空が廻る
――最後に見えたのは、光と風をに遮るように開かれた、灰色の羽、だったような、
――
◆
はっと目を開く。
目に飛び込んできたのはこぎれいな部屋。
暖かな布団にくるまって、私は眠りこけていたらしい。
こんな感覚――いつぶりだろうか。
頭から足の先まで、お日さまの香りがする、やわらかさに包まれている。ほんのりとしたあたたかさが、ふんわりとまぶたを閉じさせていく......
「起きて!起きてアンナ!」
何か、聞き覚えのある声がしたような......?
ぼんやりとまぶたを上げる。んー、誰もいない。というかここはどこなのだろうか?あれ?私は、たしか、研究室で、コーネとかいう赤毛が来て、
記憶が鮮明さを取り戻していく。
大地震。大風。あの光。あのあと私は......あれ?教授と子犬は?
勢いよく起きあがる。
と、同時に、お腹の上に何かが飛び乗ってきた。
「アンナ!起きて!ご飯つくってもらった!」
子犬がしゃべっている~~?!?
◆
「子犬......?」
私のお腹の上にちょこんと座っているのはたしかに子犬だった。
「僕は子犬だけど名前もちゃんともらったのだ!ジャックと呼んでくれ、アンナ!」
舌をちろりと出して、目尻をきゅっと下げて笑う子犬もといジャック。
私はどうやらおかしなことに巻き込まれてしまったようです。
「ごはんだよ!早く来るんだ、アンナ!」
とてとてとドアへと走るジャックを追いかけて、急いで部屋の出口へと走る。
ふと、風を感じる。
ひゅううと、鳴る、風の音。
「アンナ?そっちは外だよ!」
呼ぶジャックの声をおいて、私は勝手に赤いドアのノブに触れた。
風圧が私の手を押した。
ドアが勢いよく開いた。
風が白衣をひるがえす。
そこは、――青くて広い、空の中だった。