観光をしよう
女王への謁見が終わり、俺は部屋のベッドに座り手元の本を見つめていた。中に何が書かれているのか見るのが怖いが意を決して表紙をめくった。
「私の名は土屋未来。地震があったと思ったら、この世界にいた。私は日本語しか出来ないためこの書を読んでいるものが日本人ないし日本語の能力を持っている事を切に願う。」
……地震。俺たちのときもそうだ。俺は読み進める。
「驚くべき事にこの世界には魔術が存在する。そして地球にはいなかった様々な種族や生物も……私はまず自分の置かれた状況に混乱した。おそらくこれを読んでいるあなたもそうだろう」
まぁ、普通は混乱するよな。
「運のよい事に私は角がある大きな種族に助けれらた、彼らの見た目はさながら鬼の様で最初は怖かったが何故か私は崇拝の対象の様に扱われた。これについては後述する」
鬼―恐らくはオーガのことだろうな、俺たちは襲われたぞ……
「そうして、私は彼らの元で暫く暮らすのだが、困った事に言葉が通じない。なので最初は言葉を覚える事に尽力した。何故だかわからないが、言葉はすぐに取得できた。人間本当に必要な時はすぐに覚えられるのかもしれない、しかしながらあなたがそうだとは限らないので、簡単な言葉と必要そうな事をこの本に記載しておく」
もしかしたら、身体能力の他に知力や学習能力も上がっているのかも知れないな。言語に関してはかなり助かりそうだ。
「さて、意思の疎通が取れる様になった私がしたことは情報収集だ。この世界は大まかに分けると大きな四つの大陸からなるらしい。そしてまれに私の様に地球から迷い込むものがいるようだ。そういった者達をこの世界の住人はスプラウールと呼び崇拝しているようだ。私が助けられたのもその為だ。話を聞くに日本人以外も過去に来ていると推察できる。そしてあなたも気付いている事だろうが例外なく身体能力や魔力が高い、更には魔術で再現できない技まで使うときた。実際に私も私しか使う事の出来ない術を使う事が出来る」
(四つの大陸……それに特別な術か、俺にもあるのか?)
「しかし、全員がそういった術を覚えているわけではないようだ。奇跡的に私は他の地球人と出会う事が出来たが、その人は通常の魔術しか使えず、自身のみの特別なものは無いとの事だった」
「そして、私はその人と旅に出る事にした。目的はもちろん地球へ帰る方法を探すため。しかし、それは道半ばで断念する事になる。すまない、理由は書きたくない……」
何があったんだ?まぁ、考えても仕方ないか。
「私は再度の幸運に恵まれ、美しい妖精たちの国に招かれる事になった。おそらく私はここで一生を終えるだろう。これを読んでいるあなたが地球に帰れる事を心より願う」
まだ続きがあるようだが、パタンと本を閉じた。問題は山積みだな、一旦整理しよう。
まずは言語。これを一番に解決しなければいけない。幸いこの日記に色々役に立つ事が書かれているのでそれを参考にしよう。
次に情報。オーガの目的と攫われたクラスメイト達。謎なのは、この日記では助けられたと書いてある。どういう事だ?あとは人間はこの世界にいるのか?聞いとけばよかった……
それに他の大陸と過去の転移者もだ。後は、西口達だ。彼らは逃げ切っただろうか?
