24 迷宮で待つ者
階段を下り、通路を進む。
ロックは道すがら、ずっとマシナーズハートをいじくりまわしていた。
「ガワは……んだ、これ? 聖銀では、ないな……? おい、レイジちょっと視てみちゃくんねぇか?」
「え? 視るって……魂魄情報か?」
「応よ。魂が宿ってるっつーなら視れるかもしれねえだろ?」
「確かに、な……試してみるか」
集中して、その銀色の球体の内側を探るように見る。
半透明のウィンドウが表示された。
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「……視えるぞ」
「ぁんだって!? 本当か!?」
「あぁ、なんて書いてあるのか、全くわからないけど……確かに魂魄情報が表示されてる……」
今まで無機物の魂魄情報を呼び出そうとしたことは何度かあったが、その全てが失敗に終わってきた。
だが、確かに表示された。
文字化けしていて読めないが。
「間違いねぇな……つまり、これにはきっちり魂が宿ってる」
「ちょっと、触れてみてもいいか?」
「ん? ああ、もちろんだ」
銀色の球体を手渡される。
ユウトが言っていた。
『情報端末』にアクセスような感覚で……。
(アクセスする……そう言う意識をもって……)
『―――・――・?』
「ッ!?」
頭の中にノイズが走る。
鋭い痛みが走る、が、『情報端末』にアクセスしたときほどではない。
「もう、一回」
もう一度、触れる。
『――ダヲ。――ター』
(なんだ……? 上手く聞こえない)
『――ニ――ダヲ』
ノイズ交じりの声が聴こえる。
確かに、それは言葉で、意思だ。
何者かが、俺に語り掛けてきている。
『ワタシニ、カラダヲ。マスター』
(わたしに、からだを……私に、身体を、か? そう言ってるのか?)
『イエス、マスター』
(マスター……? なにを言ってる?)
『アナタガ、ワタシヲ、カンソクシマシタ。ソウシテ、ワタシハ、ココニテイチャク――』
ざ、ざざ、とノイズが走る。
声が途切れ、それ以上何も聞こえなくなった。
「……」
「レイジ?」
「……ん、あぁ……何か、聞こえたんだ」
「聞こえた!? 何がだ!?」
「体をくれって……」
「……ハハ……」
にんまりと、とても嬉しそうにロックが笑みをつくる。
「だよなぁ。魂だけじゃ、駄目だよなぁ。そうさ。そうに決まってらあ……!」
こいつぁ、戻ったら忙しくなるぞお……と心底嬉しそうにロックが呟いて、俺からマシナーズハートを受け取り、大切そうにバックパックの中に仕舞った。
「……えっと、あてがあるのか?」
「ったりめぇだろぉ!? 心だけ探して、身体を用意してねぇなんてヘマ、俺がやらかすワケねえや!」
「……そうか」
狂気じみた笑みに、少しヒいて、俺はこれ以上突っ込まないことにした。
俺の手伝いが必要な段階になったら、また手を貸すことにしよう……。
にやにやぶつぶつと、一人楽しそうなロックを放っておいて、俺たちは迷宮を進んでいく――
――――――
そして、到達した。
機械の迷宮、第29層。
マシノファンタズムの、その最奥に続く階段のあるフロア。
白い、白い部屋。
そして――
「やっぱり、な」
階段を護るようにして、騎士が居る。
前回出会った騎士よりも、小柄なそのシルエット。
フルプレートに包まれて、大きなハンマーを肩に担いでいる。
「お兄ちゃん」
「レイジ、おるのか?」
「あぁ、居る」
「ぁん? 何が居るって?」
「『遠見』には、なにも、引っかかっていません、が」
「俺にしか見えないし、声も聞こえない。でも、確かにそこにいるんだ。……白い騎士が」
言って、皆を手で制す。
「下がっていてくれ」
そうして、一歩前に出た。
集合知。
根源魔法の才能を持ったドワーフ達の魂が、輪廻から外れ、天に昇らずにここに残った、その集積体。
ひたすらに『平和』を求め、聖人が現れるのを待ち続けて。
『――聖人よ』
「あぁ」
『――よく来たね』
「……あぁ」
『――待ってたぜ』
口調も、老若男女も、バラバラなその声が、俺の脳内に響く。
一瞬だけ頭痛を覚え、すぐに収まった。
『――分かってるわよね?』
「分かってる。示すよ。俺の想いと力を」
『――よろしい』
『――では、試しを』
『――試練を』
『――我ら、ドワーフ族の集合知』
『――求むるは、平和』
『――汝、聖人レイジ』
『――貴様に、その資格があるのかどうか』
『――示せ、我らに』
『――証明せよ、意思を』
『――見せてちょうだい、力を』
ハンマーを構える白騎士。
身体よりも大きなその槌を、地面と水平にピタリと制止させた。
魔力とも、聖力とも違う……けれど大きな力の奔流が、目の前の騎士から放たれた。
視線が交錯する。
意思を感じる。
願いをを感じる。
希望を、渇望を、切望を、狂おしい迄の、飽くなきその『平和』への求めを感じる。
構え、応える。
いつもの構え。
半身になる。
右手を前に、脚を開いて、左手は胸の前。
拳は作らない。軽く握り、重心は腹の下。
いつの間にか、堂に入っていたその構え。
『――今一度、名乗ろう。我ら、ドワーフ族の集合知』
「――賢王、アリシア・フォン・ブラッドシュタインフェルトが眷属、キリバレイジ」
『――推して』
「――参るッ!」
俺と騎士が、同時に地を蹴った。
白騎士戦、スタートです。
明日も20時に投稿いたします!
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