表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

人を黙らせる力について

 旨い飯には、文句なく人を黙らせてしまう力がある。理屈ではなく、口に入れた瞬間に伝わるものがある。弾けるように旨い飯よりも、しみじみと染みてくる温かな旨味をわたしは求める。いつまでも忘れられない郷愁にも似たその味を、贈り物のように大切に感じる。きっと、それはその時の体調にもより、気分にもより異なるものだろうけれど、そもそも体調と気分に沿って飯は選ぶものである。つまり、食べる前から選んでいるのだから、口に運ぶときには既にかなりの決着はついている。その味の予想を超えてくる何かがそこにあり、もっと奥まで届く何かがそこにあるのだろう。そして、本当に旨い飯は料理人が自ら旨いと認めるものである。この料理は旨い。その自信が料理に静かに満ちている。佇まいが誘うようにそこにある。経験と本能の予測値を超えていく出会い。束の間、新たな世が開けたかのような驚きがそこにある。

 わたしは、己の文章もそうでありたいと願う。そして思う。どんな名文も、いつも誰にとっても素晴らしいわけでは無いことを。誰かの気分がその文章を読みたいと思い、それに応じているようで、かつもっと遥かに予想を超えていくもの。新たな世との出会いを、目の前で、そして奥底より感じさせるもの。そんな喜びと驚きを静かに湛えた文章をわたしは求めている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