「ふ~」
俺は一つ大きなため息をつきベッドに倒れこんだ。そのまま窓のほうに目をやる、外はすっかり暗くなっていた。土屋未来の日記か、未来日記って名前にしよう……とくだらない事を考えながら俺は眠りに落ちていった。
翌朝、朝の日差しが眩しくて目を開けた。窓辺により外を見る。
「いい朝だな」
そうつぶやいたと同時にコンコンとドアをノックする音が聞こえた。俺は慌てて日記をめくり単語が書かれているページを開き返事をする。
「どうぞ」
果たして俺の言葉は通じたらしく、手に朝食を持ったリーフと髭男爵が入ってきた。
「オハヨウ」
「おはようゴザイマス」
二人が日本語で挨拶してきたので俺は本を見ながら現地語で挨拶を返す。
「おはようございます」
二人とも目を丸くしたがニッコリと笑い嬉しそうだ。良かった通じて。俺はリーフから食事を受け取るとイスに腰を掛けた。
髭男爵が話し始める。
「キョウもジョウオウサマとのハナシアイがある。タベタラきのうのヘヤにいって」
俺は本を見ながら分かったと返事をすると二人とも部屋を出て行った。
さて、飯食うか今日も昨日と同じメニューだこのパンうまいんだよなぁ。
俺は食事を早々に済ませると着替えを済ませる。着用したのは半そで短パン、なんでも土屋未来はこの格好を好んだらしい。女王の間へと向かった。道中、妖精達が俺を見るとその場に跪くのが少し居心地が悪かった。
女王の間に着くと昨日と違い大きな扉は開いており俺はそのまま中に入る事が出来た。中には昨日と違って部屋の真ん中にテーブルと椅子が置いており女王が座っていた。
「おはようございます。永井様。ささ、そちらにお座りくださいな」
「おはようございます。女王様、失礼します」
「昨日は良く休めましたか?」
「いえ……考え込んでまして、気付いたら寝てました」
俺が苦笑いしながら言うと女王はクスクスと笑った。ホントに孫がいるのかよってくらい美人だなぁ。しみじみと思う俺。
「さて、では昨日のお話の続きをしましょう。あの日記は読まれましたか?」
「はい、全てでは無いですけど。そこでいくつか疑問点があるので質問があるんですけど」
「えぇ、そうでしょう。私に答えられる事なら何でも答えますのでご質問をどうぞ」
「では、まず鬼―オーガについての質問です。この本を書いた、土屋未来さんは助けられたと書いてますが、俺たちは襲われました……それは何故?」
「分かりません。少なくともこの大陸でスプラウール様い害なす国はありませんし、過去、彼らがそのような事をした事もないはずです。ただ、今から一月ほど前の話です。それまでは我々とオーガたちは友好的な関係にありました。突然の交易停止と宣戦布告、彼らは妖精族だけでなく、他の種族に対してもそういった事をしこの大陸の覇を唱えだしたのです。そしてこのシルリレジア大陸は今戦火にまみれようとしています。彼らが何故変わったのかは分かりませんが、その事が関係しているかもしれません」
「オーガについては分かりました。ではこの世界の大陸について教えてください」
「はい、ブズエーク、フオネ、ラージアス、そして今いるシルリレジア。大きく分けるとこの四つから世界は成っています」
「他の大陸にも俺たちのような転移者がいるんですか?」
「はい。過去にもいましたし、今もいらっしゃいます」
今もいる!是非会いたい。
「会う事は出来ますか!?」
女王は顔を曇らせるて答える。
「それは……難しいかもしれません。この大陸だけでなく他の大陸も内乱状態、更には大陸間戦争も勃発しそうな状況です」
最悪だ……戦争に巻き込まれたら、帰る帰らない以前の問題だ。それ以前に俺は既に巻きこまれているんじゃないのか?
「そうですか……あのもし大陸間で戦争になったらこの国は参加を?」
「今は我々も今後どうするかを話し合っているところですし、まずはオーガをどうにかしなければ」
「わかりました。最後に人間―俺のような種族はこの大陸にいますか?」
「えぇ、もちろんいますし我が国とは友好的なお付き合いをしています。お役に立てましたか?」」
「はい!そうだ、一つお願いがあります。言葉を覚えたいので誰か練習相手になって貰えませんか?」
「それはすばらしい!では手配しておきます。永井様、もしお体がもうよろしければ町のほうも行かれてみて下さい。その際は誰でもいいので言付けをお願いしますね」
(町!面白そうだ)
「分かりました」
そうして今日の謁見は終わりを告げた。俺は部屋に戻るとベッドに腰をかけた。
……戦争か。正直実感はわかないけど、あの傷鬼みたいなのとの殺し合いになるのか怖いな。ただ、何故だか分からないが少し楽しみな俺もいた。
暫く何もせずに呆けているとノックの音が聞こえた。
(誰だろう?)
