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お嬢様のお付きの方が出てきました。

 

 生来、俺は『最悪の結果』のせいで、ありとあらゆるトラブルにまみれて生きてきた。妙なことに巻き込まれた結果、少年神の計らいで、それは取り除かれて今に至るわけだな。


 ようは平穏の日々を取り戻した……はずなのだが。


 今、俺の目の前には明らかにトラブルさんが、片手をあげながら、陽気に挨拶をしてきているとしか思えない光景がある。やぁ、まったぁ~って感じで……やぁでもねぇし、待った~? でもねぇよ!


「アナ、なんでここにいるのぉ~?」

「いるの~? じゃありません! 最近山の頂上の祠へのお勤めに行くと、やけにお時間が、かかっていて遅いものですから、何かまた、良からぬことでもしているのではと隠れて後をつけていたのですよ」


 あぁ、側付きの方とかなのかな? それで、最近帰りが遅いから心配で後をつけていたと。そうしたら何だか知らないおっさん、それも他種族と一緒に居た。気が気でないだろうなぁ……。


 俺は確かに他種族には違いないが、そもそもこの世界の人間じゃないしな。だが、向こうからしてみたら、恐らくこの世界の人間年か認識できないだろうし。この世界でのハーピーと人間の関係性が、どうかは知らないが、場合によっちゃあってのもあるんだろうかねぇ……。


 それに『プレイス』を知らないものが見れば、マジックアイテムか、魔法そのものという認識をするよなぁ。この世界に魔法があるのであればだが。そうなれば、メートにはどう見えているのか知らないが、このハーピーには、おそらく怪しげなアイテムと魔法を使う、人間として見えているんだろうなぁ。


「後つけるとか、プライバシ~の侵害~」

「そういうことではありません!」


 あぁ、確かにそういうことではないなw


 さて、こちらが色々と考えている間も二人の会話はまだ続いていたらしい。微妙な賢さを見せているメートに対して、アナさんはソレを即打ち消すように続ける。なんか二人の関係は悪くないようだな。ふと、あちらの世界で散々迷惑をかけた友人とのやり取りを思い出す。彼には俺のあの性質のせいで本当に迷惑をかけた。さて、人として、大人としてここは、とりあえず挨拶くらいはしておくかな。


「あぁ……アナさん?」

「はぁ?! なんですか?!」


 うん、すごい嫌そうに声を返してくるな。いきなり名前を呼んだのはまずかったかな。いきなり拒絶してくる人間は本当言えば正直苦手なんだよなぁ……。

 門をこじ開けたりするのが面倒というのもあるが、向けられる感情が好きじゃないんだよな。あぁ、この場合は人間じゃないか……とはいえ、あまり攻撃的にされっぱなしでも困るしな。


 俺はゆっくりしていたいんであって、面倒ごとは遠慮したいのだから。そのための労力を惜しむのもどうかだろうしな。


「まぁまぁ…。そう、目くじらを立てないで聞いてくださいよ。俺はアメミヤといいます。別にそこのメートさんに何かしようというつもりはないんですよ。ただちょっと、ここ数日で仲良くなったので、折角だから、俺にしか作れないお菓子をあげていただけなんです」

「はぁ……で?」

「なので、そんなに怒らないでもらえませんか? メートさんも色々ストレス抱えていたようでしたし。こんな空に浮いていた孤独な自分を、たまたま、みつけて放っておけなかっただけという、お優しい方なのだろうから……(チラッ)」


 お優しいのあたりでアナさんの目が少し、優しくなってくれたみたいだ、やはりお嬢様が褒められるのは悪い気はしないようだ。ついでに、優しいの部分を聞いたメートはなんか照れくさそうな顔をしている。ははは、嘘ではないし喜んでいるのであれば問題なしだ。


「えへへ~♪」


 ご機嫌になっていくメート。よし今がチャンスだな。とりあえず、なんか失礼なことがあったのかもしれないので、謝っておくか。


「それと……俺はそちらの慣習を知らないので、もしも、何か失礼なことをしているようでしたら、申し訳ありません。先ほどのは、あくまでお礼のつもりでお菓子をあげていただけなので……」

