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スコップ一つで作る反逆の地下帝国【完結】  作者: ふつうのにーちゃん@コミック・ポーション工場発売中
スコップ一つで始める大泥棒 悪党退治に必ずしも剣が必要とは限らない
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2-1 スコップ一つで始める大泥棒(挿絵あり

前章のあらすじ


 呪われた地にてアウサルは邪神ユランと盟約を結んだ。

 その盟約に従い、アウサルは領主スコルピオに反旗を翻す。

 サウスの町にて反乱軍ニブルヘルのフェンリエッダと出会い、迷いの森の隠し砦にてリーダーのグフェンと面会する。


 反逆の竜ユランの使徒であることを明かすと、グフェンは納得しアウサルを歓迎する。

 こうしてアウサルは反乱軍ニブルヘルに加わった。次なる秘策は、スコップ一つで始める大泥棒。



 ・



2-1 スコップ一つで始める大泥棒


 狙いはある悪徳商人の地下倉庫だ。

 ポコイコーナンとかいう変な名前の豪商なのだが、我らの宿敵スコルピオ侯爵のお抱えにあたる。

 簡単に言えば特権階級とのコネと、それへの裏金と、ついでに談合と、奴隷農園と、その他非合法取引で金を儲けまくってる悪いヤツだ。


 コイツの蓄財を奪い取ってやれば、侯爵側の力をそのままこちらが吸い取ることになる。

 ヒューマン全てを敵に回すより、ヤツという暴君を窮地に追い込めば勝手に自滅してくれるかもしれない。……という期待も込めていたりもした。


「手ぬるいな。私はそんな方法で国を取り戻せるとは思えない。だが良いだろう、喜んで協力してやる。ポコイコーナンを恨むエルフもまた多いからな。……あのクズ侯爵ほどではないが」


 フェンリエッダに持ちかけたところレジスタンスの全面協力が得られた。

 そもそも誘っておいてなんなんだが、ポコイコーナンがどこに財産を隠しているのかも俺は全く知らなかった。なので助かった。


 ニブルヘルの草の根たちがその日のうちに下調べをしてくれて、こうして夕方には倉庫破りの段取りが付いたのだ。

 それはただの烏合の衆とは言いがたい、驚くほどに整理された情報網だった。


 まあとにかく手はずが整ったのだ。

 日没に合わせて出発することになっていたので、それまではこのままアジトの厄介になることになった。



 ・



 ここは森に囲まれた盆地にあたる。

 正面をのぞく三方を大小の山が囲み、そこに砦と外壁と住居が密集している。


 それでこの前の客室での仮眠を終えると、ブラブラと興味本位で砦の外を見物して回った。

 気合いの入った練兵所を見終わって、なら次は居住区にでも行こうか……なんて思い描いていた折りのことだった。


「おおーーっっ、そこにいるのは同志アウサールッ!!」


 やたらに陽気な女の声が響いた。

 見れば華やかな桃髪をしたエルフ族が俺の前に飛び込んで来て、さらに親愛の情たっぷりに抱きついて来ようとしたので俺は迷わず避けた。


「一目見てわかったぞっ、なるほどこれは美しい竜眼だっ! 何よりヒューマンどもに、激しい怨念を持つところが格別に良い!! 歓迎するぞ同志、同志アウサ~ァル!!」


 避けたのだが、おかしい。


 包容がタックルに変わって逃亡者に食らいついた。

 やわらかな白い肌を持つエルフが人を包み込み、やたら上機嫌でこちらを見上げている。


「……何だアンタ」

「お前こそ何だ聞いていないのか? 今夜の作戦――いや、大っ怪っ盗っ! に我も参加することになっているというのに、それはないぞ同志アウサルッ!」


 ギュッギュッむにゅーんと、でかい乳が人の胸に押し付けられた。

 ……何だ、何だこの女は? 初めてみるタイプだぞ……? 何なのだわからんまず様子を見よう……。


「いやはや砦に戻ってみればっ、こんな面白……! ではなくて、スリリングでエキサイティングな大イベントが待っていただなんてっ! これに混ざらない理屈はないぞ、はぁぁ~~帰ってきて良かったーっ、コレだよコレコレッ、こーいうの待ってたぞ我はッ♪♪」


「……そうか」


 それがとんでもなく明るくてうるさくて暑苦しい女だった。

 同志アウサルって……異界の本の中じゃソレ悪役に付く表現だったぞ?


「同志アウサル、我は貴様を歓迎するぞ! よくぞ我が旗の下に加わってくれたっ、共に邪悪にて暗愚なる人間どもを、撃滅しようではないかッッ!!」

「……アンタの下についた記憶はないぞ」


 いやとにかく離せこのおっぱい女!

