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『新たな彼女は限定版?』

 

 震動に浸り体を揺さぶる体感は不快さとは無縁でむしろ心地良さを差し出してくれた、流れて行く世界は静を忘れた動だ。

 たった一枚で隔てられた世界は切り離された空間に似ている気がする。

 そんな窓越し浮かぶ景色は絶景そのものかもしれない。木々から抜け、差し込む太陽光は眩しさを落とすが、それが景色に彩色を果たす

 現れたのは空と海、水平線とはいかないが二つが混じり一つと錯覚を誘発する。まるで空まで海みたいだ、嫌々、海まで空みたいなでも良いかもしれない。

「わあ、綺麗ですね十夜」

「はい、そうですね……ああ、もう少しで到着するみたいですよ? 降りる準備をしといて下さい」

「はい、了解です!」

 とあるバスの中、僕白原十夜と鮎原夢はある場所へと向かっていた。

 バスが目的地に着き直ぐさま下車、バス停前にあるとは聞いていたがまさか真ん前とは。和風を奏でる旅館が目の前にあった、名前を旅館『佐波(さなみ)』、そう僕らは二人だけで旅行にやって来たのだ。

 事の始めは空月九十九先生から持ち掛けられた。酔っ払った日を悔いてそのお詫びに先生の知り合いで旅館経営者の方から旅館の割り引き券を貰ったらしく、それで夢ちゃんと行って来て言いと休暇をくれたのだ。

 多分アフリカのことも尾を引いているのだろう。でも有り難い、夢ちゃんと二人きりで旅行何て初めてだから。

 しかし先生が言った言葉が最悪と言うか何と言うのか。来る前先生は『彼女とのうふふでいや~んな夜を楽しんで来てね!』だそうだ。

 全く先生は何と言うことを……。

「十夜? ボーッとしてどうしたんですか?」

「へ? あ、いえ、何でもありませんよ」

 ともかくこの旅行を楽しもう。

 旅館へ入ると女将らしき人物に迎え入れられた、和服が似合う大和撫子のような人だ。

 中は木の匂いが心地良さを生む綺麗な内装だった、清潔感があり良い旅館そのもの。

「予約していた白原ですけど」

「はい白原様ですね、お待ちしておりました」

 それから中へと誘われ和が強調された畳部屋へと案内され内装の説明を聞く。部屋に荷物を置き、女将さんが持参してきた名簿に記入を果たし一段落かと思ったが。

「お二人は新婚さんですか?」

 と女将さんが訊いて来たものだから少し焦ってしまった。

「えっと、違……」

「は、はい! 十夜と私は新婚さんなんです!」

 あれ、夢ちゃん?

「まあ、優しそうな旦那様ですね?」

「は、はい! 十夜は優しいんです!」

 まさか一瞬で夢ちゃんの旦那様になってしまうとは、しかし悪い気はしない。顔を真っ赤に染めながら女将さんと嬉しそうに話している夢ちゃんを見ていたら旦那様でも良いかと妥協する。

「それでは、ごゆっくりお過ごし下さいね?」

 何故か『ごゆっくり』の単語をやけに強調して言ったのが気掛かりだ。何だろう女将さんの幸せな人達を遠くから微笑ましく見守るような笑みは。

「どうしてあんなこと言ったんですか?」

「えっと……あぅ、その、十夜と新婚さんなんて聞いたら舞い上がっちゃって何かが分からなくなったと言いますか……えへへ」

「じゃあここにいる間は旦那様にならなきゃなりませんね」

「そうですねあなた! ……あぅ、恥ずかしいです」

 僕もあなたと言われて耳がこそばゆい。とにかく二人きりの時間を満喫しなければ来たかいがない。

 旅館『佐波』は真後ろに白い砂浜が存在し海水浴が楽しめるのがポイントだ。窓から差し込むのは太陽光だけでは無く、真っ青な海がまるで絵画のような芸術性を創り出していた。

 気温が少し高いらしく浜辺には海を満喫する人々が。

「もう少し休んでから海に行きませんか?」

「はい、じゃあその時に初めて十夜に私の水着姿を見せてあげます! 楽しみに待っていて下さいね!」

 それはそれは楽しみにだ、夢ちゃんの水着姿か、一体どんな姿を見せてくれるのか。

 楽しい旅行になりそうだ。

「じゃあ十夜、いつものあれをしましょうです!」

「いつものあれ……ですか?」

「これですよ、えい!」

 いきなり飛び掛かって来る夢ちゃん、そのまま唇を重ねる。

 勢いが強過ぎて後頭部が畳に直撃、まあ道路よりはましか。

 そして僕らは生命の宇宙と呼べる海へとやって来たのだった。

 眩しい太陽、それが海に反射して更に眩しく二重攻撃かと思うがそんなものでは怯まない。

 海何て学生以来で懐かしい、クラゲとかいないことを祈りつつ着替えをしている彼女を待つ。どんな水着で来るのか、まあ妙な格好では無いだろう。例えばスクール水着とか。

 誤解しないで欲しいが僕はスクミズフェチでは無い、今のは例えであって別に深い意味は無いのだ。別に別に競泳水着でも例え話に使えたのだがしかし競泳よりやっぱりスク……おほん、今のは無かったことだと思ってくれ。

