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11 機王探索依頼

「父は……機王、ロック・アイゼンは二か月前、機械迷宮にあると言われている『マシナーズハート』という古代遺物アーティファクトを探しに行って……以降、戻ってきていなんです……」

「何やってんだよ機王……」


この世界の王族は自由なのが慣習なのか……?


「ですから、私たち3人は、捜索隊として迷宮に向かう途中だったのです」

「ん? たった3人で迷宮に潜るつもりだったのか?」

「いえ……迷宮のある街で他の捜索隊と合流する予定です」

「なるほどな……」

「なので、取り次ぎたいのはやまやまなのですが……それも不可能で……」

「ならば簡単じゃな」

「え?」

「レイジが迷宮に潜って機王を探せばよいのじゃ」

「……まぁ、それが一番妥当、というか。願ったりかなったりというか……」


どのみち迷宮には潜らなければならないのだ。

機王を探すという大義名分のもと潜ることが出来れば、それに越したことは無い。


「それは……」


考えるように俯いて、クレインが思案する。


「クレイン様……賢王様の眷属とはいえ、外部の者を王の許可なく迷宮に入れるのは……」

「そ、そうだぜ、クレイン」


少し声に勢いがないダイモン。

先ほどのアリスのプレッシャーにビビっているのだろう。


「いや、でも……その許可を出す王が居ないんだ……。だったら……うん」

「クレイン様、まさか……」

「……レイジ殿。あなたなら迷宮を踏破出来るのですよね……?」

「まぁ……その機械迷宮っていうところが、どの程度の難易度かわからないから何とも言えないけど……少なくとも、人の迷宮は踏破した」


いろいろ危ないシーンはあったけど。

それでも、レベルが上がった今の俺と、アリス、そしてミリィなら多分可能だろうと思う。


(それに……)


背後、数百メートル先を探る。

よく気を付けないと見逃してしまいそうなほど微弱な魔力反応がそこにある。


(アテにするのはどうかとは思うけど……セシリアもいるしな)


きっと彼女は迷宮の中でもついてくるのだろう。


「だから、多分踏破できると思う。機王を探しながらだと、時間はかかるかもしれないけど」

「……そう、ですか」


ならば、と呟いて。


「アイゼンガルド王国、第一王子、クレイン・アイゼンの名において。聖人レイジ殿。あなたに機械迷宮での機王、ロック・アイゼンの探索を正式に依頼します」


胸に右手を当てて、膝を折り、礼をするクレイン。


「……承りました。賢王、アリシア・フォン・ブラッドシュタインフェルトが眷属、聖人キリバレイジ。祖の名に於いて、その命、必ず果たします」


俺も膝をつき、同じように礼をする。

……これでいいのか?


