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ベリーバッド・スタート



「──なさい。起きなさい……」


 あぁ、なんだろう……。

 この、全身を包まれているかのような暖かさ……。


 心なしか、天からの呼び声が聞こえる……。

 そうか、俺はあの時………。



 ……死んだのか…。











「だぁから早く起きなさいってえぇ!!」

「さぁーせんしたああぁぁぁ!!!」



 なにぃ!?殺意のこもった拳の一撃が、脳天めがけて繰り出されたぁ!?


 幸せな脳内から一転、母の強烈な怒号によって脳が覚醒する。


 そうだよ、なんか神秘的な感傷に浸っちゃってさ!

 布団の中で寝てんだから、暖かなに布団に包まれてんのはフツーだろうがよぉ!


 そもそもなんださっきの「死んだのか…」って!

 ここ最近死にそうになるような怪我なかったろうが!!

 昨夜課題が終わってないからって馬鹿みたいにコーヒーとエナドリと栄養ドリンクのミックスジュース飲んでたからこんな目覚めになったんだ!



 しかもミックスジュース飲んだくせにやる気にならず寝たし。

 だからまだ課題終わってないし!



「うへぇ、最悪の目覚めだわ……」

 苦い顔をしながら呟き、お怒りの母と一緒に二階の自室から一階のリビングまで降りる。



 しかし、俺のプライベートは無かったようで、ただの呟きでさえも家族全員から反応される。


「課題の話?自業自得でしょ」

「自業自得だな」

「自業自得だわ」

「自業自得だね」

「はい、『自業自得』の四連チャン頂きました。ぜんぜん嬉しくない」


 リビングの食卓に並んだ母→父→姉→妹の順で正論を叩きつけてくる。別に四回も言わなくていいじゃん。



「というかさぁ、この自業自得のくだり、既視感あるのって俺の気のせい?」

「いや、普通に先月の編入テスト前日にもやった」

「あー、だからこんな熟れてんのか」


 流石は母だ。

 やはり毎日俺を起こしにいくのはストレスなのか、いつ、俺がどんな機嫌だったのかは丸わかりのようだ。


 ……いつもご迷惑おかけしてま〜す。


「はぁ〜、憂鬱だわ。いただきまぁす」






「そうだ。今日どうするの、エル?おねぇちゃんと一緒に高校行く?人見知りエルくんには、まだ見ぬ通学路は恐怖以外の何者でもないでしょう?」


 朝食の食パンを食べながら、フィーネ、こと俺の姉であるフィー姉が聞いてくる。




「……悔しいけどその通りだな、フィー姉。一緒に行こうか…」

「……残念そうね?ん?」

「めめめめめ滅相もございます」ガクブルガクブル

「見事なまでに言い切ったわねぇ……」



 あぁ、フィー姉の背後からドス黒いオーラが透けて見える……。

 確かに俺は他人が居ると吐き気に襲われるくらいの人見知りだけどさぁ、こんな理不尽あんまりじゃないか……。

 俺ぁここで死ぬのか……。

 朝の予感は間違ってなかった……。



「えー!フィー姉とエル兄が一緒に行くなら私も一緒に行きたーい!」


 ぐーっタイミングだ、我が愛しの妹、メラニ!

 可愛い可愛い妹の萌える姿にフィー姉もオーラをしまわざるを得ないはずだ!


 この勝負、俺の勝ちだ!



「そうは言っても、メラニは中等部でしょ?私たちと一緒に行くならかなり時間ギリギリだけど…」


「だってエル兄が他人にビクついてるところ見たいし」

「いいわね、一緒に行きましょう」

「よくねぇ、よくねぇよ。フィー姉アンタどんな教育してきたんだ」


 アレ?メラニってこんな歪んだ子だったっけ?

 あぁ、目からしょっぱい液体が……、何これ塩水?




「アンタたち、一緒に行くとか、行かないとかどっちでもいいけどさ?早くしないとみんなまとめて遅刻よ?」

「今日は転校初日なんだからやる事もあるだろう。早く行ってきなさい」











「その通りよぉ〜。やっぱり早く行ってもらわないと私たちの時間がねぇ〜?」

「あぁ。お前たちが出発するのが遅くなるにつれて、俺と母さんのイチャイチャタイムが少なくなるんだ。早く行け」



「一瞬でもまともに催促されたと思った俺が馬鹿だったわ、このラブラブ夫婦が!」



 母と父に催促されるが、それは二人だけの時間が欲しいため。


 昔は俺たちの前でもやっていたのだが、最近は妹も成長してきて、年頃の男女に見せるには過激なスキンシップもしていきたいという両親の要望から俺たちは、毎日この時間には家を追い出される傾向がある。





「「「ごちそうさまでした」」」


 パンを食べ終わって、各々自室に戻って準備をする。

 フィー姉は化粧だろうし、メラニはニューチューブ見ながら今日使う教材をバックに入れているだろう。


 かく言う俺も、音楽を聴きながらゲームをしている。

 ……何?俺だけ用意とは何も関係ないことをしているだって?


 わかってないなぁまったく。学校に行く前に音楽でテンションを高めるのは基本中の基本だろ。




「エル兄用意できたぁ〜!?」

「あれ?今日は用意早いな、メラニ。今日はニューチューブ見てないのか?」


「今の時間見てから言ってくんない?」



 なんだよそんなに急いで……。

 そんな遅いわけないだろ〜……。




 ほら見てみろよ今の時間、7時55分ぐらいだぜ?


 俺たち転校生は今日8時に来いって言われてたな、手遅れじゃないか。













 ………手遅れじゃないか!?!?





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