「はっ! そうでした! あなた、あれはいけません! 一応、ご事情は私のほうでもある程度、理解はしました。危険性も極めて低く、善人というよりは、ややヘタレな感じの人間種のオスということも理解しました。ですが、我々ハーピー族が手頭から食料をもらうというのは、上下で言えば、もらったほうは下の扱いになります。ようはあなたの下に服従しますというのと同じものです。それに場合によってはもう少し、深い意味も持っている行為ですので」


 え? そうなの? という顔で、メートをみると、メートは慌てて、明後日の方向をみてごまかす。口笛を吹いているようにしているが、音鳴っていないぞそれ。


「本来であれば、責任問題です。まぁ? 今回は何も知らない人間族のオスであったということから、私とお嬢様の胸の内に収めれば問題もありませんが……」


 どうやら今回の事は、不幸な事故みたいなものとして処理してもらえるようだ。そうかなら折角だし、あれだなぁ……もう一押し、この人も買収しとくかw ただ、ヘタレってまぁ、実際そうなのかもしないが者には言い様という者もあるだろうと(苦笑)


「そうでしたか、それは大変失礼なことをしてしまいました。申し訳ありません。アナさんのおかげで大ごとにならないということであれば、問題はないようですね。ただ何のお詫びもなくというわけにもいかないでしょうから。どうです? 先ほどメートさんにあげたお菓子ですが、折角なのでアナさんもおひとついかがですか? あぁ、もちろん、ちゃんと器の上に乗せてお渡ししますので」


「いや……しかし……それでは……」

「いやいや、あくまでお詫びです、お礼です! ご迷惑をおかけして許して頂いて、こちらは恩を受けたのですからどうぞ気になさらないでください(キリッ)」

「アナ、お菓子美味しいよ? すっごい美味しいよ! ね? ね?」


 なにが、ね? なのかはこの際置いておくとして、葛藤するアナにお菓子を食べるように勧める。メートの援護射撃のおかげでよいように天秤が傾いて行っている。これはメートにもお菓子を追加しないとな。よし、なら、選定必勝! 俺はアナとメート二人の前で、皿とお菓子を出し、お菓子を皿に盛り付け、窓の外へ。メートには〇ーラを、アナさんにはありきたりな紅茶も追加する。


「あ~このままだと、折角のお菓子が空にばらまかれてしまうなぁ~。飲み物も下へ落ちて流れてしまうなぁ~。あぁ手が重いなぁ……誰か~」


 思いっきり棒読みのセリフを吐き出す。さらに追い打ちをかけるように。


「あぁーこれはいけない、なんだか手がしびれてきたーあぁー皿が落ちるなー」


 ほいっと手を離す。


「あぁ!! これはいけません食べ物は大事にしないと!!」


 ものすごい速度で、アナさんは落下しそうになった皿を受け止める。そしてこちらを見る。

 よく見ると、顔は少し赤くなっていおり、側でニヤニヤしているメートを見て、ため息をつくと、一つ咳払いなどをしている。


「む……、いいですか!? これはあくまでお詫びでお礼ですからね? 私は何も要求をしていませんからね。あなたの買収に応じたわけではないないですからね?」

「はい、これはあくまでお詫びでお礼ですよw」

「なら……なら、仕方ありませんね。それにあのままでは空にばらまかれて、ゴミになるだけですからね。環境的にもよくありませんからね」


 ようやく折り合いをつけてくれたようで何より。メートはそのお菓子を横からいくつか咥えて、はしたないですと怒られていたが、俺のほうを見て嬉しそうに笑っていた。いい笑顔するよねぇ、この娘は。

 この一件のお陰もあってか、メートがたまに遊びに来ることの許可が出た。折角だからと、もう少し、お菓子を出してお土産を持たせていたのも良い感じで、鼻薬が効いているのだろうなぁ。

買収成功です。これで大手を振ってメートが遊びに来れるようになりました。

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