第十一章:蛮行
「――って、な、はぁ!?」
自分でも驚くくらい素っ頓狂な声を上げながら、僕は脱兎の如く背後へと飛び退いた。
無意識に跳んだ為だろう。
後頭部を背後の壁に強打し、頭の中を鈍痛が貫く。
視界に、派手な星が飛んだ。
「あ、いま音がした。
こらぁ!! 居るんなら居るって返事しなさ~い!!」
後頭部を押さえて悶えている僕をよそに、声の主は無遠慮に声を上げながらドアを叩き続けている。
そのドンドンという音が鼓膜を叩く度に、僕は心臓が止まる様な恐怖を味わう羽目になった。
「居る!! 居るから!!
居るから今すぐその蛮行を止めてくれ!!」
後半は殆ど縋る様な声で、僕は反射的に懇願していた。
――この子、いや、声からして女の子だとは思うが、正気か?
二階堂を壊した罠と同じ物が仕掛けられていたとしたら、叩いた振動で作動する可能性も十分にあるっていうのに……。
「はぁ!? いきなりナニをわけの分かんない事言ってんのよ!!
いいから!! さっさとここ開けなさいってば!!」
僕の頼みを華麗にスルーした彼女は、今度はドアノブをガチャガチャと鳴らしながら引っ張り始めたらしい。
――って!?
「な、ちょ、ちょちょ、す、ストップストップ!!
開ける前にまず周りを――ってだから扉は叩くなってッ!!!!」
暫くの間、僕は爆弾処理班か交渉人の様な慎重さで彼女を宥める事に徹しなくてはならなかった。
……まあ、アレだ。仕方ない。
なんか、モノスゴイお荷物を背負い込みそうな予感がビンビンするんだが……。
もしかしたら、いや、万が一何らかの事情を知っている可能性もあるし、それに、放っておいたら僕まで巻き込んで自滅しそうな気もするし……。
……一応、話だけでも聞いてみる事にしよう。