「十夜はスクミズが良かったんですか?」

「ご、誤解です、それでは僕がスクミズ好きの変な奴に成り下がってしまいます、僕が真に好きなのは……って、夢ちゃんいつの間に!」

「例えばスクール水着とかって口走っているところからいましたよ? 全部漏れ漏れさんでした」

 またこの口が勝手に僕の妄想を口走ったのか。

 口よ、僕に恨みがあるのか?

 悪しき口を頭の中で啓発し深い溜め息を。平常心が帰還したことを喜びつつ彼女の格好を一瞥する。純白のビキニ姿でそこで微笑んでいた、大胆だが彼女の綺麗な体のラインがよりビキニを輝かせた。

 白い肌の面積が広い、しかしそれだけでは無く水着は何と紐で結ぶタイプだったのだ。美しく危なさを兼ね備えた水着美少女が目の前に降臨を果たす。

 目が離せない。

「あぅ、そんなに見つめられたら恥ずかしいです……えっとえっと、その、どうですかこの水着、新しく買ったんですけど」

「可愛いくて素晴らしいです……」

「あぅ、嬉しいです……あの、十夜はどこ見てるんですか? お、おヘソばかり見ないで下さい、すっごく恥ずかしいです!」

 けしからんヘソだ。て、僕のすけすけすけべ野郎! 頭の中で穴掘って叫ぶ、恥ずかしくて。

「十夜、あぅ、おヘソばかり見てないでせっかくの海何ですから遊びましょうです!」

「そ、そうですね、僕がどうかしてました、海を満喫しましょう!」

「はい! あ、その前に……とう!」

 押し倒されキスを。嫌々地面が砂で助かった、コンクリートより柔らかい。こうなった場合キスの恥ずかしさは後頭部の痛みが食べてしまい霧散する。

 それはそれで悲しいが。

 と、ごちゃごちゃ考えても始まらないので海へと走る。無論彼女と共に。

 砂浜にシートを敷き旅館からレンタルしたパラソルを立てて紫外線対策を行ってから荷物を置く。

「こんなもんですかね、あ、カメラも準備準備……」

「十夜」

「はい、何でしょうか?」

「日焼け止め塗って貰えますか?」

 これは、まさかお約束の展開なのだろうか?

「え……その、僕なんかで良いんですか?」

「え? だって背中は私じゃ上手く塗れませんし、こんな頼みは十夜以外出来ません……良いですか?」

 心配そうに上目遣いを発動する彼女が眩しい。

 四つん這いで見上げるように僕を視界に捉えているし、水着な為胸の谷間がくっきりと。

 すけすけすけべ退散!

「分かりました、塗らせて貰います!」

「はい、よろしくお願いしちゃいます!」

 シートの上に俯せで横たわる彼女、そのおかげと言わないが真横から見える胸が形を変える。て、また僕は何たる目で彼女を見ているのだ、邪気退散!

