研究室に朝が来る
おはよう、天人地生塵芥の諸君!
今日もいい天気だ。レンガの壁もぴしっと立っている。土のにおいもかぐわしい。何より夜中の雨が良かったな!草木ものびのび空を見上げている!
早くお散歩に行こう!飼い主!
◆
私の教授はジャック・ラッセル・テリアの子犬を飼っている。これがまた元気な犬種で、全くたまらないのだ。また勝手にガラス戸を開けている。チビのくせに、どうやっているのか、器用なやつである。
「おい、子犬!」
くんと鼻を鳴らして、後ろに立つ私を見上げる。
尻尾はちぎれんばかりにぶんぶん振られていて。
真ん丸の目はどんな言葉よりも雄弁だ。私でもわかる。こいつ散歩に行きたいんだ。
「教授!起きてくださいよ!教授!」
部屋の隅の書籍積み上がりゾーンに顔を突っ込む。正しくはソファーであるはずなのだが。
彼はいつもこの中で調べものをしながら寝てしまうのだ。
「ん~あと5分~、」
本にうずもれて微かにうごめく毛布の塊。長い手足をどうやってしまいこんでいるのだろうか。
だいたい、私にハンモックを買ってくれたのだから、自分にもベッドを買えばいいのに。
ため息をつく私の横で、子犬が大暴れしている。
「わん!わん!」
尻尾を振り回しながら、あちらこちらを引っ張りだす。ふらふらと揺れる本の壁。元々不安定に積まれている。元気ないぬっころの目覚まし攻撃は、そんなことを考慮するはずもなかった。
「あっこら、そこ引っ張ると、」
はいもう遅かった。ご愁傷様、教授。
ごきげんなわんこの突進によって、積み上げられた大量の分厚いハードカバーはは攻撃を開始した――教授に向かって。
ぐえっと小さな声がした。大丈夫、死んでない。