第四章:楽観
「さて、と。そんで、これからどうする?」
殆ど雑談に近いようなやり取りを、更に10分くらい交わした後だっただろうか。
二階堂は、そんな軽い感じで本題を切り出した。
――そう。これが、当面の僕達にとって一番の問題だ。
「……そうだね。
とりあえず、先ずは何とかして外部に連絡を取った方がいいと思う。
君は携帯電話とか――」
――持ってないか、と聞こうとして、僕はその質問のバカさ加減に気が付いた。
何しろ僕たちは、二人共病人が着る様な真っ白な白装束を着ている。
僕にはこんな服を買う趣味は無いから、恐らくは僕達を連れ去った何者かによって着せられたのだろうが――とにかくその服にはポケットなんか一つも無く、つまりは僕や彼が連絡手段を持っている可能性なんか皆無だという事だ。
……まあ、そうでなくとも。これが誘拐事件かナニかなら、犯人がわざわざ外部との連絡手段を僕達の手元に残しておく、なんて事態は考えられる訳が無いのだが……。
「お~し。じゃ、しかたねーな。
ここでじっとしててもラチあかねーし、取り敢えず外に出てみね?」
スクっと床から立ち上がり、二階堂は後ろ手に手を組みながら、勇ましくもドアに向かって歩いて行く。
――って。
「……ちょっと待った。
外に出るって、そのドア鍵とか付いてないの?」
「ん? 知らね。
見た感じ鍵穴とかねーし、付いて無いんじゃねーの?」
「…………」
へ~。コイツ、この薄暗い部屋で、この位置からあんな扉の鍵穴まで分かるのか。
なんて目が良い――なんて驚くか。
それならそうと、どうしてもっと早く教えてくれなかったのだろうかコイツは。
なんか、今まで僕が考えてた事が全部バカみたいに思えてしまうんだが……。
「ま、案外どうってことない話なのかもな。
だってよ、これで鍵も掛かってなかったら、オレたちは別に捕まったわけじゃなかったって事だろ?
なら、帰ったって誰にも文句は言われねーよ」
呆れて頭を抱える僕の心境など露知らず、二階堂はカラカラと笑いながら扉の前へと辿り着いた。