 煩悩と格闘中、彼女が上の水着の紐を解く、こうして背中は生まれたままの姿に。心臓が興奮して暴れ出した。

「あぅ、恥ずかしいです……は、早く塗って下さい十夜」

「わ、わわ、分かりました、しっかりがっしりもっちりと塗らせて貰います!」

 がっちりともっちりが余計だったか。

 心臓が暴れる暴れる、俯せに寝転がる彼女が背中を全開にしている姿は何だかセクシーだ。それに今から触れるのだ、僕の手が汚れなど微塵も思わせない背中に。

 日焼け止めを手に付け、両手で馴染ませて恐る恐る触れる。

「ひゃう!」

「わ! ど、どうかしましたか!」

「あぅ、ごめんなさい十夜驚かせてしまって。日焼け止めが冷たくてびっくりしてしまっただけなんです……構わず続けて欲しいです」

 何だびっくりしたよ、確かに冷たいかも知れないな。再度チャレンジ、ビクッと背中が反応するが声は漏れなかった、どうやら今度は我慢してくれたらしい。

 そのまま満遍なく塗って行く。

「ん……あぅ、ん……」

 淫らを含ませた吐息がちらほらと漏れて行く、声だけ聞いていたら十八禁確定だ。

 どうにかこうにか理性を保ちながら日焼け止めを終える。水着を付け直した彼女が立ち上がり僕に手を差し延べた。

「行きましょう十夜!」

「はい、お供しましょう」

 海に足を挿入すると冷たかったが彼女は嬉しそうだから我慢するか。

 膨らませたボールで遊んだり、砂浜で年甲斐も無く山を作ったり、どちらが綺麗な貝殻を見つけるか競ったりと笑顔を絶やすこと無く時間が進む。

 不意に“違う”彼女だったらどんな風に楽しむのかを考えてみる。きっと甘えん坊な彼女と男勝りな彼女だって笑顔に違いが無いと疑わない。

 こんな思いを感じるのは僕だけだろう。本当なら“違う”彼女など考える訳が無い。

 本来なら3つの違う彼女何て有り得ないのだから。

 あの日、口にした言葉を彼女へと再び投げ掛ける自分がいた。

 出会い、会う度に違う彼女に違和感を感じ問うた言葉、それをもう一度彼女へ。

「……どうして会う度に違う君になるのですか?」

「え?」

 唐突だった質問に不意を突かれたらしい。

 笑顔が一瞬で砕け、再度作られた。あの日と同じ答えを述べる。

「今は理由を話せません、ただ……白原十夜が好きな気持ちは偽りじゃありません。本当に貴方が好きです……卑怯ですけど、私の決心が決まるまで待ってて貰えませんか? その決心が決まったらきっと話しますから」

 悲しそうに、何かに怯えているような姿にこれ以上何も言えなくなる。どうして彼女と共に居たいと思ったのか、それは僕の過去に理由だろう。

 いつか理由を話してくれたなら、僕が君を受け入れた理由も話そう。

 それがあの時の約束……。

「ごめんなさい十夜、私おかしいですよね? 十夜が疑問に思って当然何ですよね……」

「いえ、僕こそすいませんでした。あの時約束したのにそれを忘れて訊いてしまいました」

「ごめんなさい。ただ私……話したら……十夜との関係が壊れてしまうようで怖いんです、私十夜が好きです、本当に大好きです、だから……決心出来ない」

 壊れてしまう、そんなことを聞いたら僕も恐ろしくなる。

 側に咲く笑顔が散るのが怖い。

 僕は怖がりで卑怯者なのかも知れない。彼女が答える日をただ待っているだけの男なのだから。それを情けなくなりついあの日の約束を破りまた問う愚かな自分がまた恐ろしくなる。

 答えを彼女に委ねてしまう。

 そうしないとこの時間が砕けそうで……。

「決心が付くまで待ってます」

「ありがとう十夜」

 また彼女に重荷を乗せた。

 夕焼けが砂浜を焦がすまで楽しく遊んだ、腐食してしまった笑顔を治すように二人は一層と笑顔を振り撒く。

 あんな話をしなければ良かったかもしれないと自分を責めたがもう遅い。

 腐食した部分にいくら皮を巻こうと何も変わらないと言うのに。

 旅館へと戻りそれぞれ露天風呂を堪能し、部屋で夕涼み。

 嫌々、混浴なら良かったのにと恥ずべき思考を循環させる。ああ、いつもの調子に戻って来たな。

「綺麗ですね十夜、海が赤から黒に染まって行きます」

「うん。夜がもっと近くに感じられますね、夜景からの海もまた一段と乙なものです」

 そろそろ腹がご飯を催促し始めた頃、部屋に料理が運ばれて来た。海の幸を基準にした豪勢な夕食である、刺身、鍋、何と伊勢海老まである始末。

「わあ! 十夜、ご馳走ですね!」

「そうですね、何から食べて良いやら迷います」

「それではごゆっくり……」

 仲居さんが料理を運び終えて退室してゆく中、僕らの関心は料理に囚われていた。

 さっそく刺身を一口、うん旨い。取れたてらしいので新鮮そのものだ。

「十夜、あのお願いがあるんですけど良いですか?」

「何でしょうか? 僕に出来ることなら」

「えっとえっと、その、あぅ……私にあ~んして下さい!」

 あ~んって食べさせて貰う時のあのあ~んなのか?

 僕が夢ちゃんに?

