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前回のあらすじ:傷だらけのアナを手当した。メートのピンチを知った。
なるほど……そんなことが……。それでとりあえずお嬢様、メートは篭の中に入っていて無事だが出ることができないというわけか。強い力があればなんとかできると、敵の親玉が言っていたので俺ならどうにかできるんじゃないかと思ったわけだな。だけどなんでそんな風に思ったんだろうな。
「あれは神託なのかもしれない……普通はあり得ないのだが、私は巫女の力を失っている。だが一部の奇跡は使えている。そう考えた場合、場合によっては……ということなのかもしれない」
「なるほどね……。まぁ心当たりがないわけではないしな……」
「心当たり?」
「ん? あぁ気にしないでくれ」
俺は不思議そうな顔をしているアナに向かって曖昧に微笑んでごまかしておく。篭はどうやらハーピー族の山に幾つかある洞に隠しているようだ。神託なんぞという回りくどいことをしている以上、これは少年神も噛んでないわけじゃないんだろうからな。さて、しばらく外に出てないからなぁ、これどうやって出るんだ? あと、この格好は流石にあれか?
俺は『プレイス』を山の頂、壊された祠のあったところに降ろした。あぁあぁ酷いことをするものだ。こんなことしていると罰でも当たるぞ。本当に。
なにせ、外へ出るのはここに来て随分ぶりだ。引きこもりの外出なわけだから、そりゃぁちょっとくらいは緊張するだろう。魔ぁ今はそんなこと言っている場合じゃないんだけどな。あと、『プレイス』をどうしたらよいのかが、わからなんだよな。その前にこの格好は流石にないだろう。
「ちょっと待っていてくれ、着替える。アナは外へ出てもらっていて構わないよな?」
「あぁ、まて! 待て! わかったすぐに出る」
そういっていたら『プレイス』の中に扉ができたので、アナにはそこから出てもらう。外に出てもらえば、どうやら中を見えないようにできるようだ。まぁみられて減るものじゃないんだが。
次は服だな……。これもイメージでどうにか……あぁなんとかできた。ブーツにワーキング系のパンツ、シャツ、胸当てだとか、使えるかわからんがカトラス。アレだななんか魔法系というよりはシーフとかスカウトとかレンジャーっぽいなぁ……。まぁいいや、一応顔を隠しておきたいので口元を隠す系のマスクをする。なんとなくだけど怪しい格好だな。街で見かけたらファンタジー世界でも職質されるんじゃないか?
「おまたせ」
「あぁ……ってかなり物々しいな」
「ダメか? あまり露出したくないんだよ」
「いや、まぁ構わないが……」
アナに格好について了解を得た俺は、『プレイス』にちょっと何とかなってくれないか? と語りかけてみた。すると『プレイス』がこちらの意図を理解したように軽くふるえて、俺の体の周りを覆った。
「おおぅ!!」
「どうにかしたのかアメミヤ」
「いやなんでもない……」
『プレイス』の変化に驚いて変な声をあげてしまった。この状態はなかなかすごく、まずダメージがこない。空間を移動できる。空を飛ぶのとは少し違うがある一定の速度で空間を浮いたままでも移動できる。あ、あと汚れない。
「便利なものだな……」
「あぁ、俺もびっくりだ」
メートの篭の隠された山の洞に向かう途中、ちょっとした沼のような場所があったのだが、そこも一切汚れないで歩けているのを見て、アナが不思議そうに言っていた。




