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あらすじ:メートが攫われてしまいました。
ハーピー族は尋常じゃない程に殺気立っていた。
理由は群れの長の一人娘がクロウ族に攫われてしまったからだ。
祠への務めは巫女である彼女しか行ってはいけないことになっている。例外がないわけではないが、基本的には禁忌となっており、他の者は祠には近づけない。
例外は元巫女ならば構わないということなのだが、それも仕方なく屋も得なくの手段となっている。
祠は山頂で、風が入り組んでいる所にあることもあり、余程飛行技術がないと、たどり着くことはできない場所になっている。そのような場所だからこそ油断していたのかもしれない。
加えて、今までクロウ族は決してそこまで来なかったということもある。敵対していたのは確かだ。そう多くない食料や物資を互いに牽制しながら群れを守ってきたのだから。
それでもクロウ族の長であるグヤツは悪ではなかった。互いの群れの者を、ましてや巫女を攫うなどという、下種なやり方はしなかった。常に真っ向から直接的な勝負を望む男だった。ゆえにハーピー族の長であるエルトンもそこだけは認めていた。
「皆の者! 我が娘メートが攫われた! 相手はクロウ族。今回の件、我々一族の全てをかけて奪い返さねばならない。皆には本当に申し訳なく思う。我の身勝手である。だがどうか力を貸してほしい。異のある者は躊躇わずに群れを離れても構わない。我はそれを決して咎めたりはせぬ」
長であるエルトンは強く、そして願うように群れの者たちへ伝えた。その眼には一人でも一羽でも必ず、自分の娘を取り返すという強い意志が込められている。公私混同と言えばそうなのだろうが、大事な娘、そして巫女でもある。何があっても無傷で取り返さねばならない。
「何を言うのですか、長よ! 我々の中で群れを離れるなどという者はただの一羽としておりません。メート様は我々にとっても大事なお方なのですから!!」
群れの重鎮なのだろうか、恭しくエルトンに向かい頭を垂れる。それに続くように他の者も同じようにする。
「感謝する! では皆の者よ武器をとり、戦いの歌を紡げ! 我が娘メートルの奪還と悪鳥クロウ族を討ち取る!」
頼もしい同胞たちを見回してエルトンも小さく頭を下げる。
そして、前を向き目つきを少し鋭くした、エルトンの出陣の声と共に、ハーピー族はクロウ族のいる山へと飛び立ったのであった。