「普通逆じゃ無いんですか?」

「女の子だって大好きな人にあ~んして欲しいものなのです! 後で十夜にはむはむしてあげますからお願いします!」

「わ、分かりましたから、だからそんなに身を乗り出さなくても……」

 別にはむはむして貰うのが嬉しくて応じた訳では無い、ただ夢ちゃんがあ~んで喜ぶなら一肌脱ごう。さて、どの料理を使ってあ~んをしようか。

 鍋の具材は熱くて火傷させては不味いし、ああ刺身なら良いだろう。マグロの赤身を醤油に付けてゆっくりと彼女の口へ。

「じゃあ夢ちゃん、あ~ん」

「あぅ、ファイトです私! あ~ん!」

 何と戦う気なのかは知らないが、頬を赤らめ瞼を閉じて口を開けてる姿は可愛い。

 嫌々、あ~んする側も至福の時を感じるのかと初めて知った、刺身を口へ投入すると小さな口が閉じる。

 そんな他愛ない仕草が堪らない。

「……うぐっ、あぅ、うぐぅぅぅぅ!」

「夢ちゃん?」

「な、なんれふかこれ! ツ、ツーンてしみますぅ! あぅ~!」

 しまった、僕の醤油にはワサビが入っていたんだった! 直ちに水差しを手に取りコップに注ぎ彼女へ突き出す。

 素早く手からコップが消え去り彼女の手の中へ、一気に飲み干す姿が何だか愛らしい。

「んぐ、んぐ、……ぷは!」

「すいません大丈夫でしたか? 僕の醤油にはワサビが入っていたんです、そんなことにも気が付かなかったとは迂闊でした……って、夢ちゃん?」

 妙だった、水を飲み干した彼女は惚けたように視線が何処かを彷徨っていた。そして何故か頬に桜色が満開する。様子が変だぞ?

「……あ、あの、夢ちゃん?」

「ふぁい、何れふか?」

「ボーッとしてどうかしましたか?」

「あぅ~、何らかおかひいんれす私、何かポーーっと体が熱くらっれ、ひい気持ちらんれす! あははは!」

 口調もおかしくなって来ているぞ? 何だ、水を飲んでからおかしいぞ? ん、水?

 僕も少しコップに水を注ぎ少量口に含む。

「え! これお酒じゃないですか!」

 何と水差しの中身がお酒だったのだ、夢ちゃんは水だと思い一気飲みをした、つまり……。

「あははは! 十夜がひっぱいに分身して見えまふ~! あははは!」

 これは酔っ払ってしまったのだ。何でお酒が入っていたんだ、きっと間違えて入れてしまったのだろう。

 どうやったら間違えるのか教えて欲しいものだが今は夢ちゃんが先決なのだ。

「大丈夫ですか夢ちゃん!」

「あははは! 十夜がグニャグニャに見へるれふ~! 周りもクニャクニャして来たれふ~! あははは……あぅ~……」

 と、そのまま大の字で後頭部から倒れ就寝してしまう。

 何たることだ、せっかくの彼女との食事でこんなことになるとは。

 それにしても夢ちゃんって下戸だったのか。

 眠ってしまったのは仕方が無い、内線で仲居さんを呼び出し毛布を持って来て貰い彼女へ。気持ち良さげに眠る姿を肴にお茶を一杯、それから寂しく虚しく食事を続ける。

 静かな寝息だけがこの部屋のBGM、ああ、鍋の煮える音もあったか。それにしても旅行何て初めてだな、学生の時は修学旅行行かなかったから。

 当時の僕にとってそんなものはどうでも良かった、友達と呼べる奴は一人しかいなかったし。友達を作る気が無かったからな、嫌々今となっては何故そんな馬鹿なことを思っていたのか。

 あいつだけは何故か僕といてくれたな。

「…………一人だと妙なことばかり思ってしまいますね」

 豪華な料理を食べ終えると満腹感が居座る、食べた食べた。

 さてこれからどうしたものか、夢ちゃんが寝ていては正直つまらない。

「ん……んん……?」

「あれ? 目が覚めましたか夢ちゃん?」

 開放された瞳はまだ半開き状態だが一応それが覚醒だと認識を得られた。

 良かった、情けないが夢ちゃんが眠ったままだと寂しかったから都合が良い。

 と、思ったのだが。

「……む? む~……」

「夢ちゃん? どうかしましたか?」

 目を座らせキョロキョロと辺りを一瞥し、ゆっくりと僕を見る。

 様子がまたまたおかしいぞ?

 彼女はおもむろに髪を結い始めた、ツインテールに。

 あれ、甘えん坊な彼女になっちゃったぞ? 一日で何度も変わる何て無かったのに。

「あれ?」

 間抜けな僕の声がぽろりと、ツインテールにしたかと思えばそのまま後ろも結う。何とツインテールとポニーテールを一度にしたのだ。

 えっとつまり今テールが3つある状況なので、取りあえずトリプルテールと名付けておこう。なんだこれは、トリプルテールの彼女何て知らないぞ?

