第20話 一人じゃない
メアリーが神霊廟で気を失ったときのことだった。
気がつくと、メアリーは博麗神社にいた。辺りは暗く、誰もいなかった。
メアリーはしばらくの間、何も考えずにたたずんでいた。
すると、どこからか女性の声が聞こえてきた。
「あなたの身に危険が迫ったとき、またここにきなさい」
その声は、優しい声だった。声は全体から聞こえてくる感じがして、どこから聞こえてきたのかわからなかった。メアリーは辺りを見回した。けれども、誰もいなかった。
そのとき、急に辺りが光に包まれた。
メアリーは目がくらんだ。
そして、次に気がついたときは、神霊廟で目を覚ましたときだった。
そして、いま、メアリーはレミリアに抱えられ博麗神社へ向かっていた。
(あの夢に何か意味があるのなら、何かあるかもしれない)
レミリアの飛ぶスピードはメアリーが飛ぶよりも遥かに速く、博麗神社にはすぐに到着した。
レミリアはメアリーをつれ、博麗神社の中に入り、メアリーを寝かせた。
そして、レミリアは博麗神社の中をあさり始めた。
仰向けになっているメアリーは、その姿を横目で見ていた。
(やっぱり、あれは単なる夢だったのかなぁ。でも、そんなことはどうでもいいや。レミリアさんは、いま、私のために動いてくれている。でも、レミリアさんはこの状況を知らないはず……。この状況を隠して動いたのは私だ。それを今も隠して助けてもらうなんてことは……)
「あの、レミリアさん」
「メアリー、どうしたの? 」
「少し話が……」
メアリーがそう言うと、レミリアはメアリーの寝ているすぐ横に座った。
「あの……レミリアさんは、いまの詳しい状況をご存知ですか?」
「いいえ、まったく知らないわ。ただ、あなたが攻撃されたことしか」
「実は……」
メアリーはレミリアに今回の騒動の全てを話した。
自分が何故ここに来たのか、あいつを倒さなければならないこと。神子さんには、口止めをされていた。けれども、メアリーは自分のことをレミリアに助けてもらっていながら、黙っているなんてことはできなかった。
(レミリアさんは、私を助けてくれている。けれど、レミリアさんの立場からしたらどうなのだろう。レミリアさんにとっては、私を助けず、あいつに加勢した方が良いのかもしれない。まだ数日だけれど、私はレミリアさんにお世話になった。それをを騙してまで助けてもらうなんてことは……)
そして、メアリーはレミリアに考えを伝えた。
「レミリアさんは、妖怪……なのかな? 一応、妖怪じゃないですか。でも、先ほど、私を撃った奴は私のような人間を殺そうとしているけれど、妖怪とは敵対していないし、それどころか妖怪に有利になるように動いてます。だから、あいつはレミリアさんにとっては敵どころか味方かもしれないから……」
「あいつは敵よ」
「えっ……」
レミリアはメアリーの発言を遮って、言った。
「いま、あなたから聞いたことによると、ややこしいことが色々あるのかもしれない。でも、一つでか確かなことがあるわ。メアリー、あなたが危害を受けていること。それだけは事実。あなたが苦しい思いをしている。家族に辛い思いをさせている奴が敵じゃないわいけないでしょ」
「家族……」
「ええ、あなたはもう私達の家族でしょ?」
レミリアは微笑んでそう言った。
(そこまで私のことを思ってくれてたんだ……。私はこの世界に来る前も一人だった。けれど、なんだろう、懐かしいな、この感覚……)
「はい!」
メアリーも微笑んで返事した。メアリーは安心感に包まれた。幻想郷にきてから、メアリーは無意識にも緊張し続けていた。いま、怪我をして、危うい状況にもかかわらず、メアリーは幻想郷にきてから一番、落ち着いていた。
メアリーは思わず目が潤んだ。
「メアリー、もしかして傷が痛む?」
「え!あ、いや、大丈夫ですから!」
メアリーは身体を起こした。でも、肩の痛みはまだ残っていた。
そのとき、外に何か気配を感じた。
レミリアもそれを感じたようで、レミリアは障子を開け、外を確認した。
すると、外には細長い木箱が落ちていた。
レミリアはそれを拾い博麗神社の中に戻った。
「レミリアさん、それは?」
「とりあえず、開けてみるわ」
レミリアはメアリーの横でそれを開けた。
中には、木でできた小刀がはいっていた。
レミリアはそれを手にとったが、単なる木でできた小刀だった。
「あの、それ、私に貸してもらえませんか?」
「いいわよ」
レミリアはそれをメアリーに差し出した。
メアリーは無意識に、それを痛みが残っている左手の方でそれを受け取った。
そのとき、急に木の小刀が光り始めた。
そして、メアリーの左肩の傷が治り始めた。
「メアリー、それは!?」
「なんだろう、でも、なんとなくわかる」
メアリーの左肩の傷は完全に治った。
そして、木の小刀は光を失った。
メアリーは右手に木の棒、左手に木の小刀を持った。
すると、木の棒がいつものように魔法に包まれるだけでなく、木の小刀が光りで包まれていた。
「レミリアさん、私を霊夢さん達のところへ連れていってくれませんか?」
メアリーはまっすぐレミリアを見つめた。
「ええ、わかったわ。いきましょう」
レミリアとメアリーは博麗神社を出た。