俺は返事をして扉を開けると、リーフが昼食を持って立っていた。
「ゴハンモッテキタ」
俺は礼を言い、リーフから食事を受け取りテーブルに着いた。どうやらリーフもここで食事するようで自身の分も持って来ていた。
「タベタラ、コトバレンシュウ」
「付き合ってくれれるのか?」
「ウン、ワタシモニホンゴオシエテ」
なるほど教えあいか、面白そうだ。にしてもこのパンうまいな。そして俺は日が落ちるまでリーフと勉強をするのだった。
「面っ!」
強烈な一撃を頭に受ける俺。その一撃を放った本人は兜を取って笑顔を見せる。
「永井殿、戦場で呆けているとすぐに死んでしまうでござるよ」
「うるせぇ、ちょっとは手加減しろよ」
にしても武蔵はホントに良く見ている。俺の一瞬の油断を突いて一撃で決める。やっぱり強いな。
「永井殿は口は悪いでござるが、根は正直なんでしょうな。視線誘導に直ぐにひっかかるでござるよ」
「口が悪くて悪かったな」
俺は悪態をつく。武蔵はなおも笑いながら。
「まぁ、そこも永井殿らしいでござるよ。ただ、拙者には悪態をつきわざと嫌われようとしているように見えるでござるよ」
「オキテ」
ゆさゆさと体が揺れる。何だ地震か!?俺は飛び起きる。目の前には驚いた顔のリーフがいた。
「オハヨウ、シュンジ」
「あぁ、おはようリーフ」
どうやら、朝食を持ってきてくれたようだ。
(それにしても懐かしい夢を見たな……)
俺はテーブルにつき、リーフと共に食事にした。
食事をしながら、昨日の事を思い出す。昨日はリーフと言葉の練習をしたあとは夕食をとり寝てしまった。
しまったなぁ、未来日記読みたかったんだけど。意外に順応してるな俺。
そして、今日の予定はリーフと共に町に出ることだ。なるほど、リーフを見るといつもよりお洒落をしている気がする。
女王には昨日の時点で今日、町に出ることを伝えてある。万が一のために護衛が付くそうだ。
(別に必要無いんだけどな……)
あぁ、そうかリーフに要るのか。王族だしね多少はね?
ご飯を食べ終わると、リーフはそわそわと部屋の中を行ったり来たりしている。そんなに楽しみなのか町にいくの?
昨晩、髭男爵が持ってきてくれた俺の制服に袖を通す。驚いた事に直してくれたらしい。ただ、望先生に貰ったお守りはどこかにいってしまったみたいで俺の手元には無い。着替えをしながら自身の体を見るともうほとんど怪我らしい怪我はなかった。リーフの回復術とスプラウールの治癒能力のなせる業との事だ。
「キャー!」
突然、リーフが悲鳴を上げた。
「どうした!?」
「だって、シュンジがいきなり脱ぐから」
顔を手で覆いながらも指の隙間からこっちを見ているのが伺える。
「すんません」
リーフに部屋を出てもらい手早く着替えを済ませ、廊下に出たリーフを再び部屋い招き入れる。
そう言えばリーフはどこで日本語覚えたんだろう。俺はたどたどしいシルジレリア語で聞いてみた。
「リーフはドコデ日本語オボエタ?」
「学校だよ!ミライ先生が教えてくれた」
ミライ先生?土屋未来か?
