空から男の子が降ってきたお話 2
どうも、開いてくれてありがとうございます。
まさか見てくれる人がいると思わず、感謝感激です。
今回は短いですが、是非お楽しみください。
「待たせたな。正義の刃、勇者見参!」
——俺はなんの前触れもなく、一人の女の子の涙によって封印から目覚めさせられた。
久しぶりの外の空気に、つい舞い上がってしまったのは否めない。が、俺はすぐに気を引き締める。
封印から解放された今。世界がどうなってるのか、俺がどうなってるのか。賢者は、魔王は、四天王と戦ってたはずの仲間は? 何一つわからない。
ただ一つわかるのは……。
「き、君は一体……どうして空から?」
「話は後だ。まずはそこで手を拱いてる魔物をどうにかするぞ!」
俺を封印から解き放ったらしい目の前の女の子が今ヤバイ状況に陥っていて、俺に助けを求めてるってことだけだ。俺たちはまだ出会ったばかりだが、俺は勇者。借りの一つも返せないようじゃ勇者の名が廃るだろまったく。
「ど、どうにかって……! 血塗られた乱杭歯はAランク指定の凶悪な魔物なの! 街一個が潰滅してもおかしくない!」
「だったら、尚更ここで食い止めるべきなんじゃないか? ちょうどあっちには街があるみたいだしな」
崖下に守るべき街がある以上は、街を壊滅させる魔物をここで食い止めるしかない。
人の味を覚えた獣ほど怖いものはないからな。
「……どうして? 君にもわかるでしょ? あの真っ赤で異質な魔力が。すぐそこでこっちを窺ってる魔物の気配が。なんで冷静でいられるのよ!」
女の子は後ろで結んだ赤い髪を揺らして抗議するが、相手がどうとか知ったことじゃない。勇者は逃げないんだ。俺が逃げたら、誰がこの世界を救うんだよ。
確かに、魔力に詳しくない俺にもわかる。そこらの魔物、それもこんなチンケな森にいるような魔物とは明らかに格が違う大物の気配が。木々の影からこちらの実力を測っているような、狡猾で真っ赤な眼光が。
だが。
「魔王と比べれば、赤子みてえなもんだな」
こんなの、魔王の喉元までたどり着いた俺からすればピンチのうちには入らねえ。
それに、起きて早々、街が一つなくなるのを見るのは本当の意味で寝覚が悪い。俺は俺のために、そして、今は一人の女の子のために戦うんだ。最高に勇者っぽいだろまったく。
「いいから、早く逃げましょう。あなたが何者かわからないけど、見るからに弱そうなんだもの。今高速走行を掛けるから……」
女の子は俺の言葉に呆れたような、失望したような表情を浮かべつつも両手をこちらにかざして魔術を行使しようとする。こんな状況でも他のやつのために魔力を使おうとするなんてお人好しだな。だが。
「必要ねえよ」
「ど……どうして」
「尻尾を巻いて逃げるのは犬ころの仕事だからな。ほら、姿を見せろよ負け犬野郎。逃げるなら今のうちだぜ」
そんな俺の挑発に、あたりの木々がざわめき始める。それはだんだんとこちらに近づいてくるように大きくなり
——グルル……
一匹の巨大な狼が俺たちの前に姿を現した。
お読みいただきありがとうございます。
そろそろタイトル回収が入るかも、なんて。