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ファミレスで食事を終えた私とアリサさんは、そのまま、常識を覆す場所に向かった。正直な所、凄く怪しい。常識を覆すなんて、まともな人間の言う事じゃない。……逃げるか?いや、チャンスをやると言っていたアリサさん。あの、真剣な眼差しは、嘘をついていないはずだ。もし、嘘をついていたならば、私は人間不審に陥るしかないだろう。
「着いたよ。ここが、常識を覆す場所さ。」
……ネットカフェ爆遊会館?駄目だ、人間不審になるしかない。ネットカフェが、常識を覆すなんて、考えられない。
「あの……ここが」
「来ればわかる!さあ、行くよ!」
………。もう、どうにでもなれ!
「オーッス!」
「……いらっしゃい。」
中に入ると、アリサさんが即行でカウンターに向かい、店員としゃべっている。……なんだか、店員さんは迷惑そうな顔してる。
「……今日は?」
「ビギナー区域。」
「美咲様が、ビギナー区域?弱い者いじめで、ストレス解消でも?」
「タコ!カス!マヌケッ!私がそんな最低な事、するわけないだろが!」
HIT!!
HIT!!
HIT!!
HIT!!
HIT!!
「……ハアッ、ハアッ、もう、死んだか?」
「………………ぅ。」
「まだ生きてるな。まあ、簡単に死なれたら、楽しみがいが無いからな。」
……カーテテルの拳が、血でぐちゃぐちゃになっている。私の血なのか、拳が砕ける程殴ったのか…、多分、両方だろう。
〜警告!〜
AMAMIYAの肉体に負荷がかかり過ぎています!
死亡の恐れあり!
ログアウトする事を、強くオススメします!
……あぁ、死んだら、爆遊会館に迷惑がかかるなあ。まあ、いいか……。ネットカフェで、高校生変死!間違いなく、新聞に載るわ。
「今日は、初プレイヤーを連れて来た。」
「あっ、そういう事でしたか。てっきり……」
「てっきり、何よ?」
「いや、なんでも…。わかりました、50階のビギナー区域にご案内します。」
私は、耳を疑った。50階!?こんな建物に、50階相当の高さがあるわけない。困惑していると、店の奥に案内された。すると、そこには、エレベーターが確かに存在していた!
「え?エレベーター!?」
「見ればわかるでしょ?おもしろい奴だね〜。」
そういう問題ではない。ボタンが、おかしい…。表示されている階が、全て地下。更に度肝を抜かれたのが、ボタンが地下100階まである事。
店員が、ゆっくりとボタンを押して、チーン!と、いうマヌケな音と共に、エレベーターが到着する。
「あの……。地下で、何をするんですか?」
「決まってんだろ?アンタに衝撃体験をさせてやる。」
……衝撃体験?車に跳ねられる体験かな?そして、私が死んだら臓器を取り出して、893(ヤクザ)に売るつもりなんだわ。成る程、その為の地下か…。上のネットカフェはカモフラージュという事なのかな?
「では、ごゆっくり…。」
物思いにふけっていたら、いつの間にか目的の階に着いたらしい…。薄暗い部屋の中心に、巨大な円柱の機械!?そして、パソコンとその隣には………
「……拷問器具?」
「アハハハハ!私も初めて見た時には、そう思ったよ。さあ、あそこの席に着いて、器具を装着しな。」
言われた通りに、拷問器具らしき物を体に取り付け、パソコンを起動させる。
「EARTH・PERIODってアイコンあるだろ?クリックしな。」
EARTH・PERIOD?なに、これ……。アイコンをクリックすると、画面いっぱいにメニューが表示された。え?ゲーム?……なのかな?
〜EARTH・PERIOD〜
GAMEMENU
GAMESTART
OPTION
END
……GAMESTARTをゆっくりとクリックしてみる。何故か、心臓が脈打ち、息苦しいまでの、高揚感が、私を襲った。多分、直感的。と、いうよりは本能だろう。私の求めていた物、いや、世界の全てが、ここにある気がした。
〜EARTH・PERIOD〜
GAMESTART
新規キャラ作成/転送
………新規キャラ?いわゆる、はじめから。なのかな?なんだか懐かしいな…。昔ハマった、ポケットモンスターの赤いバージョン(ファミコン時代)の物を思い出す。オーキド博士のお届け物で、ショップに行く事がわからず、マサラタウンとトキワシティの間を延々と往復していたっけ…。(注、作者の実話です。)
ん?まずは、キャラクターの名前を決めるのか…。
〜あMみゅやあ〜
あ、打ち待ちがった。タイピングって、難しい。
〜あまみや〜
う〜ん…、なんか、締まりがない。
〜アマミヤ〜
イマイチね。
〜オーキド博士の孫〜
う〜ん…。
〜オーキド博士の愛人〜
うん、THE・テキトー。こんな名前にするつもりはない。
〜ギャラドスランポス〜
……いいかも。けど、インパクトに欠けるな。
〜コイの王様=コイキング!〜
……いいね!
「……え?何その名前?それにすんの?変じゃね?」
アリサさんに突っ込まれたので、無難な名前にしよう…。カッコイイ名前なのに……。
〜AMAMIYA〜
「……ん?職業!?」
「アンタはもう気付いてると思うけど、今からゲームをする事はわかるよね?」
「あっ、はい。」
「今から選ぶ職業は、大きく分けて三種類のタイプがある。一つは、対人戦に向いてるタイプ。二つ目は、対モンスターに向いてるタイプ。そして、三つ目は、ハズレ職業。このハズレ職業は、言葉の通り、弱すぎる職業の事。ニートなんかその典型的な職業だね。EARTH・PERIODは職業変更は出来ないから、よく考えて選びな。」
成る程、変更は一切出来ないのか…。ポケモンでいう、最初の三匹の事だろう。ちなみに、私はゼニガメ派だ!
「……って、なんじゃこりゃー!!!??」
三匹なんてもんじゃない。最初から、選べる職業が100種類を余裕で超えている。どれを選べばいいの?説明分もなく、ただ職業の名前が画面にビッシリと連なっている…。……オーキド博士、貴方はとっても親切な人だったのね。最近のゲームは、冷たいデス……。
もう、適当に選んでしまえ!
〜AMAMIYA〜
職業 天使
あっ、武器が貰えるみたい。
・弓・バ
・鉄槍
・堕天使ソード
〜AMAMIYA〜
職業 天使
武器 弓・バ
……防具も?
・護符服
・羽織り
・ビキニな水着
〜AMAMIYA〜
職業 天使
武器 弓・バ
防具 護符服
HPと能力は、ランダムで決められます?……勝手に決めないで欲しい。
〜AMAMIYA〜
HP 9740
職業 天使
武器 弓・バ
防具 護符服
能力 アロー
戦績 0勝0敗0引き分け
アダム挑戦歴 0
「アバターを作ったね?よし、じゃあ常識を覆そうか!
STARTボタン押してみな?」
言われた通り、ボタンを押してみた。次の瞬間、目の前がまっくらになった。