 ヤツの馬鹿力から逃れて距離を取る。するとそこに見知った顔を見つけた。


「はぁ……やっと見つけた……。災難だったなアウサル、この方はラジール、ライトエルフ側から来た客将だ」

「おおおーっっ、同志エッダッッ!! 我も探したぞっ、ああ今日も美しいなっ、その生き急ぐ姿が特に……ああ、はかなくも愛おしくまた美しい……」


 その豪傑ライトエルフが今度はフェンリエッダに抱きつく。

 どうも慣れているのか、フェンリエッダはされるがままにただため息を吐いていた。


「離して下さい。……ッ、どこを触っているのですっ!」

「もちろんラジール流身体測定だっ」


挿絵(By みてみん)


 白い方が黒い方の尻をサワサワサワサワ~! っと撫でたのを見てしまったが、俺としてはこんなもの見なかったことにしたい。


「アウサル、ラジールさんはこんな人だが実力は私が保証する……。それに、ライトエルフは我々ダークエルフより神の呪いに対する耐性が高い、その点からしても貴重な戦力――うっ、うひぁぁっ?!」

「んむふふふ~~っ、ういヤツめ、ういヤツめ……グフフッッ……」


 何とも言い難い状況だ。

 刺激的な女同士のボディタッチが腰、脇、胸部を滑った。

 ……それで俺にどうしろと?


「ただ……ただこの人は豪快過ぎるのでっ、よ、要・監視なのだッッ!!」

「それは見れば判る、十分に把握した。……いや待て、神の呪いというのは何だ?」


 同じワードをユランの口から聞いた気がする。

 確か、神の呪い耐性だったか。


「何だ同志よ、貴様ともあろうものが知らんのかっ?! ……それはな、簡単に言えば、ある神がヒューマンどもをひいきするためにまき散らした毒だ」

「ぅっ、はぁぁぁぁ……やっと解放された……。んんっ……特に、はぁ……お前の住む呪われた地がソレだ……。ヒューマンですら生きることの出来ない、重度の汚染で染まっている」


 つまりコイツらは俺の家に来れない。

 それでライトエルフにあたるラジールの方が影響を受けにくい分だけ有利ってことか。


 ……俺には関係ないどうでもいい話だな。


「神様って意外とえげつないな」

「クククッ、いかに創造主であろうとも悪神は滅ぶべきだ、そう思っただろう同志アウサルよっ!」


 確かにあのユランが逆にかわいく感じられる。

 大地に毒を撒くとかどうなんだ。いや100%ダメだろ何様だ。……ああ神様か。


「あまりこの人の言葉をそのまま受け取らない方がいい……。8割方は勢いで言っていると思ってくれていいぞ……」

「それはもちろん承知している」


 まだ触られまくった刺激が残っているのか、フェンリエッダが妙な内股でソワソワしながら解説してくれた。

 よくわからないが女性だからこそ女性の扱いが上手いのだと、おかしな趣向の本に載っていたので問題ない、俺は完全に把握している。


 心は拒もうが肉体の火照りがなんとやら、とか本に書いてあったはずなのだ。


「まあそういうわけだっ、今後ともよろしく頼むぞ同志アウサルッ! 貴様は少し陰気だなっ、少しずつ我が覇気ある性格に矯正してやろう」

「いいや断る。ところでアンタ、少し気になったんだが……ライトエルフっていうのはみんなそんな感じの、迷惑な性格をしてるのか?」


 こんなヤツが山ほどいる国とか想像するだけでうるさい。耳がキンキンしてくる。近付きたくない。

 ユランには悪いが救う気も萎えるというものだ。


「そんなわけないだろう……常識で考えろ……」


 疲れた声でフェンリエッダが否定した。


「ヒューマンどもは粛正だ!! かわいそうなダークエルフたちを奴隷にし、しこたま蓄財に励む悪徳商人ポコ……ポコなんとかっ、うむっ、うむうむけしからんっ、このラジールが粛正してくれるわーっっ!! 夜はーっ、夜はまだかーっ、同志アウサルよッッ!!」


 ……別に戦いに行くわけじゃないんだが。

 そうなると凄腕の戦士もそこまで要らない気がするぞ?

 本当にコイツを連れていくのか? なんで? 既にイヤな予感しかしないぞ?


「おい、フェンリエッダ……この女……」

「言うなアウサル……。本人は乗り気だ、彼女に借りもある、頼む、連れて行ってやってくれ……」


 なんか頭を下げられてしまった。

 そんな頭痛の種をなぜ飼い慣らしておくのだと疑問にも思ったが、それだけ有能なのだろうか?


「言っておくぞ同志アウサル! 我はダメと言われても勝手について来るたまだっ!!」

「アンタ、ソレ自分で言うなよ」


 どちらにしろもう少し休んだら大泥棒あらため大怪盗とやらの始まりだ。

 既に心が安まりようもない状況だが。


 ……本当に大丈夫なんだよな、この女?


序盤につき挿絵多めに盛ってあります

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