「ソレハ土屋未来さん?」
「うん!ミライ先生はねとっても優しかったよ!シュンジと一緒だね」
俺は優しくねーよと言いたいところだけどストレートな感情をぶつけられ少し照れる。にしても習熟速度が上がってるのは間違いないな。あまりに早いと分からないけど言ってることが大体分かる。
これは大いに役に立つだろうな。ノックの音で俺とリーフの会話は中断された。
「どうぞ」
「失礼します」
入ってきたのは、鎧を着た銀色の髪の青年だった。
「本日、ナガイ様 リーフ様の護衛を勤めます。フィエダム騎士団副団長フィン・マクラディウスであります。何なりとご命令下さい」
そう直立不動で宣言する青年。俺は別に偉くもなんともないからなぁ……
「あ、はい。よろしくお願いします」
と頭を下げた。すると青年は慌てて答える。
「お辞めください!命まで助けられた御方にその様なことをされると私の立つ瀬がありません!」
(命を助けられた?そんな記憶は無いぞ……)
「あの、初対面じゃ?」
「ナガイ様がリーフ様を助けられた場に私もいたのです。力及ばずリーフ様を危険な目に会わせてしまいました……しかし、そこに天から降りてこられた永井様がオーガニアンを倒されたのです」
(いや、落ちてきただけです。女王、何も説明してないのかよ……)
「あーアレはグウゼンだから、キにしないでくれ」
俺はそう言うしか無かった。ん?待てよ、フィンは騎士団の副団長って言ってたけど、何でリーフと一緒にいたんだ?散歩の付き添いか?俺は疑問に思ったことを聞いた。フィンは答えにくそうにしている。
「いえ……あの、それは……」
変わりにリーフが答える。
「リーフがお願いしたんだよ。外に行きたいって」
お前が連れ出したんかい!そりゃ姫が頼んだら断るのは難しいわな。
「そういうタチバテキにコトわれないおねがいすんなよ。ただでさえビミョウなトキなのに」
俺はリーフを諌める。
「はーい。じゃあ、次からはシュンジにお願いするね」
(そうじゃねーよ!)
「ナンでオレなんだよ!」
リーフはにっこり笑って答える。
「優しいから!」
うおっ!眩しい!なんだよその笑顔。ただ、素直な感情をぶつけられるのは嬉しいな。悪意ばっかりだったからな……
「まぁ、ちょっとだけなら―じゃなくてダメだ!アブナイだろ!」
俺がそう言うと、リーフは寂しそうな顔をしてうつむいた。
「あーサンポはダメだが、ネルまでならハナシくらいならつきあってやるよ」
言い過ぎたと思ってフォローすると、リーフは顔を上げ笑顔で言うのだった。
「やっぱり優しいね!」
皆さんこんにちは、永井舜司です。俺は今、妖精たちの国を歩いています。いやーいいですね妖精!道行く人?が男子も女子も美しい!等と脳内で勝手にレポーターを気取って現実逃避をして見た。何故かと言うと、道行く妖精が皆俺を崇める、更に王族のリーフまでいるから大惨事だ。正直居心地悪いです…
リーフはそんなの気にせずニコニコしながら歩いている、俺はその後ろを着いて行き、フィンは周りを警戒している。
町並みは全体的に建物は小さい、やはり妖精族は小柄な種族のようだ。露店には果物や野菜が並べられ売られている、美味そうだなぁ。
「ほらよ、スプラウール様。食ってくれよ」
俺がモノ欲しそうに見てたのがばれたのか店主のおっちゃんが一個くれた。りんごに似ている果物だ。
「ありがとうございます、―うまい!」
俺は果物を齧るとそう叫んだ。
「へへ、ありがとうよ!ミライ様も好きだったんだぜ!」
おっちゃんは嬉しそうにそ語った。土屋未来はこの国の人に愛されてたんなぁ。
一通り町を見て回ると最期はこの町の外れにある一際大きな建物に行った。
(ここはなんだ?)
「シュンジ、ここはね学校だよ!」
リーフが嬉しそうに言うとそのまま校内に走っていった。
「あ、おい!」
俺はフィンを見る。
「校内ならば危険はないかと思います。ふふ、リーフ様があんなにはしゃがれるのは久しぶりに見ました。さぁ、私がご案内いたします」
俺はフィンの案内で校内に足を踏み入れた。校庭があってその端には遊具が設置されていた。
日本の学校に似ている、校舎に向かって歩いていると窓から生徒たちがこちらを見ているのが分かった。
「ナガイ様、お手を振られてください。きっと喜びます」
アイドルかよ!まぁ、振って見るか。俺は試しに振って見た。わぁぁー!建物全体が震えているようだ
(えぇ……なんだよこの人気……)
「わからん……何なんだこの状況は……」
俺は気付いた事があったので質問する。
「フィン、ジュギョウはいいのか?」
「問題ありません。事前にナガイ様とリーフ様が視察に赴かれる事は伝えております」
さようですか、視察ってお前……
(まぁ、いいや。何か疲れたし)
校舎に入った俺はある部屋に案内された。おそらくは客品質だろう。その部屋には眩しい光を頭部から放つ妖精がいた。
「おぉ!スプラウール様!お会いできて光栄です!」
そして、禿妖精は跪く。だから辞めろって……
「ヤメてください」
禿妖精は立ち上がり俺にイスに座るように行った。多分、俺が言わないとこいつイスに座らねーだろうな、と思ったので俺はイスに座るように禿妖精にお願いした。
「お優しいスプラウール様、お言葉のままに」
イスに座ると禿妖精は話し出す。
「はじめまして、私はペェロヴォ・プリンクハこの学校の校長をやっております」
「はじめまして、オレ…僕はナガイ シュンジです。ニホンからきました」
「えぇ、伺っておりますとも!ニホン、ミライ様と同じ国よりまたスプラウール様が来られた。この国は今その話題で持ちきりです!」
だからか、妖精たちのあの反応は。
「今日は視察とのこと、お好きにこの学校をご覧ください」
さて、じゃあ学校を回るかということでフィンと2人で学校巡りが始まった。リーフどこいったんだ?
