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一斉に観客達のテンションが上がって、なんだか盛り上がれない俺は、一人取り残された気分なんですけど。いまだにヘッドなんとかとか言うヘルメットも被ってねーし…。
「おい、あんたなんでヘッドスコープ被ってないんだ?そんなんじゃ、つまんないだろ?」
突然、隣に座っていたオッサンから声をかけられた。なんだよ?なんか文句あんのかよ?……なんて言える筈もなく、え?とかマヌケな返答をしてしまった…。ほら、俺ってシャイボーイだからさ、人見知りしちゃうんだ♪
「なんだ?もしかして、EARTH・PERIODを観戦した事がないのか?」
全くしらねーよ。つーか、このオッサンどっかで見た事あるような…。誰だっけ?
「仕方ないな…、ほら!早く被って。おじさんが説明してあげよう。」
言われるがまま、ヘッドなんとかを被ってみる。わざわざこのヘルメットについて、説明してくれるらしい。……悪い人じゃなさそうだ。
「……ええ!?なにコレ?すっ、すげえ!!」
ヘッドスコープを被ってみるとあら不思議、めっちゃリアルなホログラム?3D?よくわかんないけど、中央の闘技場が、緑ひしめく草原に早変わり!……どうなってんのこれ?
「ほら、一番上についてる二つのボタンを押してごらん?視界の拡大・縮小が出来るから。」
言われた通り、拡大・縮小ボタンとやらを押してみる。おおお!ほんとだ!右のボタンが拡大、左のボタンが縮小みたいだ。しかも、ヘルメットだから自分の見たい方向を向いて、ピンポイントで自分の見たい場所を見れる!……なかなか優れ物じゃないか。ちょっとテンション上がってきたぞ!
「中段の真ん中に、大きなボタンがあるだろ?それは、ロックオンボタン。素早い動きをするプレイヤーや、目で追えない超速プレイヤーなんかを、自動で追尾してくれる便利な機能さ。」
……ロックオンって、なにをロックオンする訳?僕の視線は天宮をロックオン!……なんちゃって。
「まずはー…、ランク7位の、男爵ジャガ芋選手の入場です!」
ん?草原のど真ん中に、真っ黒い巨大なタマゴみたいな物体がでてきたぞ?……ここからじゃ遠くて、ちょっと見づらいなぁ。あっ、そうか!その為のヘッドスコープなのか!右側のボタンを連打して、おもいっきり視界を男爵ジャガ芋とかいう奴に寄せてみる。タマゴらしき物体が、左右真っ二つに割れて、中から人間が出て来る。ちょっぴり面白い。だって、タマゴが割れて中から人間が!って、なんだかマヌケな光景だ。
「男爵ジャガ芋選手のタイプは、狂戦士。その剛腕から繰り出される一撃は圧巻の一言!」
アナウンスが、男爵ジャガ芋とかいう奴の紹介をしている。……スゲエ筋肉!なにあれ?ボディービルダーも真っ青な肉体じゃん。上半身裸だし、右手にはいかつい斧なんか持っちゃってる。坊主頭で下半身はトレーニングパンツのみって…。
「真ん中の段の、左ボタンを押してごらん?ステータスが確認出来るから。」
あん?ステータス?B・H・Wの事?あんな筋肉男の身体なんか、興味ないんだけど…。とりあえず、押してみるか…。
〜男爵ジャガ芋〜
LV 74329
職業 狂戦士
HP 78000/78000
武器 獣神剛斧
防具 男のスタイル
能力 男のオーラ
戦績 173勝95敗引き分け0
アダム挑戦歴 0
画面の男爵ジャガ芋の頭上に、ゲームの能力パラメーターみたいなものが表示される。なにこれ?ステータスをみるかぎり、コイツは馬鹿みたいに強いって事が一目でわかる。
「続いてー…、世界ランク1位、現チャンピオン、AMAMIYAチャンピオンの登場です!」
アナウンスが喋り追えた瞬間、歓声が桁違いに盛り上がり、隣のオッサンなんか立ち上って叫んでいる。……おい、俺にもう説明はしてくれないのか?先程の男爵ジャガ芋と同じように、闘技場の真ん中に黒タマゴが現れる。そして、その中から……
「えええええ!?天宮!?」
間違いない。あれは、天宮だ!直ぐさま天宮の方向に首を動かし、拡大ボタンをこれでもか!というくらい連打する。もちろん、ステータスボタンとやらも連打だ!
〜AMAMIYA〜
LV 99999841
職業 大聖天使
HP 47723698/47723698
武器 大天弓バ・ヤガン
防具 神護符 極
能力 滅亡のアロー
戦績 1978勝0敗0引き分け
アダム挑戦歴 14回中0勝
……男爵ジャガ芋なんかよりも、遥かに強いみたい。0敗って、どんだけだよ!勝率100%!?……なんの勝率だかわからんが。一体、何が始まるんだ?