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01 勘違い女神に転生させられることになりました。

2020/11/24 追記


文章の書き方を変えたため、古い方の部分では、段落下げや適切な改行を行なっていない話があります。

逐次修正していきますのでご容赦ください。

 

 ――キキィイイイイッッ! ドンッッッ!!!!!!


 突如として響くけたたましいブレーキ音と、体に感じる凄まじい衝撃。


 ――えっ?


 なんて、間抜けな感想を抱いて直後、生まれてから17年間の記憶が走馬灯のように――じゃなく、まさしく走馬灯として頭の中を駆け巡る。


(あっ、走馬灯ってガチであるんだな。ていうか轢かれた? トラック? え? いや、だって信号青だし、ここ、交差点だし……)


 ――ドシャ。


 (あ、血。何だこの量……。ていうかトラックに轢かれても即死ってしないんだな。腕まがってら……。あー……こんなことなら……昨日、母さんのカレー……食っとけば……)


 思考が取り留めなく渦巻く。


 死の間際、物を考えられるほどの余裕があることが意外だった。

 助からないだろう、そう冷静に考える自分と、助かりたいと生にすがる自分。

 

 そんな自分を認識して、漸く俺は自らの置かれた状況を理解した。


 ――つまり、俺は死に掛けているのだ。


(――死にたく……ない、なぁ)


 そして、最期。

 そんな、当たり前のことを考えて……俺の意識はプツリと途切れた。



――――――



 ――……ざいまーーーす!!


(うるさい……)


 ――……よう……ざいまーーーーす!!!


(俺は死んだんだ、起こさないでくれ……)


「おはようございまーーーーーーーーーーッッッッ!!!」


「うるせぇな!!! 死んだって言ってんだろ!!!」


「ひゃあ!?」


 あまりの騒音に跳ね起きる。

 そのまま目覚まし時計を止める要領で、騒音の元にチョップをくれた。


「いたぁい!?」


「……ありゃ?」


「もーーー! 何するんですか!? いきなり女神にチョップとか、不敬ですよぉ!? 転生させてあげませんよぉ!?」


「……おかしい。俺は死んだはずじゃ……?」


「死にましたよ! ばっちりしっかり!! 脳みそぐちゃぐちゃの内臓ぼろろーんの腕足ばっきばきですよお!」


「え……そんなグロく死んだの……? きっつ……」


「うえぇ……思い出しちゃいました……。あんなモノ思い出させないでくださいよぉ!」


「いや、人のことあんなモノって……」


「ごほん! まあいいでしょう。私は女神ですからね! 慈悲深く許しましょう! チョップも!」


「あ、それはどうも。さすが女神様。慈悲深い」


「えへへ~~」


 ふにゃーと笑う目の前の女。

 あたりを見回すが、真っ白な空間がひたすら続いているだけで、目の前の自称女神以外には何もない。


「どうしました? きょろきょろして」


「いや……君誰? ここ何処?」


「え? ですから女神です」


「そういうのいいから。俺死んだんじゃないの?」


「ですから、死にましたよ? ぐちゃぐちゃに」


「……じゃあここ天国?」


「テンゴクって何です?」


「えっ」


「ここは心霊回廊です。天界とファンタズマゴリアの中間ってところですかねー」


「えっ」


 目の前の女性が言っていることが、何一つ理解できない。

 ……けれども、とりあえず整理しよう。

 ここは天国ではない。目の前の女は女神(自称)。

 

 つまり――。


「俺は生きてるのか!?」


「いえ、ですから死んでます」


「じゃあここは天国なのか……」


「この人話通じない人です???」


「わかんねえ!! 俺はどういう状態なんだ!?」


「えーっと……とりあえず説明しましょうか?」


「よろしく頼む!」


「えぇ……なんですかこのテンション……この人怖い……」


 ごほん、と咳ばらいを一つ。目の前の自称女神はふにゃふにゃした表情を引き締めて――それでもふにゃふにゃしていたが――、こちらを真剣な眼差しで見つめた。


「キリバレイジさん。あなたはあなたの世界で亡くなりました。とらっく?? に轢かれてぐっちゃぐちゃに」


ぐっちゃぐちゃは要らない。


「私はファンタズマゴリアに連なる第三級女神。女神リィンと申します」


「女神リィン……。それに、ファンタズマゴリア……?」


「ファンタズマゴリアは、あなたの住んでいた世界とは異なる位相に存在する世界――わかりやすく言えば、異世界です」


「……なるほど?」


「私はその世界の生と輪廻を司る女神というわけですっ」


 えっへんと胸を張るリィン。

 とても豊かな胸がばるんと揺れた。俺の目はくぎ付けだ。

 ていうかよく見たらこの女神様、ぼんきゅっぼんのはちゃめちゃスタイルだ。

 澄み切った金の髪は風も無いのにサラサラと揺れて、吸い込まれそうなほどに澄んだ蒼い瞳は非現実的なほどだ。

 

