表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Criminal  作者: Dr.Cut
42/114

第四十二章:漂白

呼吸が死んだかと思った。

目の前に現れた少女の姿に、頭の中が一瞬で真っ白になる。



――、何だ?



――僕は、何に驚いている?



「何を惚けているのだ、貴様は。

……まさか、(つがい)だったのではなかろうな?」



凍り付いた僕の意識は、氷室のその一言でようやく現実の世界に戻ってきた。

……っていうかちょっと待て。

いまコイツ何て言ったんだ!?



「アンタが冗談を言うなんて珍しいね。

生憎と、顔を見るのも初めてだよ。

ま。思ったよりも可愛い子だった、っていうのは否定しないけどね」



努めて軽薄な笑みを浮かべながら、めいいっぱいの軽口で返答してやる。

尤も、別にウソは言っていない。


正直に言って彼女――亜希は可愛い方だと思う。

歳は高校生か、もしかしたら大学生といった感じ。

つり目がちで、目つきはあまり良いとは言えないけど、大きな瞳はネコのような可憐さがあると言えなくも無い。

栗色のショートヘアは彼女の印象にも合っているし、何かスポーツでもやっているのか、スレンダーな体型には健康的な色気もあった。


……このルックスに騙されて、性格を知ってから泣きを見た男子生徒も多いのではなかろうか。


「ま、とにかく。約束通り顔が見られて良かったよ。

怪我も無さそうで、なによりだ」


もちろん。彼女の性格を先に知っている僕としては、彼女の外見に騙される心配なんかもう微塵もない。

思考を一発でクリアにして、いつも通り皮肉っぽく目の前の少女に話し掛ける。

つり目の少女もいつも通りの様子で、ちょっとだけ目尻を吊り上げながらも、どこか照れるように僕から目線を外してパタパタ慌て――って待った。

何だ? この反応――。



『――から、コイツの事は考えちゃダメなんだってッ!!

ムカつくヤツ!! コイツはただのムカつくヤツなんだから!!

というかコイツ、ナニいきなりヒトのこと可愛いとかなんとか……。

そ、そりゃ、思ったよりは……けど、でも……あ~!! ヤメヤメ!! だからダメ!!ダメなんだってば……!!』


「……、…………」



少女が、小声でナニかをブツブツと宣っている。

……あ~、と。

なんかちょっと見ない間に、向こうは向こうで色々あったっぽいな。



…………。



まあ、うん。刺だらけの花に触れる勇者があまり居なかったせいか、誉められる事にはあんまり慣れていないらしい

……暫く、放置した方が懸命だろう。



「……オイ、ちょっと待て。

さっきから聞いてるとテメェ、まさか顔も知らねぇ野郎の為に、あんな無茶苦茶な命令してやがったってのか?」



その時、後ろの男が口を挟んだ。

鋼の様に鍛えられた、ガッシリとした体つき。

腕には龍の刺青があり、肌にはあちこちに縫い目がある。

身長は180㎝を裕に越えるであろう、熊の様な大男がそこに居た。

……丸坊主の髪型が些か気になるのだが、まさか刑務所にでも入っていたのではあるまいか。


「へ!? な、ナニよ!!

顔を知らなきゃ心配しちゃいけないっての!?

……って、違う違う!! 別にこんなムカつくヤツ、全然心配なんか――」


「じゃあ何で扉を壊させたんだよテメェはよぉぉぉおお!!」



――正しく正論であった。



……いや、まあ、アレだ。

いちおう、彼女は僕を気に掛けてくれてたみたいだし、遅くなってしまったのは悪かったと思うし。

助け船も兼ねて、いい加減この疑問を解いておいた方がいいだろう。


「……で、そちらの彼はどちら様なのかな?」


僕は、随分と今更な疑問を口にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