 どうしよう、彼女は真直ぐ僕を見つめているのだがどうも様子が極限におかしい。どう対処すべきなのか悩みに悩み、組み上げた答えとは、取りあえず話しかけてみる、だ。

「ゆ、夢ちゃん気分はどうですか?」

「……む~」

「え?」

「……む?」

 話しかけても『……む』としか言わないのだがこれは一体どうしたことやら。頭を抱えた時だった、彼女が動いたのは。

 素早く立ち上がり小走りで僕に近付き、胡座をかいていた足にちょこんと座る。視界には彼女の背中と後頭部が映るが、首を動かし視線を絡めてくる。

 目が座ったまま。

「えっと、夢ちゃん?」

「……む?」

「えっとえっと……元気ですか?」

「……む!」

 右拳を天に上げる、多分元気だと言っているのだろう。

 それにしてもやっぱり夢ちゃんは可愛い、こんな近くで拝めるとは嬉しい限りだ。

 良く観察すると頬が真っ赤になっているではないか、尚且つ先程飲んだお酒を考えると……。

 まさかまだ酔っ払っている?

 しかも甘えん坊でも甲斐甲斐しくも男勝りでもない彼女になってしまっている?

 まさか酔うと新たな彼女が現れると言う仕組みなのか?

 さて、僕はどうしたら良いのやら。

「んん……えっと、その……お腹空いてません?」

「……む!」

 と言いながら(?)料理を指差す夢ちゃんが可愛らしい等と思ったがどうやらお腹は空いているらしい。

 しかし動こうとはしない、これはもしや?

「食べさせろと言ってるんですか?」

「……む!」

 ああ、『む』を強調して言うのは肯定の意味らしい。

 そんな訳で彼女に料理を食べさせることに。箸でサーモンの切り身を醤油に付けて彼女の口へと、ああ大丈夫ワサビは入れて無いから。

 これでは先程のあ~んの延長だ。

「美味しいですか?」

「……むぅ!」

 一瞬笑顔になった、これは不意打ちに近い。見とれてしまったではないか。それから次々と食べさせて行く、彼女は満足げに膨れたお腹を擦る。

「……む~」

「ん? どうかしましたか?」

「……む!」

 突然にトリプルテールな彼女に唇を奪われてしまう。

 そのままバランスを崩し畳へ倒れてしまうのだが、僕が彼女に覆い被さる形にもつれ込む。

 がっちりと首に手が回されている為身動きが困難である。

 それと同時に襖が開いたのは不幸だったのかもしれない。

「失礼致します、お布団を敷きに……わお! ご、ごめんなさい! お楽しみ中とは知らなくて! 失礼しました! ……若い子はお盛んねえ、ふふっ」

 と、仲居さんは嫌らしい笑みを浮かべ襖を閉じた。誤解だ!

 きっと他の仲居さんに『ねえねえ今行って来た部屋のお客が盛んに燃えてたわ!』とか言って仲居仲間は『嘘、まだ夜中でもないのに、きっと変態カップルね』何て言ってるに違いない。

 明日きっと妙な目付きで見られるのは避けられまい。

 色々思いに耽る、等とは行かない。夢ちゃんとのキスでそんなこと出来る訳が無い。

 それに浴衣がはだけて胸元から白い肌が、やばい見えそうだ。

 て、エッチな目で夢ちゃんを見るなんて最低だ僕は、頭の中で穴掘って叫ぶ、恥ずかしくて。

「……ぷはぁ~!」

 ようやく唇が離れ解放されたようだ、心臓がまだバクバクうるさい。

「……む!」

 唇を突き出し瞼を閉じる彼女の行動、その理由とはまさか、僕にキスしろと言うのか?

 今まで僕からしたこと無いのに。

 どんな状況、形であれ彼女は待っているのだ。女を待たせるのは男では無い、と教えられたことがあった。それはそうだ、彼女が受け入れると待っているのだ、キスをすることが礼儀なのかも知れない。

 しかし教えてくれたのが喫茶店『ママンの胸』のマスター、かれんちゃんなのが物凄く情けなさを感じてしまう。

 あの人は生物上男だが心は乙女(?)なのだから。

「……む~」

 催促する彼女の声が僕の背中を押す、行くしかない。

 ゆっくりと彼女の唇に向かう。

 段々と近付く顔が埋め立てていた羞恥を呼び覚ましてしまう、だが今回は負けなかった。瞼を閉じ、視界からの情報を遮断、今日は僕からキスするのだ!

 真っ暗だが確実に近付いている筈だ、もう少し、もう少し、もう少し……?