「……ありがとうございます。正直なところ……私達では迷宮をどの程度潜れるのかすらわからないのです」

「俺達なら最下層にだって……!」

「ダイモン。分かっているだろ? それは無理だ」

「ヘリム! お前まで、この……こいつに任せるって言うのか!?」

「……口惜しいけどね。彼等の実力は、本物だろう。君も見ただろう、ロックリザードを一撃だ」


俺が先ほどストンピングで斃した魔物の残骸を振り返ってヘリムが言う。

ロックリザードって言うのかあの亀……。


「うーん……そうだな……そんなに信用できないなら、ついてくるか?」

「なっ……」

「レイジ殿……?」

「それが一番手っ取り早くないか? 監視だと思えばいいし、余計な事しないように見張ってくれればいい」

「な……そ……う」

「よろしいのですか? レイジ殿」

「あぁ。……当然危険は覚悟してもらうけど」

「どうだい? ダイモン。それで」


ヘリムが顔を白黒させているダイモンに尋ねる。


「わ、わかった! そうしよう!」


そして、ダイモンは、大きく頷いた。


「ふん。自分の身は自分で守るのじゃ。わしらはお主がどうなっても関与せんからな」

「いや、そう言うなってアリス……。出来る限りは守るよ……」

「お、お前たちに守ってもらえなくても、俺は平気だ!」

「じゃ、そうじゃぞ」

「あぁ……うん」


いや、死なれても目覚め悪いし、普通に守るけどね……。


「すみません。レイジ殿……ダイモンは私達の中でもまだ若く……その、自分の力を過信しているきらいがありまして……」


クレインが申し訳なさそうに頭を下げる。


「ん、そうなのか? いくつなんだ?」


ダイモンに目を向けて尋ねる。


「17だよ。なんか文句あるのか?」

「え、同い年なんだ……」


同い年だった。


「では、レイジ殿……このままアルトロックに向かう、ということでよろしいですか?」

「アルトロック?」

「この国の迷宮がある都市の名じゃ」

「あぁ、なるほど。……ん、そうだな。クレインとヘリムもついてくるのか?」

「アルトロックまではご一緒します。その後は……そうですね、ヘリムを残して、私は王都に戻ります」

「了解。……えぇと、どっちに行けばいいんだ、これ」

「渓谷の向こう側まで抜けてしまうと、遠回りになってしまうので……。滝の裏側の洞窟を南に抜けて、そのまま東進、ですね」

「あぁ、じゃあ戻る感じか」


背後を振り返り、大滝を見る。

あの洞窟は、この川に繋がる道ってワケじゃないんだな。

他の場所にも出口があるらしい。


「じゃあ、とりあえず今日は……」


俺は空を見上げる。

渓谷に差し込んでいた日の光はすっかり翳り、夜の帳が辺りに降りていた。


「野営、だな」


俺の腕の中で伸びていたミリィはいつの間にかすうすうと寝息を立てている。

……あの状況から普通に寝られるこの子も相当肝が太い……。



――――――



野営にちょうどよさそうな場所を探し、俺たちは少し移動する。

ちょうど山と道の境目の大きな窪みのようなところを見つけ、そこで休むことにした。


「ミリィ、悪い、起きてくれ」

「んー……ぅ?」


ぼんやりとミリィが目を開ける。


「あばばば、おち、落ちるなの!? 落ちるー!?」

「いや、ごめん、もう落ちた後だ……」

「もう夜なの!? ぉー……?」


混乱して辺りをきょろきょろと伺うミリィ。


「その、レイジ殿……ずっと気になっていたんですが、その女の子は……?」

「あぁ、この子はミリアルド。俺たちの旅の仲間の一人だ。……魔人族の」

「魔人族……なる、ほど」

「起き抜けにすまん、ミリィ。野営の準備をしてもらえるか?」

「はぇ……わかったの。……えっと、あちらの3人はどちらさま?」

「あとで紹介するよ」

「はーい。じゃあご飯にするねえ!」

「俺はテントだな」

「ヘリム。私達も準備しようか」

「はい。クレイン様」


あちらはあちらで野営の準備を始めた。

向こうの担当はヘリムらしい。


「レイジ……殿」


テントを設営している俺の後ろから、ダイモンが声をかけてくる。

妙に強張った口調だ。

……まぁ、その後ろにアリスがいるからだろうけど。


「ん? なんだ? っていうか、同い年だしレイジでいいぞ」

「……そうかよ」

「おう。で、なんだ?」

「……迷宮について教えて欲しい」

「迷宮について? 俺も人族の迷宮のことしか知らないぞ?」

「それでもいい。……俺は迷宮に潜ったことは無いんだ。でも、俺は探求者シーカーになるのが夢なんだ。だから、今回の捜索隊にも立候補した。オヤジはお前には無理だって言うけど……」


まごまごとやたら饒舌に俺に話すダイモン。

俺は、なるほど、と頷いて、設営を終えたテントを背に、その場に座る。

ダイモンも俺の正面に腰を下ろした。


「そうだな……。まず魔物が強い。あとひっきりなしに遭遇するな」

「それは知ってる。強いってどのくらい強い?」

「うーん。迷宮の魔物くらい強い魔物は、地上ではちょっと見たことないな」

「あの、ロックリザードよりもか!?」

「正直一撃で倒したからあの魔物の強さがよくわかってないけど……まあ、『遠見』の反応からするに、あの程度の魔物は、少なくとも人の迷宮では見たことないな」

「それは、弱いって意味か?」

「ああ。魔力反応だけでもあの魔物より強い魔物が、大体徒党を組んで襲ってくる」

「……そん、な、なのか」

「んーまあ、俺とアリスがいれば危険はないと思うけどな」

「それじゃあ駄目なんだ! 今回のことで……その、俺にもできるってオヤジに証明しないといけないんだ!」

「そうか……。んー、そうだな。大事なことは安全マージンだ」

「どの口が言うのじゃ……」

「アリスは黙ってて」

「安全マージン……?」

「さっきも言った通り、迷宮では魔物がひっきりなしに襲ってくる。連戦なんてこともざらだ。だから、危ないと思ったら戦闘を避ける。前回は一定階層までの地図があったから真っ直ぐにそこまで行けたけど……今回は捜索も並行しないといけないからな」

「なるほど……。わかった。危ないと思ったら避ける、だな」

「命あっての物種だしな」


まぁ、俺は死なないけど。


「他には? 古代遺物アーティファクトの事とか……」

「前回の探索では見なかったな……。俺も気になってるんだよなあ」

「そうなのか……? なにか宝物を見つけたりとかは? 最奥まで潜ったんだろ?」

「あぁ、そうだな。えっと……あぁ、そうそう、聖剣なら見つけたな……」

「聖剣!? それって聖銀で出来てる剣ってことか? だったら――」


その後も、俺はダイモンの質問攻めにあった。

彼は本当に探求者シーカーにあこがれているのだろう。

目をキラキラさせて、俺の迷宮での経験を聞きたがった。

……口と態度は悪いけど、悪いやつではないんだな、と俺はそんなことを思ったのだった。


――――――


深夜。

皆が寝静まった頃。

遠くから極々微弱な――俺とアリスでないと見逃してしまうであろう――魔力の反応がこちらに向かって放たれる。


警戒しながら仮眠を取っていた俺は、その魔力の反応で目を覚ます。

アリスも、一瞬だけ視線をそちらに向け、はぁ、とため息をついた。


「あの隠密じゃろ。……呼ばれておるのはレイジじゃろ。行ってくるのじゃ」

「あ、やっぱり気づいてたのね……」

「わしを誰じゃと思っておるのじゃ」


そして、興味を失ったように、アリスは焚火をぼんやりと眺める作業に戻った。


「さて……。まぁ、呼んでるんだろうな。えぇっと……あっちか……」


俺は立ち上がり、魔力の反応があった方に体を向け、地面を蹴った。

今日はここまでになります。

明日も20時に更新になります。

話が進みませんで、申し訳ありません……。


そろそろ迷宮に潜りますよ!


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