ちょっぴりえっちな幼馴染に聖夜にクリスマスプレゼントにされた話
12月20日
今年最後のHRが終わり帰り支度を済ませた俺ーー神埼 夕の元へ1人の女の子が近づいてきた。
「ゆー君」
"う"の発音を伸ばした特徴的な呼び方で俺を呼ぶのは幼馴染である雨夜 雪だ。
肩甲骨のあたりまで伸ばした綺麗な黒髪に整った顔立ち、バランスの取れた肢体。
長年仲良くしている俺から見ても美少女だと断言できる容姿だ。
雪は俺のすぐ側に立つと、申し訳なさそうな顔をして口を開く。
「この後ちょっと用事が入っちゃって‥‥‥私が戻ってくるまで待っててくれる?」
「それは大丈夫だけど、またか?」
「うん‥‥‥」
そう言って眉尻を下げる雪に何とも言えない表情を浮かべてしまう。
雪が言っている用事とはつまるところ告白のことである。
優れた容姿を持つ雪はよくモテる。
そのため普段から時々告白を受けているらしいのだが、最近はそれが特に顕著だ。
理由は何となくわかる。
もうすぐクリスマスが訪れるからだ。
人々の間で聖夜と称されることの多いクリスマス。
それを1人で過ごしたくないとは誰もが考えることだろう。
そしてその例に漏れない男子生徒たちがワンチャンスにかけて雪に告白をしているのだ。
雪はその全てを断ってはいるが、しっかりと対応しているので時間がかかる。
そのために一緒に帰る約束をしていた俺に一言言いにきたのだろう。
「まあ、昇降口で待ってるから。終わったらきてくれ」
「うん」
=====
「ゆー君、お待たせ」
「おう」
昇降口の壁に預けていた体を起こし、靴を履いた雪と一緒に歩き始める。
2人で横に並んで歩き、校門を出たあたりで雪に尋ねる。
「それで、返事はどうしたんだ?」
「‥‥‥断ったよ」
「そっか」
「‥‥‥私の気持ち、知ってるくせに」
頬を可愛らしく膨らませた雪がジト目で俺を見てくる。
その仕草が可愛いなと思いながらもわざと知らないふりをする。
「何のことかわからないな」
「ゆー君が鈍感じゃないって私知ってるんだよ?」
「そうだな。でも、ちゃんと言葉にしてくれないとわからないことだってあるんだぞ?」
「‥‥‥わかってるよ。もう少し、待ってて‥‥‥」
「そのもう少しは、どれだけ長いんだろうな?」
「むぅ‥‥‥」
拗ねたような声を漏らしてドンッと雪が体ごとぶつかってくるが、そもそも雪は体が軽いのであまり大きな衝撃は受けない。
可愛らしい仕草に笑みをこぼしていると、雪が片手を上げてするりと腕を組んできた。
腕を組んだことで体同士が密着する。
「雪?」
「意地悪するゆー君は家に着くまでこのままです」
「可愛らしい罰だな?」
「‥‥‥‥」
俺の言葉に顔を赤くしているのがとても可愛らしかった。
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12月25日
クリスマス当日である今日は家族ぐるみで仲のいい俺の家族と雪の家族とでクリスマスパーティーが行われた。
会場は俺の家のリビングで、部屋の中がクリスマスらしい装飾で飾られている。
テーブルの上には某有名チェーン店で買ってきたチキンやピザ、ポテト、サラダ、大きなクリスマスケーキなどが所狭しと並べられている。
俺と雪、そしてお互いの両親の計6人で乾杯をした後、それぞれ好きな料理を皿に取り、楽しく会話をしながら時間を過ごす。
やがてテーブルの上の料理も少なくなり、最初の時より幾分か空気が静かになった頃俺の母親が口を開いた。
「ねえ、夕」
「ん?何、母さん」
「お母さん達このまま雪ちゃんの家で二次会してくるから、帰りは明日のお昼ごろになると思うわ」
「ん。わかった」
「雪ちゃんはウチに泊まっていってね。私達お酒でかなり酔っちゃうと思うから」
「はい」
雪が返事をすると、俺たちの両親は簡単に片付けを済ませて隣にある雪の家に移動していった。
これで家の中には俺と雪の2人だけとなった。
「雪、先に風呂入っていいぞ」
「‥‥‥うん」
心なしか体の動きがぎこちなくなった雪が風呂に向かっていったのを確認した俺は自分の部屋へと向かう。
雪は昔から何度もウチに泊まっているので今日みたいなことには慣れているはずなのだが、なぜ顔を赤くしていたのだろう?
