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………ひそ。
ん?なんだ?
……ひそひそ。ひそひそ。
「……なにあの傷?」
「親に虐待されてるんじゃない?」
クラスの後ろから、ひそひそ話が聞こえてきた。……まあ、EARTH・PERIODを知らないんだから、当然の反応と言えば、当然か…。
「…マジ不気味。」
「キモいよね〜。」
………え?
「気味がわるいよね…。」
「ほんっと不気味。」
「なにしたらあんな傷ができる訳?」
……なっ、なに言ってんだコイツら!
「……噂じゃ、天宮は歪んだ性癖の持ち主なんだって。」
「…マジで!?キモい!」
……嘘だ、デマにも程がある!クッソー!!ムカついてきた。コイツら全員EARTH・PERIODの世界にほうり込んでやりたい。
そんな事を考えていたら、天宮が走って教室からでていった。………俺は、見たぞ。天宮が……………泣いていた。
「オメーら全員人間じゃねえ!!ふざけんな馬鹿野郎共!!!」
クラス中に、俺の怒鳴り声が響き渡り、一瞬の静寂が訪れる。……天宮は、今までたった一人で、地球を守ろうと頑張っていたんだ!アダムへの挑戦歴が、それを物語っている。……それなのに、この酷い仕打ちは、絶対に許せなかった。俺は急いで、天宮の後を追う。
「天宮!待てよ!!」
天宮は止まろうとしない。全速力で、廊下を駆け抜ける俺と天宮。
「コラー!廊下は走るな!」
鬼沢の野郎…、空気読めよな。
「うるせえ!空気読めよ馬鹿野郎!!」
鬼沢を無視して、天宮を追う。気が付けば、屋上まで、天宮を追い掛けていた。
「……天宮。」
「……もう、私には関わらない方がいいよ。」
……は?なんで?
「嫌だね。理由がない。」
「見たでしょ?私に関わると、谷川君まで、変な目で見られるよ?」
「かまわん!気にしない。」
「………。」
「………。」
……ん?なんだこの空気?俺、なんか変な事言ったか?
「………LVが上がれば、上がる程、戦闘が激しくなって……」
「…うん。」
「現実世界にも、影響が大きくでてきたの。」
「………。」
「……アダムに挑戦すれば、世界は救われる。私は、必死にLVを上げたわ。気が付けば、世界ランク1位になってた。」
「………。」
「けど、ランクが上がれば上がる程、みんなは変な目で見るし……」
「………。」
「アダムに挑戦すれば、大敗して大怪我する……」
「………。」
「そのうちね、アダムに負け続けてたら、EARTH・PERIOD内のプレイヤーの目つきも、かわったの……」
「………。」
「どうせ勝てない。やるだけムダ。私が挑戦するたびに、そんな空気ができていった……」
「………。」
「現実でも変な目で見られて、EARTH・PERIODの中でも変な目で見られて……ねえ、谷川君。教えてよ?私は、一体どうすればいいの?何がいけないの?」
……今まで、辛かったんだな。周囲の期待に応えようと、必死にアダムに挑戦して……、やればやるほど、現実では大怪我して、EARTH・PERIODの中じゃ、うんざりされる。……苦しくて、辛くて、どうしようもなくて、惨い人間の、勝手な想像と期待の中を、天宮は今まで必死に戦ってきたんだな…。
「……頑張らなくてもいいよ。一人で、戦わなくていい!今度から、俺が天宮のそばにいて、支えてやる!」
「……え?」
「一人で背負うな!俺を頼れ!そして………アダムを一緒に倒そう!」
「………。」
「天宮……、俺は、君を守りたい!」
「………っ!!」
天宮が物凄い勢いで、俺の胸に飛び込んできた。ゆっくりと、力強く天宮の背中に腕を回し、精一杯強く天宮を抱きしめる。……めっちゃ泣いている。それほど、今まで苦しかったんだろうな…。
……今か?告白のタイミングは、今なのか!?
……いや、告白は、アダムを倒して、全てが終わってから、天宮に自分の気持ちを伝えよう。
それまでは……その時までは……。
STAGE1END