チェリー(ボーイ的な意味で)
感想、よろしくお願いします。
ピンク色の桜が咲き誇る坂の上。
ピンク色の思考回路の持ち主である僕は、軽やかな足取りで歩を進めていた。
疾風。
そんな言葉を思い出させる強さで、風は吹き荒び、花吹雪を生み出す。
「苺パンツって、まだ絶滅してなかったんだなぁ……」
そしてその副産物として、スカートが揺れる。
そしてその副産物として、スカートの下が見える。
スパッツだったりスパッツだったりパンツだったりスパッツだったりスパッツだったりスパッツだったり。
昨今の女子はガードが堅くて困っちゃうよもう。
でも、スパッツ好きは堅くなっちゃって困っちゃうよね下半身が。
確かに、僕もスパッツは好きだ。
でも、僕がいま見たいのはスパッツではなく、パンツなんだ!
花より団子、とか言ったりするけど僕は団子よりパンツ派だ!
つまりは、花よりパンツだ!
……いや、でもパンツよりもその下の花びらが――いや何でもない。
「全く、性春とはよく言ったものだなぁ」
「人のパンツ盗み見た感想が『青春』だなんて素晴らしい頭脳の持ち主ね」
ふ、と。
いつの間にか、僕の隣には女の子が並んで歩いていた。
キツそうな――と言うかキツい目で、メガネ越しに僕を睨む、ショートカット美少女。
「って、さっきの苺パンツさんか」
「何その最上級な罵倒用語」
「罵倒じゃないよ褒め言葉だよ素晴らしいと思うよ苺パンツ! 素晴らしいよね!」
「それは褒め言葉では無くセクハラなのでは」
「あと青春じゃなくて性春ね! ここ重要だからね!」
「それはつまり性的の『性』に春画の『春』、って事?」
「そう! 中々スジが良いね! ……あ、今の『スジ』はそう言う意味じゃないからね安心してね!」
「それを女子相手に恥じらいなく言い放てる貴方にある意味関心しました」
「そっか、恥じらいは大事か!」
「恥じらいの前に地雷の存在を知って下さい」
ふむ。
どうやら、このクール系苺パンツ美少女(以下、苺さん)にはツッコミの才能があるらしかった。
……いや、だってさ。縞パンも良いんだけど、やっぱり原点にして頂点だと思うんだよ苺パンツは。
だから、このご時世にあえてスパッツ無しで苺パンツをはく娘は神として崇められるべきなんだよ。
だから、そのアダ名には『苺パンツ』の文字を入れなければならないんじゃ、って思うのは普通の事だよねうん。
でも長いから『苺さん』で良いよね。
「で、苺さんは何年生なの?」
「あくまでも罵倒は続ける気なのね」
「だから罵倒じゃないんだってばさ!」
「……二年生」
「あ、同学年だったんだ」
「知ってた」
「え、何で? ……ハッ!? まさか苺さんは実は僕の事を好きで、廊下で僕を見かける度にドキドキしちゃったりしていたりなの!?」
「一生ありえないから安心して」
「……で、何故僕の学年を知っていたんでしょうか」
「校章」
「あ、そっか」
僕は自分の学ランの襟――と言うかそこについている校章を見る。
果たして、そこには高校二年生である事を示す、赤い校章があった。
そして、僕は苺さんの学年を再確認するべく、女子の校章がついているブレザーの胸ポケット付近を見てみる事にする。
校章は、赤だった。
でも。
「あんまり無いね」
「ブレザーの上から決めつけるのは良くないと思う」
「確かに、中学の時に無茶苦茶着痩せする女子がいたなぁ」
「見たの!?」
「あ、苺さんも驚くんだ。……修学旅行先の旅館でさ、ブレザーだとまっ平らな女子が私服姿だとかなりあったんだよ」
「……そう言う事ね」
「ふぅ」
「何その溜め息」
「説明要る?」
「要らない」
「ですよね」
とか何とか話している内に、桜が綺麗な坂は終わりを告げていた。
もう、校舎は目と鼻の先。
「で、人の下着を勝手に見たのに未だに謝罪なし?」
「すいません御礼を言い忘れてましたごめんなさい!」
「謝る所、そこなの?」
「え、違ったの?」
「見ちゃいけないもの見たのに御礼って」
「いや、本当に見られたくなかったらスパッツとか履くじゃない」
「暑いじゃない」
「ですよね」
確かにあれは暑そうだ。
スパッツ好きな人の股間が熱くなるくらいには暑そうだ。
「だから、何か奢って」
「それでまた見せてくれるの!?」
「んなわけないじゃない」
「ですよね」
ちぇっ。
「明日」
「へ?」
明日?
「明日、駅前のケーキ屋で売ってる『濃厚大プリン』1つ買ってきて」
「え、苺プリンとかじゃなくて良いの?」
「やっぱ2つね」
「え!?」
大プリンが2つなんて!
とか言おうとしている内に、苺さんは随分と先まで歩いていってしまっていた。
ある春の日。
僕は1枚のパンツと、1人の女子の内面を見た。
気がした。