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妖怪村の妖怪さん  作者: ありか
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妖怪村の集まり

神谷家の猫叉主催 妖怪大戦争に参加したく書いてみました。

本来短編で出せる程の文量になると思います。


5話程度の予定。

 

 妖怪……。

 それは日本の民間伝承における非日常、非科学的な存在。

 人間の理解を超える奇妙な現象の原因とされていた。


 日本三大妖怪、鬼、天狗、河童を知らない人はいないだろう。

 日本三大悪妖怪、酒呑童子、玉藻前、崇徳上皇も名前ぐらいは聞いたことがあるだろう。


 本来妖怪とは怒らせなければイタズラをする程度の可愛い存在だ。

 だが悲しいかな一部の妖怪の名が有名な為に、恐怖の対象として見なされる事が多い。


 いや、理解を超えるからこそ恐怖の対象なのかもしれない。


 化学の発達した現代。

 その妖怪は存在を薄めている。

 だが妖怪は存在する。


 そんな妖怪の隠れ里をちょっと覗いて頂こう……。






「おーい、みんな集まっただか?」

「牛鬼の旦那、座敷童が来てないっぺ」

「あー、座敷童は[ふほうしんにゅう]とやらでで捕まったらしいど」


 古い民家の広間に集まる大勢の者達。

 そう、彼等は妖怪である。


「捕まっただか? この前は小豆洗いが[そうおんもんだい]とかいうやつで捕まっとっただ」

「子泣き爺も[わいせつざい]で捕まりそうになったらしいな」


 見たところ、人間でいう20歳程の男に視線が集中する。


「いやぁ、危なかったですよ。誰も僕を抱き抱えてくれないんで無理矢理おんぶしてもらおうとしてら、「痴漢よー!」って騒がれて……」

「生きにくい世になったもんじゃな」


 集まる妖怪達は項垂れる。

 彼等の言う通り妖怪達は冷遇されている。

 先の話にあった座敷童など最たる例だろう。

 ほんの200年程前ならば、座敷童は住みつけば幸福をもたらす守り神として崇められていた。


 それがつい先日、とある農家にいたところ、


「お、おい、お前だれだ!? か、母さん、け、警察を呼べ!」

「えっ? アタイ座敷童なんだけど」


 彼女の弁明も虚しく、あえなく警察の御用となった。

 歳を取りすぎた齢600歳を迎える座敷童が、どう見ても童に見えなかった事を差し引いても嘆かわしい事件であった。


 尚、警察には極秘に[妖怪特別班]なるものが各都道府県に存在し、人間に迷惑をかけた分だけ投獄されてしまう。

 場合によっては死罪も可能な治外法権の部署である。




「で、牛鬼の旦那、今日の集まりは一体何ですかい?」


 牛鬼は暫く目を閉じると今日の議題を話し始める。


「うむ。今、人間の世界では我々を模した[アニメ]なるものが注目を集めとるだか。んでな、妖怪特別班の方が取材をしに1人の女子(おなご)を連れて来るらしいだ」

「あー、あの目玉が親父さんの奴っぺ? 見たことあるっぺよ」

「いーや、そりゃ40年程前の[アニメ]らしいだが。何でも悪いことは妖怪の仕業ってもんらいだか」


 周りからは反論の声が囃し立てられる。


「おめが人様の褌を隠したりするからだっぺ」

「いんや、おめさんが塗り壁もない時代に通せんぼするからだぁ」


 各々がお前が悪い、あいつが悪いと言い立てる。

 誰も貶めている人間が悪いと言わない所が妖怪たる生き物なのだ。


「あー、静かにするだが。騒いでも何にもならんだが? 実はもうその女子(おなご)は来てるだが、さっ、入って来んさい」


 妖怪達が注目する中襖が静かに開けられると、1人のうら若き女性が姿を現わす。

 震えながら縮こまり、視線を妖怪達と合わせないように正座をして頭を下げる。


「こ、この度は神奈川から取材に来ました藤村 莉子(ふじむら りこ)と言います。み、3日程の取材になりますが、よ、よろしくお願いします」

「うむ、みんな宜しゅうしてやってかれだか。村の案内は……子泣き、お前がしろだか」


 突然の使命に驚く子泣き爺。


「ぼ、僕ですか?」

「おめぇは藤村さんと見た目も同年代ぐらいだが? 

 藤村さんも話しやすかだか? おめぇは言葉も流暢だが」

「よ、よろしくお願いします」


 話が決定すると、そそくさと退散していく妖怪達。

 彼等は自分に関係無ければ、後はどうでもいいのだ。

 気が付けば牛鬼すらも部屋を後にしている。

 見事な丸投げっぷりだ。


 取り残された子泣き爺と藤村莉子の物語はここから始まる。


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