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珈琲之助物語シリーズ

いつものアレ

作者: 珈琲之助

寝る前にしているアレをしなければ朝スッキリ起きることができるのに……。

私は深夜1時まで起きているときがある。起床時間は朝6時と早い。5時間しか寝ていないせいか昼食後は瞼が重い。そんな日が毎日続けば睡眠不足は免れない。今、まさにそうだ。早く寝ようと試みるも寝る前にしてしまうアレのせいでグダグダと時間が過ぎていつもの時間となる。まただ。またやってしまった。あぁ、私はどうして朝6時に目が覚めてしまうのだろう。今起きれば完全に寝不足だってわかっているのに。眠い、眠い、眠い。昼食後、いつものがきた。負けてはいけない。夜、寝られなくなるため必死に目を開けた。


「ちゃんと寝ていないからだろ」

と言ったのはもう一人の私だ。現実に姿を見せたことはないが心の中では毎日といってよいほど現れる。

「昼間眠くなるのは夜更かしをしているからだ」

その通り。寝る前に必ずするアレをしなければいい。本当にそう。彼の言う通りだ。けど、ダメとわかっていてやってしまうのはなぜだろう。

「お前はいつになったらちゃんと寝るのだ?」

いつなのだろう。このままいつものアレが日課となり続けるのだろうか。そしてアレをしながら死んでいくのか。それだけは勘弁してほしい。

「そう思っているなら今すぐやめろ」

わかった。よし! やめよう!

「ついに決心してくれたのか」

うん。やめる。俺、頑張るよ。

「頑張れ!」

おお! 深夜0時に眠ることができた。ここのところ深夜1時が続いたから一歩前進だ。我ながらよくやった。

「やってねぇよ」

なぜ。どうして。1時間早く寝たのに何でそういうことを言うんだ俺。

「寝る前にアレをやった時点でできていない」

だよね。そうだよね。いつものアレをしたらダメだよね。それじゃ! おやすみ!

「寝るな! 今、何時だと思っているのだ!」

うわああ! 昼食後に寝るところだった。危ない。危ない。けれども瞼が重い。

「眠いなら寝たほうがいい。眠れ~眠れ~」

やめろ。やめてくれ。子守歌を歌わないでくれ!

「寝た方が気持ち的に楽だ」

やめろ。本当にやめてくれ。頼むからやめてくれ!

「だったら寝る前にアレをするな」

そういうけど。自信がない。

「お前の気持ちはよくわかる。何年、お前と一緒にいると思っている」

どんな時も一緒だった。つらい時もうれしい時もいつも一緒だった。よし! 今日こそちゃんと寝よう。いつまでも自分を甘やかしてはダメだ。

「やればできるじゃないか」

朝7時、こんなにも爽やかな目覚めは何年ぶりだろう。ああ、気持ちがいい。

「とはいえ今日はどうだろうか」

今日もできる。絶対にできる。なんたって俺だもの。かかってこいいつものアレ! いつものアレなんかに負けてたまるか。アレなんかアレなんかに。

「昨日のお前はどこ行った?」

どこだろうね。知らない。

「早く寝ろ」

やだね。邪魔をしないでほしい。

「そうか」

うん。あ! 何をやっている! ああ、バカ!!

「眠いか」

眠い。眠い。おやすみなさい。お昼寝最高!

「昼寝を何時間した?」

何時間だろう。やめておけばよかった。悔んでも悔やみきれない。

「起きろー!」

ついに朝7時を過ぎた。なんだか今日は体が重い。もうダメだ。どうすればいい? あれ、いつものあいつの声がしない。体が参っているのか。それとも今の自分に呆れてしまったのか。もういいや。あんなヤツいなくてせいぜいする。


あれから何日が経っただろう。今の自分は本当にダメなヤツだ。きちんと眠れない、起きることもできない。昼夜逆転も日常茶飯事だ。笑っちゃう。もう好きにしてくれ。おしまいだ。おしまいだ! どれくらい寝たのだろう。今の時刻は朝7時。朝7時? なんだか体が軽い。あれ? 昨日、寝たのは何時間だろう。

「昨日の寝た時間は」

おお? 久しぶりだな。なんで、なんで出てきたの?

「それはお前が思ったからだ。そうだろう?」

確かに。自分が思わないとヤツは現れたりはしない。だって姿は見えないがもう一人の自分であることに変わりはない。

「今日はちゃんと寝ろよ」

今まで好きな時間に寝て好きな時間に起きていた。よく考えると不規則な生活をしていた。今日、やっといつもの時間に起きた。起きることができた。これは自分を変えるチャンスなのかもしれない。

「アレをするな。絶対にアレをするな」

自分に言い聞かせていてもアレをしてもいいという自分がいる。ダメだ。アレをしてはいけない。ああ!!


「昼寝はいいのか?」

眠くないからいい。

「そうか。そうだよな」

あれからどれくらいが経っただろう。アレをしなくなった自分が今、ここにいる。どうして毎日アレをし続けていたのだろう。それは楽しいから。やっていて気分が落ち着くのでしていたのでは。と思う。

「久しぶりにやるのか?」

どうしようか。久しぶりにアレをやってみるのも悪くない。ただ、それによって前のような生活に戻ってしまう危険がある。でもやりたい。考えれば考えるほどアレをしたい。したくなってきた。

「やめておけ」

こころの中の自分は止めている。だが手が伸びてしまった。その手をどうするべきなのか。それを決めるのは自分だ。

<完>

それではまたどこかでお会いしましょう。

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