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37 迷宮探索Ⅻ

 

 レイジが目に見えないなにかと戦い始めて暫く。

 レイジの勝利で戦いは終わったのだろう。

 なにかの気配は既に消えていた。


「まったく、無茶しおって……」


 倒れ込み、意識を失ったレイジを見て、わたしはぼやく。

 このひとは、なんどわたしをヒヤヒヤさせたら気が済むんだろう……。

 ちょっとむかつく。


「お、おにいちゃん、腕が……」

「アリシア!? これ、治るの!?」


 慌てふためく二人を尻目に、わたしは、切り飛ばされたレイジの腕を拾い上げた。


「ん、大丈夫じゃ。つながる」


 そう言って二人を宥めすかして、『収納空間ポケット』から龍槍を抜く。

 レイジの肩に腕をくっつけ、槍を胸に突き刺した。

 凄まじい痛みが突きあげるように脳まで走り抜け、膝が折れそうになる。

 でも、がまん……。


「アリシア!?」

「お姉ちゃん!?」


 驚愕し、叫ぶ二人。

 もう、うるさいなあ。

 何度も、この程度でわたしたちは死なないって言ってるのに。

 槍を引き抜く。


「大丈夫じゃ。血を分けて傷の治りを早くするだけなのじゃ」


 どばどばと胸から流れる血を、レイジの傷口にかけて、包帯で固定した。

 ミスリルだったらあぶなかったかも。

 でも、多分ちがう。

 レイジの腕を斬り飛ばしたのは、もっと別の何かだ。

 とにかく、これならつながる。よかった。


 わたしも少し安心した。

 ふう、と息を吐く。

 胸の傷が塞がり、血も止まる。

 服は破れちゃったけど……。


 街に戻ったら、新しいのをレイジに選んでもらおう。

 うん、と頷く。

 それはいい考えだな、って思う。


 レイジの隣に座る。

 このまま、彼が目を覚ますのを待とう――。



 ――――――



「っ……ぅん……?」


 じくじくとした痛みに目を覚ます。


「レイジ!?」

「お兄ちゃん!」


 がば、と座っていたレイリィとミリィが立ち上がった。


「ん、起きたのじゃ?」


 俺の傍に座っていたアリスもこちらに視線を寄越す。

 なんか、胸元の服が破れてて目のやり場に困る感じになってるんだけど……。


「だい、じょうぶだ……つっ!?」


 びり、と左肩が痛む。

 見ると、包帯が巻かれている。

 ……あれ? 腕、斬り飛ばされなかったか……?


「俺、腕……?」

「お姉ちゃんが治してくれたの!」

「別にわしがくっつけんでも暫くしたら治るのじゃ。治りを早くしただけなのじゃ」

「そう、か。ごめん、ありがとう、アリス」

「大丈夫なのじゃ。……暫くは激しく動かすでないぞ? もげるのじゃ」

「……それは困るな」


 恐る恐るぐっぱーと手をにぎにぎしてみる。

 動く。よかった。


 その時、俺の腰のあたりから背中にかけて強烈な刺激が走った。


「はぅんっっ!?」


 情けない声を上げる。


「レイジ!?」

「お兄ちゃん、どこか痛いの!?」

「んは、ッ……ぅんっ!? いや、っ……ら、らいじょうぶ……」


 ろれつが回らない。

 なんて、物凄い――……快感!!


 下腹部から胸にかけて、すさまじい快感に襲われる。


 身悶える。


「いた、くはないのぉほん!?」

「……あぁ、なんとなくわかったわ」


 レイリィが何かを察したかのように頷く。

 アリスもなるほど、と呟いた。

 ど、どういうことなの……。


「……ぅ……ぁ、落ち着いた……」

「レベルがあがったのじゃろ」

「……え?」

「ん、でしょうね。……わかるわよ。その感じ」


 慌てて魂魄情報ステータスを呼び出す――



 キリバ レイジ

 Lv10 吸血鬼 聖人


【魔法】Lv0

 【根源たましい魔法】Lv3★★★

【聖人】Lv3★★★

【格闘】Lv2




「ほんとだ……上がってる。10も……」


 はた、と騎士の最期の言葉を思い出す。


 ――『我らが魂、これより貴方に』


 ……つまり、あの騎士の魂の情報を、俺が取り込んだ、ってこと、か?


「……それで、レイジ。あなた、何と戦っていたの?」

「ん、あ、あぁ……そうか、皆には見えてなかったんだったな……」


 俺は簡単に、騎士との会話の内容を話して聞かせる。


「そう……」

「???」

「……」


 レイリィは頷き、ミリィは首を傾げ、アリスは腕を組み、何かを思案しているような表情だ。

 三者三様の反応を貰う。


「……まぁ、試練っていうのは、超えたらしいな。しかし、優斗のやつももう障害はないとかなんとか書いてあったけど、バッチリあるじゃないか。それもとんでもないのが」

「いや、聖人も恐らくはそのものの存在は知らなかったのじゃろな」

「……ん?」

「その"騎士"は、おぬしを待っておったのじゃ。ほかならぬ、レイジを。きっと、この迷宮が出来るよりもずっと前から」

「どういうことだ?」

「そのままの意味なのじゃ」


 ほれ、と指で階段のある方向を指さすアリス。


「アレを護っておったのじゃろ」


 ――『情報端末コンソール』。


「そうか、アレは優斗がこの迷宮を造る前から存在してるのか……」


 階段を見る。

 そして痛む体に鞭をうって立ち上がる。


「いこう。最奥に」

「えぇ」

「うん」

「そうじゃな」


 歩き出す。

 俺たちの迷宮探索の終わりに向かって。


 そう、俺たちはついに人の迷宮、最奥にたどり着いた。

アリスの素はこれです。

衝撃の真実、「のじゃロリ」はキャラづくりだった。

いえ、もちろん理由はあります。そのうちわかりますよ!


明日も20時に一話更新です。


気に入っていただけたら、評価やブックマーク、よろしくお願いいたします。

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