 端的に言うと、めちゃめちゃ美人。はちゃめちゃが押し寄せてきそうになる。


 ――そんな風に彼女に見惚れていると、


「……あのー? 聞いてますか?」


上目遣いでリィンが俺をのぞき込んできた。


「あ、あぁ、聞いてる聞いてる。で、その女神様が地球で轢かれて死んだ俺になんの用だ?」


「はいっ! それが本題です!」


 むふん、と得意げにリィンが胸を張る。

 また揺れた。


「レイジさんは前世ですっごくたくさんの人を救ったので、異世界に転生させてあげます! しかも女神のすっごい加護付きで! チート転生ですよ! チート転生!」


「……は?」


 そんな風にあけすけに、わけのわからないことを告げられた。


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ。俺が前世で人を救った? 何かの間違いじゃないのか? 自慢じゃないが、俺は何の才能も特徴もない普通の高校生だぞ。誰かを救ったって……いやまぁ、困ってる人の道案内くらいはしたことあるけど」


「なにをご謙遜をー! ……えーっと……どこだったかな?」


 ごそごそと何もない中空をあさるリィン。

 肘から先が消えて、空間とその境目がぐにゃぐにゃと揺れている。


「え、何それ怖い」


「あ、これですか? これは『収納空間ポケット』ですね。ってそうじゃなくて、えーっとこれじゃない、これでもない……うーん?」


 ぽいぽいとテンパった某青狸のように、『収納空間ポケット』とやらから、壊れた懐中時計やウサギのぬいぐるみのような有象無象を引っ張り出しては投げ捨てるリィン。

 どうやらあの空間の歪みは、四〇元ポケットのようなものらしい。便利っぽい。


「あ、あったあった」


 そういってリィンが引っ張り出したのは、紙の束だった。

 そしてリィンは、その紙の束に目を通すと、ふむふむ、と頷きながら、恐らくそこに書かれているであろうことを読み上げ始めた。


「えーっと、レイジさんが轢かれたのは、てろりすと? が運転するとらっく? で、てろ行為? に向かう最中だったみたいですね! そのてろ行為? が成功していたら、どうやら数十万人単位で人死にが出たみたいです! なので、それを未然に防いだレイジさんは、徳を積みまくった、ってわけですね! うんうん!」


「……え」


 いや、まってくれ、未然に防いだ? 交差点渡ってたら轢かれただけなんだけど?

 なんなんだ、そのとってつけたような理由は。


「いやあ、自分の命を投げ出してまで人の命を救うなんて、なんて徳の高さなんでしょう……」


 うるうると目を潤ませて、胸の前で手を組むリィン。


「いや、まって? ちょっと待って?」


「と、いうわけで! 女神の加護付きであなたを転生させるよう、我が主から仰せつかりました!」


「いや、だから待ってくれ! そんなこと俺は知らな――」


「神の思し召しです! 問答無用!」


 そういって、俺に両手を向けるリィン。

 ――途端、俺の足元が白く光り始める。


「『我が神の聖名みなにて――汝、女神の加護を授からん――』」


 呪文詠唱とか始めてる!


「いやそもそも俺転生!? なんてものに興味がな――」


「『祝福を(ブレッシング)』! ……あ、そうだ、レイジさん!」


 足元の光はいまや俺の全身を包み込み、リィンの声も途切れ途切れに聞こえるようになってきた。


「――チーレムしてもいいですけどー……その代わり――この世界を救済してください!」


「――なにを言って……!?」


「よろしく頼みましたよー!!」


 目を開けていられないほどの閃光。

 思わず目を瞑り、一瞬。

 

 目を開けると――。


「どこだよ、ここ……」


 一転、真っ暗な森に、俺は立っていた。


 こうして、なんというか、怒涛の展開のまま。何の理解も及びつかないまま――


 ――俺は、何かを勘違いした女神に、異世界転生とやらを、遂行された……らしい。

初めまして。

出来るだけ毎日投稿していきたいと思います。

長編になる予定なので、気長にお付き合いいただけますと幸いです。


評価、レビューなど、お待ちしております。

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