「あれ?」

 瞼を閉じる前に見た彼女との距離と、閉じてから進んだ距離が合わない。計算ではもうとっくにキスしている筈なのだが、おかしい。

 瞳を晒すと、彼女はまだそこにいるの。

 だが、

「……す~……」

「夢ちゃん?」

「……すぅ~……」

 地面にくっつきながら寝息を漏らしていたのだった。

 何だそれ、まさか寝てしまうなんて。

「ゆ、夢ちゃん」

「す~……」

「ああ、完全に寝ていますね」

 キスすると熱く決意したのだが、そのエネルギーは何処で消費すれば言いのだろうか?取りあえず蓄えておこう、いつか使える日まで。

 この調子では当分使うことは無いだろうな。

 内線で仲居さんを呼び食器を下げて貰い布団を敷いて貰う。

「お客様は“早い”んですね?」

「はい?」

「あ、いえ、何でもありません……おほほほほ!」

 何を勘違いしているかは知らない、でもキスを目撃した仲居さんだったのである程度予想出来るが、敢えて言うまい。

 仲居さん、そのニヤニヤした笑みを止めて下さい。

 嫌らしい笑みを浮かべた仲居さんが去った後、夢ちゃんを布団で寝かせてやる為運ぶ。

 お姫様抱っこ、する方もされる方も恥ずかしいあれだ。そっと持ち上げると意外に軽かった、すんなり持ち上がるのだから。

 腕の中で眠る彼女を眺めていると自分は今幸せであると認識出来る。

 安らかな寝顔に不幸何てものを微塵も感じないのだから。

 布団へ彼女を寝かせ部屋の電気を消す。時間はまだ早いが一人だと詰まらないので寝ることに。

 まどろみに飲まれる間際、声が聞こえた気がした、それはオバケかそれとも夢ちゃんなのか分からない。

 ――ごめんなさい。

 そう聞こえた気がする、誰に向けた言葉だったのか。

 ――やめて……。

 最後にその言葉を耳が捕らえてから睡魔に意識を引っ張られてしまう。

 その言葉の意味を知ったのは随分と後の話、それは夢ちゃんが全てを語る日まで待たなきゃならない。




 着色される空、爽快な目覚めが訪れる、ことは無かった。例えるならば遥か何万なんちゃら光年よりはるばる来訪する隕石の如く。更に例えるならば不意を突かれ溝に落ちたスイカ、嫌々これでは意味不明だ。

 ぶっちゃけちゃうと夢ちゃんが僕の上に飛び乗って来たのだ。

「げふっ!」

「起きろよ十夜もう朝だぜコノヤローー!」

 視界オールクリア、そこに上映されるは我が彼女鮎原夢。

 布団の上でニコニコしているではないか。ちなみにポニーテールのあの彼女だ。

「起きたか十夜!」

「……お、おはようございます」

「じゃあさっそく頂きます」

 強引に唇が奪われる、それだけで眠気が逃げて行く。

「ぷは、ご馳走さま!」

「えっと、夢ちゃん」

「何だよ十夜……ま、まさかムラムラしちまったのか! オ、オレは今日はヤバイ日で……」

「違いますよ! とにかく退いて下さい!」

 どうして下ネタに走ってしまうのやら。取りあえず布団を抜け出し窓を開ける。

 爽やかな海の香りと風が僕を抱き締める。やっぱり良い場所だな。

「はあ~、良い気持ちですね」

「良し十夜、明日にはもう帰ってしまうんださっさと着替えて今日は何処かへ行くぞ!」

「朝ご飯の後ならばお供します……って、あれ?」

 そうだ忘れていた、昨夜のトリプルテールな彼女のことを。

 今朝は男勝りな彼女だからいつもの彼女だ、ちょっと訊いてみようか。

「夢ちゃん昨日のこと何ですけど」

「ん? 昨日って何だよ?」

「嫌、トリプルテールの貴女のことですよ、あれは一体?」

 さてどんな答えを示すのか。

「トリプルテール? なんだそりゃ? オレにそんな“オレ”はいないぜ?」

 いないだって? つまり四つ目の彼女等存在しないと言っている訳になる。なら昨日のあれは何だったのだろうか?

