表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Criminal  作者: Dr.Cut
19/114

第十九章:包帯

彼女は僕の隣を通り過ぎ、散らばった肉片に沿って歩いて行った。

その足取りはおぼつかなく、どう見ても明らかに吐き気を堪えているのが分かる。

そして、そんなフラつく足取りで壁にたどり着いたかと思うと、僕の左腕を削いだ凶器を引き抜いて戻って来た。



「何をするつもりかな?」



なるべく、感情の籠もらない様に気を配りながら問う。

――女性は、応えない。

無言のまま僕の隣まで歩いて来たかと思うと、何やら意を決した様に息を呑んで――、




「ふっ……!!」



そんな、気合を入れるような掛け声と共に。

自らの服に向けて、赤い血の付いたナイフを突き立てた。



「?」



暫し、呆気にとられながらその様子を見守る僕。

一度ナイフを刺してからは、覚悟が決まったのか。

女性は真っ白な病人服に真っ直ぐにナイフと立て、迷いなくビリビリと切り裂いていく。



「う……、腕を、出して下さい!!

お、応急措置、しますから!! や、やらないよりは、ましだと思うんで!!」



明らかに赤面して胸部を隠しつつ、彼女は破った服を前に突き出してきた。

なるほど。綺麗に波型に刃を入れられた病人服は、確かに、見てくれだけなら包帯の様に見えなくも無い。

少々困惑気味に腕を突き出すと、彼女は遠慮がちに手を触れて、傷を見ない様にしながらいそいそとソレを巻き始めた。



「い、痛い、ですか……?」


「…………」



――痛くは無い。

いや、寧ろ痛く無さすぎて不味い。

精一杯やってくれているのは分かるんだが……。

こう、巻き方がどうにもぎこちないというか、キツさも止血するには不十分だというか――って待った。そんなに下を縛っても意味が無いんだって……。



「……、ありがとう。

後は自分でやるからいいよ。

君は、その間にコレを着ててくれないかな?

血だらけで申し訳ないけどね」



流石に、女性の上半身をずっと下着姿にしておくのは気が引ける。

苦笑しながらシャツを脱ぎ、僕はソレを彼女へと渡した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