第一章:独房
※このお話には、暴力シーンやグロテスクな表現が含まれます。
「小説家になろう」様の規約に従い、R‐15指定とさせて頂きますが、苦手な方は予めご了承下さい。
鼻に付く臭気で目が覚めた。
薄暗い空間を満たす、ホルマリンの様な薬品の臭い。
空間はそう広い物でも無いのだろう。さしたる光も無くとも、四方の壁が見て取れる。
――小部屋だ。
広さは5~6畳といったところだろうか。コンクリート製の壁と床が、独房の様な冷たさを醸し出している、閉塞感の漂う四角い空間。窓は無いが、足元の方には1つだけ扉があるらしく、隙間から侵入した光が朧気に室内を照らしていた。
僕はその空間の中心に居て、どうやらベッドの様な物に寝かされていたらしい。
永いこと掃除もされていなかったのか。
シーツは酷く汚れていて、ザラザラとした感触が肌に擦れて気持ちが悪い。
――異常、だった。
ここは、一体どこなのだろうか。
馬鹿みたいな話だが、僕はこんなところに来た覚えなんか全く無かった。
こんな、嗅いでるだけで頭の中をドロドロに侵されるような薬品の臭いも知らなければ、そもそもどこでどんな経緯を経て、どうしてこんな場所に寝ていたのか、なんて、僕には何一つ思い当たる節が無い。
見覚えの無い空間が、意識を飲み込んでいく――。
あまりにも異常な状況だった為か、頭の中はかえって冷静だった。
――とにかく情報が欲しい。
ベッドの上から分かる事は限られている為、僕は闇を敷き詰めた様な床へと足を伸ばし、
「イテッ!!」
――グニャリとした感触と共に、自分以外の誰かの声を聞いた。