最終話・ニートの告白
〜六ヶ月後〜
アダムを倒してから、半年が過ぎた。アダムの攻撃によってボロボロになった世界も、徐々に復興の兆しが見えてきた。
EARTH・PERIODは、中枢区域で俺とアダムが派手にヤりあった為、動作やシステムに異常をきたし、現在は封鎖中。
学校は無事に再開……と、までにはいかないが、かろうじて授業を受けれる状態まで教室が修理され、体育館には家を失った人達が集まって生活している。
EARTH・PERIODの世界から半年も離れると、なんだかあの恐ろしい世界も懐かしく思えてくる。……なんだか退屈だな〜。なんて事を、この間天宮が呟いていた。退屈なのは俺も同じ。毎日のようにINしていたから、日常生活でやる事がないのだ!そんな退屈な毎日を打破する為、ついに俺は天宮をデートに誘い出す事に成功した!
え?決まってんだろ!第一話からずーっと胸に秘めている気持ちを、天宮に伝えるんだよ!………つーわけで
「なあ?天宮はどこか行きたい場所…、ある?」
「……爆」
「爆遊会館以外で。」
天宮と二人並んで、街中をプラプラと歩く。天宮の服装はジャージ。それも、プーマのピンク色のやつ!やる気ねええええ!こっちは新品のジーンズに、必殺の革ジャン!さらに勝負パンツまではいてきたのに…。トドメはレイバンのグラサン!うん、マジキマッてるよ俺…。
「だいたい爆遊会館に行っても、EARTH・PERIODは封鎖中なんだから、意味ないだろ?」
「……わかってるけど、なんか行っちゃうのよね〜。」
「まあ、気持ちはわからんでもない。」
「じゃあ、映画館とか?」
……映画か。ジブリの最新作が見れるな。
「いいよ。映画でも見ようか!」
…つーわけで、映画館に向かう俺と天宮。…どのタイミングで告白すればいいんだろう?
無事?に映画館に到着して、チケットを購入して速やかに中へ入る。
「席はA-11と12だって。」
「けっこう前だなあ…。俺は後ろの方がよかったけど、まあいいや。」
チケットといっしょに購入したポップコーンをほうばりながら、大好きな人間とジブリの最新作を巨大なスクリーンで見る!………ホントに幸せだ。もう、あの世に逝っても満足です。
ふと、スクリーンから視線を外し、天宮の横顔をちら見してみる。………やべえ、マジ可愛い。あんまりにも可愛すぎて、ジブリの内容が頭に全然入ってこない…。くそっ、天宮の可愛いさは、ある意味アダムより強敵だぜ!
……なーんて事を考えてたら、映画がいつの間にか終わってた。内容が全然………まあ、あとでDVDを購入すればいいや。
「……谷川君?」
「へ?え?あっ…、何?」
「もう!女の子と遊びに来てるのに、普通自分の世界に入る!?」
あっ、やべ。天宮軽く怒ってる。
「ごめんごめん。次は何処に行こうか?」
「もぅ……じゃあ、罰として、お洒落な場所に食事に行きましょう。谷川君の奢りで!」
………奢りは構わないが、お洒落?すき家とかマクドナルドは、お洒落な場所じゃねーよな?う〜ん……、お洒落か。どうすっかな〜?餃子の王将はNGかな?いや、ガストはセーフか?
「……天宮。」
「…?」
「お洒落って、どんな店の事をいうのかちょっとわかんないんだけど。」
「は?」
……やべえ、男として最悪じゃねえか?女の子をデートに誘ったはいいが、全然上手くエスコート出来てねえ!直秀に聞いとけばよかったな〜。
「え〜?何それ。ウケるよ谷川君。」
なんか天宮が笑ってる。なんか知らんが、結果オーライじゃね?
「例えば、イタリア料理とか…。」
イタリア料理!?あれってけっこうな値段のような…。俺の奢り!?やべーよ。金が足りなくなるよ…。
「イタリア料理か…。つか、そんな店何処にある訳?」
「谷川君、例えだよ?例え。別にイタリア料理じゃなくてもいいよ。」
え?なーんだ、いいのか。じゃあ、パスタ屋なんかで手を打ってもらおう。
「パスタ屋でいいカナ?」
「いいよ。じゃあ、行こうか!」
……つーわけで、パスタ屋に突撃!成る程、確かにお洒落だ。店内の明るい雰囲気に、やたらと洗練された空間!そして、なんかいい匂い…。
「あっ、このえびとズッキーニのリングイネ二つ!」
店員にパスタを注文して、待つ事10分。注文の品がいい匂いを醸しだしながら、テーブルに運ばれてくる。マジうまそう!いただきます!
……やべえ、美味し過ぎて、頬っぺたが落ちそうだ。
「美味しいね!」
「ああ、マジハンパねえ!もう5皿はイケるな。」
「アハハハ!どんだけ食べるの?じゃあ、挑戦してみる?」
え?ちょっとなにを……
「すいませーん!これと同じのもう五つ下さい。」
ぬえええええええ!?天宮の天然がこんなところで発揮されるとは…。天宮の前で冗談は極力控えよう。
〜一時間三十分後〜
「……………………ゥップ!」
「すごーい谷川君!ホントに全部食べちゃった♪」
……何か言い返したいけど、喋ったら100%リバースするな。当分パスタはいらないわ。見ただけで吐き気を引き起こす。
ふらふらになりながら、店外にでると、既に辺りは暗く、時刻は21時45分。暗くなってきたし、そろそろか!?
「ねえ?谷川君…。ちょっと、向こうの公園で休憩しない?顔真っ青だよ?」
パスタ6皿も食べれば、真っ青になりますよ。
「そうだな〜…、ちょっとだけ。」
ブランコに天宮は腰掛け、俺は速攻でトイレに!
〜谷川大和〜
HP 10/10
パスタ巻き戻し中…
24%完了…
73%完了…
95%完了…
100%完了!
全てのパスタをリバースした!
「ハハッ…、お待たせ…。」
俺も天宮と同じようにブランコに腰掛け、気持ちを落ち着かせる。………この沈黙はなに?喋っていいかな?俺が痺れを切らし、喋ろうとした瞬間、天宮が口を開いたので、大人しく耳を傾ける事にした。
「……ねえ、谷川君。あの日の事、覚えてる?」
あの日?う〜ん、さっぱり♪
「あの日?」
「学校の屋上で…」
うわ〜、思い出した。めっちゃ恥ずかしい事叫んだな〜。
「……なんか、恥ずかしいな。」
「私、うれしかったんだよ?EARTH・PERIODでも現実世界でも、谷川君は私の事を守ってくれた…。」
「……逆じゃね?俺なんか、逆に守られてたような…。」
「……そんな事、…ないよ?」
「そっ、そうかな?」
「……うん。」
「……………。」
「……………。」
今か!?告白のタイミングは今なのか!?……う〜ん、………えーーーい!言っちまえ!
「…………………天宮。」
「ん?…なに?」
「好きです。付き合って下さい!」
ネットカフェ・in・サバイバル、完!
………2に続く。