「ゆー君。お風呂、上がったよ」
「ん、おう。じゃあ、俺も入ってくる」
部屋の扉が開いて髪がしっとりとしている雪が中に入ってきた。
血色の良くなった肌をしている雪に少しドキッとしつつも平然を装って部屋の外に出て風呂場に向かう。
「‥‥‥なんか、雪、いつもよりも色っぽかったな」
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2人とも入浴を済ませ、俺の部屋でゆっくりと時間を過ごす。
スマホをいじったり、会話をしたりしているといつの間にか日を跨ぐまでもう少しという時間になっていた。
「ん、もうこんな時間か。雪、そろそろ寝るか?」
「‥‥‥うん。そうだね」
「じゃあ、寝るのはいつも通り隣の部屋にある布団を使ってくれ」
「‥‥‥うん」
「じゃあ、おやすみ」
枕元に置いてあるリモコンを使って部屋の電気を消す。
座っていた姿勢からそのままベッドに横になったところで、ベッドがギシリと音を立てたのが耳に入る。
何かと思い閉じていた目を開くと、目の前に雪の顔がある。
「うおっ」
驚いて声が漏れた。
一旦落ち着きつつ、雪の顔を見てみるとその顔は暗闇の中でもわかるほどに赤くなっている。
「‥‥‥ゆー君」
「ゆ、雪‥‥‥?」
「私ね、今年はどうしても欲しいクリスマスプレゼントがあるの」
急に始まったクリスマスプレゼントの話。
俺はそれに一瞬戸惑うが、雪の表情と今俺が置かれている状況からあることを思い至った。
だから、尋ねる。
「‥‥‥それは、何だ?」
「‥‥‥‥‥‥ゆー君」
長い沈黙の後、つぶやくように言った雪の言葉はしっかりと俺の耳に届いた。
でも、だからこそ、もう一度尋ねる。
「‥‥‥何で?」
「‥‥‥ゆー君が‥‥ゆー君が、好き、だから‥‥‥」
泣きそうな、でもどこか嬉しそうに、溢れ出る思いを必死に抑え込むように言葉を紡ぐ雪の姿に理性のタガが外れそうになる。
「ゆー君が好きだから、欲しいっ‥‥‥私、ゆー君が欲しい」
「‥‥‥俺も、雪が好きだよ」
「‥‥‥‥っ」
どちらからともなくゆっくりと顔が近づいていく。
ゆっくりと、ゆっくりと近づいていき、やがて唇同士が触れ合う。
「ん‥‥‥」
唇に瑞々しく柔らかな感触を感じると同時に雪が声を漏らす。
愛おしさが溢れ、理性で押さえつけるのはもう限界に近くなっていた。
「ん‥‥‥んぅ、んむ‥‥んは、んむ‥‥‥」
だんだんと口付けが深くなっていく。
くっつけるだけだったものが、唇をゆっくりと開きその中に舌を差し込んで相手の中を知ろうとするものに。
「はぁ‥‥んん‥‥んぁ‥‥ちゅ、んぅ‥‥‥ぷはっ‥‥」
口を離せば俺と雪の間に銀色の橋がかかる。
それはだんだんと細くなり、切れた。
雪と視線が交わる。
雪の瞳は熱を孕み、潤んでいるように見える。
「‥‥‥ねぇ、ゆー君。お願いが、あるんだけど‥‥‥」
「何だ?」
雪は頭を下げて、俺の耳元で囁くように言った。
「ゆー君の私の中に、いっぱい注いで♡」
そこで俺の理性はぷつりと途切れた。
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カーテンの隙間から差し込む朝日で目が覚めた。
まだ眠気の残る目をこすりながらベッド脇に置いてある時計を見る。
AM 10:24
もう朝という時間は通り過ぎ、すでに昼という時間になっていた。
「昨日いや、今日は寝るのが遅かったからな‥‥」
「ん‥‥んぅ‥‥‥」
数時間前のことを思い出しながらそう呟くと隣で声が聞こえ、同時にもぞもぞと掛け布団の膨らみが動く。
少し待っていると布団の膨らみから可愛らしい顔がひょっこりと出てきた。
まだ寝ぼけているような目をしていたが、俺の顔を見た途端目がぱっちりと開き顔が赤く染まっていく。
俺はその様子に愛しさを感じながら柔らかく微笑む。
「おはよう、雪」
俺の声に雪はびくりとして布団の中に顔を引っ込めてしまった。
でも、少しすると今度は目元だけを布団の外に出して俺の方を見た。
「おはよう、ゆー君」
クリスマスプレゼントは満足していただけたようだ。