表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Criminal  作者: Dr.Cut
20/114

第二十章:処置

「……よし、こんなものかな」



簡単な応急処置を終えて、僕は軽く呟いた。

――素人が止血をする場合には、思っているよりもかなりキツめに縛った方が良い。

血管を圧迫できなければ、止血の意味が無いからだ。



「うわー、随分手慣れてますねー」



どうやら処置をしている内に、彼女も着替えが終わったらしく、感心したように覗きこんでくる。

なるほど。確かに、右手と口だけで縛った割りには、自分でも驚くくらい上手く縛れていた。



「もしかして、救命士さんなんですか?」



女性は、ぽややんとした雰囲気で小首を傾げる。

そんな期待に満ちた目で見られても困るんだが……。

取り敢えず、正直に、首は横に振っておく事にする。



「いや、違うよ。僕は――」




大学生――、




……だった、筈だ。




確か、学部専攻は――、




「へ? そうなんですか?

で、でもでも、それなのにそんなに出来るなんて、なんだかスゴいです!!」



「ありがとう。二度と褒められない様に気を付けるよ」



軽口を叩きつつ、処置をした傷の状態を確認してみる。

筋肉が切れた左腕――、は、当然動かない。

でも、床に散らばっている血痕からすると、出血は思ったよりも少ないらしい。

動脈は無事みたいだ。

最後に左手を軽く叩くと、鈍いながらも、どうやらちゃんと感覚はあるらしいことがわかった。

一時は切断も覚悟したが、この分なら、早急に処置すれば治ってくれるかもしれない。



「とにかく、ありがとう。本当に感謝するよ。

……っと。そういえば、自己紹介がまだだったね。

僕は、相原 翔太。君は?」



心からの礼を言いながら、自分の名前を彼女に告げる。

――そう。彼女はこんな状況だっていうのに、自分の服を切り裂いてまで僕を助けようとしてくれたのだ。

まったく、本当に、なんて優しくて素晴らしい女性なのだろう。

ホント、どこかの誰かに爪の垢を煎じて飲ませてやりた――、



『はぁ!? バカじゃないの、アンタ何様の――』



……一瞬、物凄い暴言が聞こえた気がしたので、取り敢えず記憶から抹消する事にした。

うん、とにかく。やっぱり、こういう行動が取れる女性は素晴らしいと思う。



「……へ? あ、はい。わたしは……」



――瞬間。

自分の名前を告げようとした彼女の顔が、何故か強張ったように見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