「夢ちゃん昨日のことは覚えてますか?」

「昨日? えっとな、確か……ああそうそう十夜があ~んしてくれた刺身がワサビが目茶苦茶利いてて、水を飲んでから……あれ? それからどうしたっけ?」

 昨日のお酒を飲んだ以降の記憶がバッサリと空白らしい。

 つまり酔っ払うとあのトリプルテールになってしまう、と言う結論に至ったのだ。

 まあ人が酔うと変わると言うし気にしないでおこう。

 ただ、変わり過ぎな気もするのだが。

「何だよ十夜オレを見つめやがって……ま、まさか我慢の限界なのか! し、しょうがない奴だな……む、胸くらいは見せてやるから一人でやってくれ」

「何の話ですか!」

 とまあそんな訳で、と言ったがどんな訳なのか理解に苦しむだろうが朝食を取り外出する。

 散歩がてらに海沿いを歩きながら町で醜悪姉妹と先生、ついでにかれんちゃんへのお土産を購入。

 昼食を済ませてから宿に戻ると夢ちゃんが騒ぎ出す。

「十夜海に行くぞ!」

「帰って来たばかりでも元気ですね」

「まあな! ……まさか嫌なのか?」

 拳を強く握り締め、僕を刺すように睨む。嫌々、なかなか迫力があって怖い。

「そんな訳無いですよ、夢ちゃんとなら何処にだって行きます!」

「ど、何処にもって風呂やトイレにもか! そ、そうか十夜はそんな趣味があったのか、この変態野郎!」

「へぶっ!」

 これこそがいわゆる理不尽、と言う現象である。

 しかし彼女の拳は痛い。

 殴られ痛みが僕を苦しめる中、彼女と海を満喫すると自然と痛みを忘れていた。

 今日も良い天気で良かった、子供のようにはしゃぐ彼女の姿が何だか微笑ましくて和む、ただ暴力が無ければ更に良いが。

「良~し十夜ちょっと横になれ」

「砂浜の上にですか?」

「当たり前だろ? 良いから早くしやがれ!」

 訳分からずそそくさと仰向けになると夢ちゃんは湿らかせた砂で僕の体を覆って行く。

 数分後、疑似砂風呂を体感するのだった。それにしても砂が重い、顔しか動かせないのは辛い。

「動いて壊すんじゃ無いぞ? へっへ~んここをこうして、こんな風にしてやるぜ!」

 砂に覆われた胸の上に二つの山を作り始めた、何と僕にバストが出来るとは。行き交う人々に笑われている、結構恥ずかしい。

 砂による人工バストを手に入れた間抜けな姿を携帯電話のカメラが容赦無く襲う。

 夢ちゃんや通行人A、B、C、更には小さな子供まで。

 意外に芸術性があるのかみんなが写メを。不甲斐ない姿がネットに掲載されないことを祈りつつみんなが飽きるのを待つばかりである。

 ちなみに最後下半身部分に砂による突起物を子供に付けられ爆笑されたのは屈辱的だった。



 楽しさよりも恥ずかしさに支配された昼間はさり夜が訪れて旅行最高の夜、またまた格別に旨い料理を楽しみながら昼間の話で盛り上がっていたのだった。

「最高だったな! あの子があんな立派な物を作ってくれたから最高の作品になったんだぜ!」

「うう、思い出させないで下さいよ、僕は傷心しているんですから」

「何だよそれ、だったら機嫌直してやる!」

 と、本日何回目かは忘れたがキスを味わう。

 断言しよう、機嫌が直った、嫌々単純だな僕は。

「ぷは、機嫌直ったか?」

「は、はい」

「じゃあ飯に戻ろうぜ、本当に旨いなここの料理」

 確かに料理は最高だ、この伊勢海老の味噌汁は格別だ。

 旨いと絶賛しながら食事を続けているとある物に目に入る。それはただの水差し。

 昨日何故お酒等が入っていたのか仲居さんに問い詰めたらそれにお酒を入れたのは仲居頭を勤めるおばさんらしい。ちょっとボケ気味らしくて昨日の惨事が発生したとか。

 嫌々、そんな人を働かせるのはどうだろうか? まあ悪気があった訳じゃないからこれ以上は何も言わないけど。

 まさかまたお酒が入っている、何てことは……。

「水飲もうかな」

 と言って夢ちゃんがコップに水差しの中身を注ぎ、飲んだ。

 ちなみに一気飲み。

「あっ、……ゆ、夢ちゃんそれは水ですか?」

「十夜、お前何言ってんだよ水差しには水が入っているのが常識だろ?」

 どうやら何とも無いようだ。

「そうですよね、まさか二日続けては無いですよね?」

「二日続けて? 何の話をしていやがるんだ? お前オレに何か隠してにゃいか?」

「別に何も無いです……ん? にゃいか?」

「怪ひいな、何かオレひ隠ひへるらろ? はれ? 何らか気持ひが良ひじょ? 十夜がひっぱいに見へる~……」

 デジャブだ、昨日と全く同じく大の字で倒れてしまう。

 ちょっと待ってくれ、またお酒が入っていたのか?

