第四十一章:解錠
「ぎゃあああああ!!!!」
瞬間、扉の向こうから聞こえたのは男の悲鳴だった。
……まあ、アレだ。よっぽど痛かったのだろう。
何しろ氷室は、折れて槍みたいに尖った点滴台の先で、人が居るであろう場所を容赦なく突き刺したのだから……。
「へ!? ウソでしょ!? まだ罠が残ってたの!?」
「だから言ったじゃねぇか!! こんなの無謀だって言ったじゃねぇかぁああ!!」
「だ、大丈夫大丈夫!!
ほら、いま発動したなら、今度こそもう残って無いはずだし……。
はい!! 続けて続けて!!」
「テメェ無茶苦茶だぁああっ!!!」
…………。
あー、何だろう。
なんか、扉の向こうの様子が凄い良く分かった気がする。
「やれやれ。罠避けにするにしても、せめて猿以上の知恵は持っていて欲しかったのだがな」
呆然としている僕をよそに、氷室はいつの間にか扉の前に立っていて、ほとほと呆れた様子で扉の向こうの会話に口を挟んでいた。
その一言で、向こう側の空気が凍り付いたのが分かる。
「ちょ!! だ、だれよアンタっ!? 相原はどうしたの!?」
「あー、大丈夫。僕ならここに居るよ。
鍵を開けたいから、どうか今すぐその蛮行を止めて欲しい」
いや、ホント。
何で彼女は、どうしていつもあんな感じなのだろうか。
「えーと、地図だとこの扉の数字は13だから……」
地図を見ながら、僕は同じ数字が掘られた鍵を鍵束から選び出して、左隅の鍵穴に入れてみる。
これで、空いてくれれば良いのだが――。
――、
――――。
――良かった。
カチリという音と共に、鍵は易々と外れてくれたようだ。
「開けたよ」
色々な意味で安堵しながら、僕は彼らに行動の結果を告げた。
これで、邪魔だったこの扉がようやく開いてくれるという事になるのだろうか。
……? 待てよ?
そういえば、亜希とはこれが初顔合わせになるわけか。
深く考えると、なにやらほとほと妙な話になるような気がしないでもない。
「相原、無事!?」
僕がそんな事を考えているうちに、穴だらけだった白扉が蹴破られるようにして勢い良く開く。
そして、目の前に現れた少女の姿を見た瞬間。
僕の思考は、一発で漂白されてしまった。