色々と校内を見て回ったが行く先々で生徒たちから羨望のまなざしで見られ居心地が悪い…俺は土屋未来じゃないんだが。俺はフィンと中庭に来た。
「なぁ、どうしてスプラウールはこんなにカンゲイされるんだ?」
「はい、スプラウール様方は古来より多くの国々に繁栄を齎してきました。この国とて例外ではありません」
「それでもだ、オレはナニもしていないから…ちょっとイゴコチが…」
「何もしていない?何をおっしゃりますか!ナガイ様はリーフ様をお助けになられたじゃないですか!」
俺はフィンに真相を伝えた。
「そうでしたか……しかし事実は事実。助けられた事に変わりはありません」
はっきりと言い切られてしまい俺は言葉に詰まる。話を変えるか。
「そういえば、リーフは?」
「リーフ様ならあちらです」
フィンが指差した先を見るとリーフが妖精たちと遊んでいた。楽しそうだな。
「リーフ様はこちらの学校に通われていたのです。事情があり今は通われていませんが」
事情か、あいつも大変なんだな。俺はじっとリーフ達を見つめる。妖精たちはみんな満面の笑顔を浮かべている。何だろうな学校に来てからずっと変な感じだ。
あぁ……そうか、俺もちょっと前まで日本で学校に通ってたもんな。西口たち逃げ切れたかな?鬼に捕まった奴らはどうなったのかな?
そうだよな、あいつらも俺と同じ学生だったよな。確かにいざこざはあったけど皆、学校生活を必死に楽しんでたんだ。俺はこのままでいいのか……
(ん?そう言えばここは妖精の国なのになんでオーガがいたんだ)
「なぁ、なんでオーガがこの国にいたんだ?」
「陛下より伺っていないのですね。オーガは裏切り者を追ってこの国の国境を越えたそうです。偶然、ナガイ様達を見つけたのでしょう」
(偶然?本当に偶然か?)
俺は思い返す、そして気付く。
「……俺のせいかも知れない。そうだ、俺があの時、大きな音を出さなきゃ、木を倒さなきゃ気付かれなかったんじゃないのか!?そうだ、俺が!俺のせいで!」
「ナガイ様!落ち着いて下さい!」
フィンに両肩を揺さぶられ、平静を取り戻す。
「あっすまない」
「何が合ったのかは分かりませんが落ち着いて下さい。これをお使いください」
そう言ってフィンは小さな布を差し出してきた。
(ハンカチか?)
「なににツカうんだよ?」
「涙をお拭きください」
涙?俺は目に触れる、本当だ。いつの間にか泣いてたんだな。
色々あったけどやっぱりこのままでいいわけねーわ。
(それに俺のせいだったら寝覚め最悪だしな)
「フィン、タノミがある。モドッタらジョウオウにあわせてほしい」
「それは大丈夫だと思いますが、一体なぜ?」
「ごめん、いまはイえない」
「申し訳ありません、出過ぎた質問でした」
「いや、もしかしたらフィンにもキョウリョクしてもらうかもしれない」
「私に出来ることならなんなりと!」
「ありがとう!じゃあカエルか!」
「はい!」