「またですか……」

 だが昨日とは違った、突如夢ちゃんが起き上がり僕を一瞥。

 目が座っている、まさか。

「夢ちゃん?」

「……む?」

 ああ、どうやら昨日の再来らしい。お酒限定で出て来る彼女とまた一夜を過ごすのか。また髪をトリプルテールに施し新たな彼女へと変貌を遂げる。

 どう動くのか心配するが普通にご飯を食べ始めた、無表情で。

「お、美味しいですか?」

「……む!」

 箸付き右手を天に伸ばし旨い! と意思表示を。モリモリと食欲旺盛に食べ進めるとあっと言う間に料理が無くなる。

 良い食いっぷりだと感心し見つめていたが自分の料理が減って無かったので慌てて胃に入れ込む。

「……む~」

 満足げにお腹を擦る、その姿が可愛らしくて写真を撮ろうとバックからカメラを召喚し彼女にレンズを向ける。

 するとどうやら撮って欲しいらしくポーズをし始めた。

 さっきの格好が良かったがまあ良いかとシャッターを切る。

 何故か某豪華客船沈没映画の有名なポーズをカメラに納めるはめに。嫌々懐かしい。

「懐かしいですねそれ、そうだ色々ポーズをしてくれませんか?」

「……む!」

 任せろと言わんばかりに胸を叩くトリプルテール、こうして写真撮影が始まるがこの後あんなことになるとは予想外だった。

 しかし今の僕は知る筈が無い。

「……む~……む!」

 何故かブリッジを発動する夢ちゃん、その所為で浴衣姿である彼女の太股部分が大々的に姿を晒す。

 しかし下着は見えてはいないのが残念、じゃなくて良かった。

 また僕は彼女をエッチな目で、反省しろ!

 と思いつつシャッターを切る。

「……むむ、む!」

 下から僕を見上げる形となり上目使いを起動、谷間がちらほら。これは危ない、下手をしたらR指定になり兼ねないヤバさが漂う。

 しかししかし、部屋に響くのはシャッター音のみ。自重したいと思うのだが指が止まらなかったのだ。いやはや、僕はエッチな奴である。

 穴掘って叫ぶ、馬鹿野郎と。

「……む~……むむ!」

「わあ! そ、それはダメですよ夢ちゃん!」

 何と彼女は下半身を捲り太股を強調させながら上半身もやや脱ぎ、肩を露出させる。

 これはもう何とも嫌らしい格好に。

「……む!」

「夢ちゃんそれは不味いですって! 下手したら見えちゃいますよ!」

「……む~?」

 更に脱ぎ崩し数センチ、嫌、数ミリで18禁になるところまで浴衣を下ろしてしまう。

 これは撮るべきか否か、固唾を飲み、理性が崩壊仕掛け指がシャッターを押そうと力が籠って行く。

 とその時。

「失礼しますお客様、食器を下げに……うひゃあ! 私何も見てませんですはい! 失礼しました! ……やっぱり変態カップルだ……」

 仲居さんがまたまた登場し、誤解を。この人狙って来たんじゃ無いかと疑う程タイミングが良い。

 嫌、良過ぎる。

 羞恥心が理性を救出し、今まで何をしていたのかと顔が熱く燃えた。明日からは変態カップルと認識されてしまうのだ。

「僕がどうかしていました、夢ちゃんもう止めましょう……夢ちゃん?」

 傍らで呼び掛けに反応を示さない彼女は瞼を閉ざし睡魔にさらわれていたのだった。

 とてもとてもやらしい格好で眠っている。

 この後彼女のやらしい姿を極力見ないように浴衣を着直させたのは言うまでも無いと思う。こうして限定版彼女との旅行が暮れて行く。

 翌日はやはり予想通りの展開が。

「おっはよ十夜! 良い朝だよ~、早く起きてよぉ!」

「げふっ!」

 満面の笑みを輝かせたツインテールの彼女が僕の上に飛び乗る。

 多分同じだろうが訊いてみるか。

「夢ちゃん、昨日のことを覚えていますか?」

「昨日~? んーーとねぇ……何のこと? 夢分かんないよ~!」

 やはり覚えてなかったか。確信を得た、お酒を飲ませると新たな彼女が現れるのだと言うことが。

 それは彼女が任意でやっているのでは無く、単なる酔いにより起きる現象なのだ。

 それは番外みたいなもの。

「どうかしたの十夜? ずっと夢を見てるよ~?」

「いえ、深い理由は無いんです」

「良く分かんないけど、夢は十夜に見つめられたら嬉し恥ずかしだよ、だから……えいや!」

「むぐぅ!」

 朝一番のキスは格別だ、何て法則がある訳では無いが、夢ちゃんの笑顔を見ていたらそれはあるのかもと思う。

 こうして二人だけの旅行は終了のカウントダウンに入る。

 彼女は何を思い、苦しんでいるのかは分からなかったが今はキスだけが彼女の心に近付ける手段なのだ。

 キスの間は幸せだと思うから。

 旅館から出て行く時の仲居さんが妙な顔で僕らを見送ったのは自業自得として甘んじて受け止めながら帰路へ。


 

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