。にっこり微笑んでも正気が失せて見えてるに違いない。
(ああ、それにしても空が近いなぁ……)
完璧に現実逃避をする傑。澄み渡る青色の空はとても近くて、雲一つ無かった。
迷いのない青天に燦々と照らす太陽の日差しはこの街を照らす。
それが眩しくて、遮るように手を掲げてみせる。
(こうして見てみると、学校はどうして眩しいのだろう)
常に教室は溢れんばかりに活気と笑顔が絶えないでいる。それは単に楽しいと感じたから笑っていられるのだろうか。それとも青春という言葉を使って謳歌の表現をしているだけなのか。
今いる信号待ちの人達も、目的のために進んでいるのにその表情は柔らかい。
どうして笑みを浮かべられるのか。
傑には分からない。
こんな退屈な時間が進んでいるっていうのに、その余裕の表情にどんな意味を含まれているのだろう。空想ばかりでは前に進めないと分かっているのに。
大した事にはならないと判断するのに。
(……きっと、俺には関係のない事だな)
振るい捨てるように思考を変えてみる。正直どうでもいい話だ。
ここは素直に交差点で立ち止まる傑。黒バックを改めて握り直すがいつまで時間が経とうが気紛れ信号は青にならない。
やる気あるのか。
空いている片手でこめかみを抑える。そうしなければ募ったフラストレーションが止められなくなる。毎度の事なのに今日に限って無性に苛ついていたのを傑自身でも理解していた。
それにこの時間自体退屈だった。何かしないと勿体ないくらいだ。
(……退屈しのぎに、音楽でも聴くか)
何かをした方が人生まだマシなので、とにかく傑はポケットから携帯端末を取り出してみる。機種変更したばかりなので新品当然の携帯は傷一つ無い。
(ゲームは少しだけ我慢しよう。音楽しか取ってないし、これからだ)
本当は音楽よりゲームがしたかった。
だがマナーを重んじてやめた。定められたルールに従えない人こそ不利益に被るのが妥当だと思ってる。
そんな奴が作る世界なんて価値さえ存在しない。
因果応報。自業自得だ。
規則を無視する野暮な人にはなりたくないし、嘘を吐く大人はさらに嫌いだ。
手本となる人になるために傑は知識を身に付けている。世の中を少しだけでも綺麗にするためには勉強は欠かせない存在だ。しかしトップの地位を維持しても、その枠でしか決められていないので拘る必要が傑には無かった。
ただ、正直に生きる人達が勝つ世界でいて欲しいだけ。
「……弱き者に救いの手を。そして最後は正直者が勝つ」
困っている弱者を助けるのが傑の掲げる尊重のあるモットーを貫く。
弱肉強食の世界では弱者が圧倒的に多い。
薄汚い環境に勝つのはいつもズルい人間。
何も知らないまま過ごす自体、嫌に決まってる。いつまでも踊り狂わされる生活を虐げられるつもりはない。逆手を取ってズルい人間を糾弾してみせる。
それを証明させるために傑は正直に生きるだけ。
(ようやく青になったか。いつも遅過ぎるんだよ)
交通量の多い交差点なので走行する車は常に絶えないでいる。その中で信号はそれを唯一止められる方法だ。毎度立ち止まって考えるのだが歩道橋を作って欲しいと願っている。圧倒的に不便だから。
それでも束の間で終わらせる。
向こう側にあるアスファルトの歩道に辿り着けたら傑の勝ちだ。
いつも通りに交差点を渡る。信号が青になると独特のチャイムが鳴り始めては釣られるかのように人の流れは生まれる。傑はそれを無言で進もうとする。
しかし。
耳に差し込んだイヤホンから流れる音楽によって、傑の動きを止めさせた。
『君は、つまらない世界のためにリバイバルしてみない?』